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「年金制度を白紙に」日本の選手会ならではの決断と普及活動(ベースボールチャンネル)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/115.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 7 月 22 日 17:27:45: igsppGRN/E9PQ
 

             MLBの選手会に学ぶことは多いが、同じことをやるべきではないと語る松原氏。


「年金制度を白紙に」日本の選手会ならではの決断と普及活動
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150722-00010003-baseballc-base
ベースボールチャンネル 7月22日(水)17時0分配信


■苦渋の決断

 前回、この連載では日本のプロ野球機構(NPB)の年金と、そしてメジャーリーグの年金を比較するのは意味がないと書いた。そしてそこには無知と誤解が存在するとも。

 これは一般的な日本の年金制度が非常にわかりにくいことにも起因している。さらに言えば、年金運用に不都合な事実があるため、煙に巻いているという面もある。

 2004年、小泉内閣が適格年金廃止の方針を打ち出した。このとき適格年金を利用したNPBの年金制度は破綻していた。

 年金は、選手たちから一定の積立金を集め、年5.5%の運用益を出すと約束していた。ところがこの不安定な株式市場の影響でその運用益は実現できず、すでに約52億円が不足していたのだ(もちろん、こうした事態はNPBの年金だけではない)。

 さらに、これまでの年金の支払いを続けるには、年間9億円程度の資金だった。日本経済の縮小とともに、かつてのように金が流れ込むことがなくなったこともあり、NPBはこの負担に耐えきれなくなっていた。

 政府の方針――適格年金の廃止を理由に、この年金制度を解散することは、NPBにとっても都合が良かったといえる。
 プロ野球選手会の松原徹事務局長はこう振り返る。

「年金制度が立ちゆかなくなることは、以前から予想していました。NPBに今の形を維持するように強く要求するのも一つのやり方でしょう。ただ、向こうの財政が厳しいこともわかっていました。NPBがあっての野球選手、そして選手会でもある。無理な要求を突きつけることは現実的ではない」

 当時の選手会長は阪神タイガースの新井貴浩が出した結論は、これまでの年金制度を一度白紙に戻すということだった。

 松原はこれは苦渋の決断だったと評する。

「今のままでずっとOBに支払っていると、いつまでたっても今の現役が引退した頃にはお金は回ってこない。大変申し訳ないんですけれど、一度、どこかで今の制度を解消しなければならなかったんです」

 NPBは13億円を解散資金として準備した。これまでの積み立て資金に加えて、この13億円を加えたものを返却する形になった。

「新井さんの方針は、なるべくOBに手厚く、現役には薄く、というものでした」

 現役選手についてはNPBが以降、年間3億円程度を「国民年金基金」に積み立てることにした。サムライジャパンなどで得た収益も積立金に加えることになっている。

 会社員は国民年金に加えて、厚生年金等が上積みされている。国民年金基金は組織に属していない自営業者のため、免税で上乗せするために作られた制度だった。

■日本のプロ野球選手会の特長

 日本の年金制度は、右肩上がりの経済成長を念頭に設計されたものだった。しかし、その楽観的な予想は実現していない。そのため、早くから加入した人間は、自分たちが支払った積立金以上の金を受け取ることができるが、ある一定の年齢を分岐点として、それ以下の人間たちは積立金以下の金額しか将来支払われない。

 年金の不公平である。そして日本政府はその問題を先送りしてきた。

 制度が破綻している以上、全ての人間が満足する解決策は存在しない。必ず痛みを感じる人間が生じる。その人間の数を減らすることが、最善の解決策といえる。

 その意味で選手会は、OBへの痛みはあったものの、日本のあちこちに埋まっている年金問題を先取りして”解決”したとも言える。

 こうした動きをどう評価するか――。

 ストライキを辞さず、常に闘ってきたメジャーリーグの選手会と比べると、プロ野球選手会を弱腰であると糾弾することは簡単である。

 しかし、組合に対する考えが日本とアメリカと違っている。アメリカでは権利獲得のために組合がストライキを行うことに理解がある。日本の場合は、経営側と労働者の関係が良好な企業が多かったこともあるだろう、ストライキに対して嫌悪感を持たれることが多い。そのため、2004年の球界再編問題の際、会長だった古田敦也は、言葉を慎重に選んで民意を探ったことは記憶に新しい。安易にストライキを使い、野球を愛する人々の支持を失うことを古田は恐れたのだ。

 メジャーリーグ選手会と違って、日本の選手会は普及に力を入れている。日本的な、柔らかな組織である。事務局長の松原はこう言う。

「メジャーリーグの選手会に学ぶことは多いです。しかし、同じことをやろうとは思わない。やるべきでもないと思っています」

 プロ野球が抱える問題は、日本の社会、文化の特質と呼応している。だから、注意深く分析しなければ、真実は見えてこないのだ。(連載終わり)


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日本プロ野球選手会事務局長
松原徹(まつばら・とおる)
1957年5月、川崎市生まれ。1981年に神奈川大からロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテ・マリーンズ)に球団職員として入団。一軍マネージャーなどを務めた後、1988年12月に選手会事務局へ。2000年4月から事務局長。2004年のプロ野球再編問題では、当時のプロ野球選手会の会長であった古田敦也らとともに日本野球機構側と交渉を行った。

ベースボールチャンネル編集部
 

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