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スカイマークの旅客機(「Wikipedia」より/坂部 秀治<G-TOKS>)
スカイマーク再建、欲望衝突で崩壊寸前 2次破綻の恐れも 元凶・太田国交相がデルタ排除
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10808.html
2015.07.22 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)の2〜3倍の売り上げを誇る米巨大エアライン、デルタ航空が、破綻した国内航空3位スカイマークへの出資に名乗りをあげた。これが政治家や官僚の目には、ドル箱と呼ばれる羽田空港の発着枠を奪い、国益を蹂躙する“現代の元寇”と映っているらしい――。
太田昭宏国土交通大臣は17日の記者会見で、スカイマークが保有する羽田空港の発着枠について「国内線を国際線に転用するのは認められない」と言い切り、デルタの思い通りにはさせないという意味だと受け止められた。
だが、これほど首尾一貫しない発言も珍しい。なぜならば、太田大臣こそスカイマークの再建策が浮上するたびに、JALやANAの傘下に入って第3極の航空会社が消滅することは容認できないと言い続け、スカイマークを破綻に追い込んだ張本人だからだ。今、太田大臣が目を向けるべきは、デルタこそスカイマーク再建の最強のパートナーとする米国系債権者たちの主張が事実かどうかだ。これといった足場を日本に持たないデルタが、ANAより手厚いコードシェア(共同運航)や整備支援を提供できるという主張の真贋を冷静に検証すべきである。
今が平時で、航空市場のダイナミックな競争を促す環境が整っているのならば、大口債権者である米航空機リース会社イントレピッド・アビエーションの求めに応じ、デルタがスカイマークの再建パートナーとなり発行済み株式の20%未満を出資するという再建策は、おおいに検討に値する話かもしれない。世界3大アライアンス(スターアライアンス、ワンワールド、スカイチーム)が激しい競争を繰り広げる国際航空市場と違い、日本はANAとJALの2社寡占が進む一方の市場となっているからである。破綻した第3極の航空会社が、新たに強力な後ろ盾を得て復活し、運賃、サービス、安全で多様な競争を挑むのは、消費者として喜ばしいことだ。ビジネスやオフの空の旅がずっと快適になるかもしれない。
しかし、事態は急を要している。表面的には、民事再生手続き中のスカイマークの経営は小康状態を保っている。ゴールデンウィークと夏休みのある上半期は、航空各社の稼ぎ時であるため、キャッシュフローにも余裕ができるのだ。だが、安閑としてはいられない。ANAをスポンサーとするスカイマーク自身の再建策と米国勢の再建策の調整が難航して、儲からない下半期入りすれば、昨年のように資金繰りが再びひっ迫してスカイマークが2次破綻しても不思議はないのだ。
■不備だらけの再建計画
もちろん、すでに固まっているとはいえ、スカイマーク自身の再建計画は万全とはいい難く、むしろ不備だらけである。経営に関しては素人の弁護士が裁判所のお墨付きを得て再建計画の「監督委員」に就き、再建に向けたつなぎ融資をした投資ファンドのインテグラルの利害を極端に尊重する裁定を下したことが、その原因だ。インテグラルの追加資金拠出を抑えたため、債権者への弁済に充てる新資本金をわずか180億円しか確保できなかった。インテグラルにとっても、喜べるスキームではない。資本の過半を握ったものの、通常のファンドの投資ではあり得ない、5年間にわたる資金の塩漬けを余儀なくされたからだ。
スポンサーに起用されたANAは、自社の発券システムをスカイマークに採用させる方針だ。このため、スカイマークは顧客情報を自社で蓄積できなくなり、将来の自立の道が閉ざされてしまうという。
そんな中で、イントレピッドが不満を爆発させた。弁済額が少ないうえ、スカイマーク機のリースを引き継ぐという口約束をANAが反故にしたことで、イントレピッド自身の存立基盤が揺らいでいるからだ。そして、デルタをANAの対抗馬に担ぎ出し、独自の再建案を持ち出す事態に至った。
今回のように、2つの案が真っ向から対立して再建策を一本化できない事態に至った背景には、ビジネスや経営を知らない弁護士に多くを依存する民事再生手続きの制度的、構造的な欠陥がある。だが、そうした多くの問題を割り引いても、スカイマークの再建計画はすでにスポンサー間や新たな株主間の利害調整が終わり契約が成立している。新たな役員人事も固まった。時間が節約できるだけではない。金繰りの面でも、三井住友銀行や政策投資銀行といった大手金融機関の資金支援を期待できる状況が整っており、8月の債権者集会でイントレピット案を抑えて了承を得ることさえできれば、2次破綻を回避できる可能性が出てくるはずだ。
■デルタの悲願
デルタにとって、日本に橋頭堡を築くことは悲願だった。エド・バスティアン社長は米国時間の15日に行われた業績発表の席でも、「長い間、日本の提携先に関心を持っていたが、今回は絶好の機会。出資について債権者と話し合っている」と強い意欲を示した。
デルタが、2010年に破たんしたJALと提携し、米アメリカン航空や英ブリティッシュ航空が主宰する国際航空アライアンスのワンワールドからJALを引き抜き、デルタ主宰のスカイチームに移籍させようと試みたものの、JAL再建の陣頭指揮を執った稲盛和夫氏に拒否された話は有名だ。
13年秋に行われた羽田の国際線発着枠の配分では、デルタが国交省にいきなり25枠という突出した枠の提供を迫った。話し合いはこじれ、羽田と米国を結ぶ8〜9枠は今なお宙に浮いたままだ。
スカイマークの再建支援策に目を移すと、デルタはマイレージ制度や収益管理システムの導入をサポートするほか、共同運航、機体整備、出資などの協力を検討するとしている。だが、15日にイントレピッドが公表した計画案をみると、いずれも確約したのは「検討」にすぎない。これから利害調整に長い時間がかかるのは確実だろう。
また、現在スカイマークが就航している空港でデルタも乗り入れているのは、羽田、中部、福岡の3空港だけ。便数もわずかだ。国際線を持たないスカイマークと、国内線に参入できないデルタが、共同運航や機体整備の協力で実効をあげるのは容易ではない。
デルタ主導のスカイマーク再建を軌道に乗せるためには、足枷になっている出資規制(外資規制:3分の1未満、羽田空港乗り入れ会社への出資規制:20%未満)や、アクセスの容易な羽田の国際線便数を抑えて成田や関空からのシフトを防ごうとする行政指導など、がんじがらめの航空規制の見直しが必要になる。実現すれば、これらは消費者にとってさまざまなメリットもある話である。
■利権温存に躍起な国交省
ところが、航空族議員や国交省は利権を温存するのに躍起だ。永田町では、デルタがスカイマーク保有の羽田の発着枠のうち10〜15程度を国際線に転用する狙いを持っているとみて、反発を募らせている。
確かに、13年度をみると、デルタの売上高は378億ドルとアメリカン航空(404億ドル)、ルフトハンザ(399億ドル)、ユナイテッド航空(383億ドル)に次ぐ世界4位だが、純利益に目を移すと105億ドルを稼ぎ出すデルタは、アメリカン航空(12億ドルの赤字)、ルフトハンザ(4億ドル)、ユナイテッド航空(6億ドル)を大きく引き離してダントツの1位。純利益が17億ドルのJALや、2億ドルのANAがまともにぶつかれば、ひとたまりもないと映るのかもしれない。
こうしたことが、冒頭で紹介した太田大臣発言の背景にある。ちなみに、太田大臣は発言直後、首相官邸に安倍首相を訪ねて20分の会談を持った。米航空界最強のロビイストと呼ばれるデルタの要求を突っぱねることの是非や、新たな日米航空摩擦のリスクについて説明したのではないかと見られている。
いずれにせよ、政府・与党が反対一色では、デルタが再建スポンサーになっても、スカイマークが力を付けて寡占市場に風穴を開けるような存在に成長することはないだろう。せめて、政治には、下手に経済ナショナリズムを振りかざして日米摩擦を引き起こしたり、スカイマークの再建策づくりを膠着させて2次破綻を招くような事態は避けてほしい。
そのためには、スカイマーク再建に関するイントレピッド=デルタ案を速やかに、かつ冷静に検証し、スカイマークの再建を緒につける必要がある。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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