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コラム:安倍内閣支持率急落は「円安の遠因」に=植野大作氏(ロイター)
http://www.asyura2.com/15/hasan98/msg/905.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 7 月 21 日 23:38:20: igsppGRN/E9PQ
 

コラム:安倍内閣支持率急落は「円安の遠因」に=植野大作氏
http://jp.reuters.com/article/2015/07/21/column-forexforum-daisakuueno-idJPKCN0PV0CH20150721
2015年 07月 21日 15:48 JST 植野大作三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト


[東京 21日] - 報道各社が実施した世論調査で、安倍内閣の支持率が低下している。例えば、先週末に毎日新聞と朝日新聞が行った世論調査では、支持率がそれぞれ35%、37%と第2次安倍内閣発足後の最低水準に落ち込んだ。今回は内閣支持率低下とドル円相場の関係について考えてみたい。

まずは歴代の内閣支持率を眺めると、2000年に第1次森内閣が発足して以来、いずれも発足直後付近がピークとなり、その後は下降気味に推移する傾向がある。2001年に発足して長期政権を築いた小泉内閣ですら、発足から1年以上経過すると支持率は断続的に50%前後へ低下している。

一般に「政権存続の危険水域」と言われるのは「支持率20%台以下」であり、2006年に発足して短命に終わった第1次安倍内閣も支持率が2007年に20%台に低下した後、総辞職に追い込まれた。現在、第3次安倍内閣への支持率は「要警戒ゾーン」まで低下しているが、「政権存続の危機」とまで言える状況にはなっていない。ドル円相場に及ぼす影響を議論するのは、時期尚早の感が強い。

ただ、政局の行方に予断は禁物だ。第3次安倍内閣の支持率が今後も下がり続けた場合は、為替市場も無関心ではいられなくなるだろう。過去、歴代内閣の支持率とドル円相場の間に「決まり事」のような関係はなかったが、第2次安倍内閣発足後に加速した円安の動きについては、「大胆な金融緩和によるデフレ克服」を公約に掲げて国政選挙に圧勝し続ける政権の存在が影響していたことは間違いないからだ。

また、一般論を述べると、株式市場では「政局の混迷=株価の重石」と解釈されやすい一方、「政局の安定=株価のサポート」と見なされることが多い。近年の為替市場では、「リスクオンの円安」「リスクオフの円高」という連想方程式がすっかり市民権を得た印象がある。安倍内閣の支持率がこの先一段と低下していった場合、その程度によっては円高圧力が増してくる可能性があるだろう。

<狭まる財政出動余地、強まりやすい金融緩和要請>

もっとも、安倍首相が最近の支持率低下を全く気にしていないわけがない。今年秋の自民党総裁選は無風で再選を果たせても、来年夏には参院選が控えている。第3次安倍内閣への支持率が低下している原因については諸説あるが、国内外の市場関係者の間では「安保最優先」の政策運営に注力するあまり、過去3回の国政選挙で非常に高い支持を得た「経済最優先」の看板が色あせているためではないかとの意見が多い。

昨年12月の衆院選で圧倒的な民意を獲得した自民党の選挙用キャッチコピーが「景気回復、この道しかない。」だったことを踏まえると、今後の為替相場への影響を考える際に注目すべきは、来年夏の参院選をにらんで運営される安倍内閣の経済政策の舵取りだろう。

「アベノミクス=3本の矢」のこれまでの稼働状況を眺めてみると、まず「機動的な財政政策」については、第2次安倍内閣の発足直後こそ、総額13兆円を超える超大型の財政出動が目撃された。だが、現在は財政の大盤振る舞いによる景気対策の発動余地は狭まっている。

一部の農林族議員の間では、環太平洋連携協定(TPP)対策で最低でも1兆円の対策を求める声が挙がっているようだが、一般政府の債務残高が名目国内総生産の2.5倍に達しつつある日本の状況を踏まえると、財政による経済対策には自ずと限界がある。TPP対策が増える場合は他が削られ、総額予算の膨張は抑制されそうだ。

他方、「民間投資を喚起する成長戦略」については、アベノミクスの開始直後こそ思い切った規制緩和の推進が株式市場で期待されていたが、これまでに示された各種の規制緩和策については、「政府の自己評価」と「市場の客観評価」にかなりの温度差がある。数こそ沢山あるようだが、いわゆる「岩盤規制」が一気に粉砕されて成長率大幅アップの起爆剤になるとの期待が盛り上がるには至っていない。

来年夏の参院選に臨む与党の立場で考えれば、大胆な規制緩和を派手に進めてしまうと、既得権益で守られていた各種業界などからの組織票を失うリスクを抱え込むことになる。目先の選挙戦にマイナスに働くかもしれない規制緩和が、参院選目前の時期に一気に進む可能性は低そうだ。

このような状況下、第2次安倍内閣の看板政策である「デフレからの脱却」を見据えた経済政策運営の比重は、これまで同様、機動的に動かしやすい金融政策に重くのしかかる状況が続くだろう。

この先も安倍内閣支持率の低下が進んだ場合、例えば黒田日銀総裁が国会に呼ばれて答弁を行う頻度が一段と増加したり、黒田総裁と安倍首相の昼食会合が官邸で開催されたりするケースが増えるかもしれない。少なくとも一部の与党議員の間では、「永田町発・三越前行き」の金融緩和要請が強まりやすくなるだろう。

<1ドル125円超の空中戦が秋以降に再来か>

むろん、そうした期待に応えるか否かは、日銀が独自に判断して決めることだ。ただ、黒田総裁以下の執行部が2016年度前半頃に達成できると主張している物価目標2%について、民間エコノミストの間では「たぶん無理」との批評が多い。この先、実際に目標達成が難しい状況が明らかになり始めた暁には、日銀も「何らかの対応」を迫られそうだ。

執行部が物価目標2%の早期達成が無理筋だったことを素直に認めて「長期の努力目標」などの位置づけに変えてしまわない限り、何らかの政策変更をアナウンスしないと、これまで市場に語りかけてきた「必要なら躊躇(ちゅうちょ)なく金融政策を調整する」などの説明が宙に浮いてしまうことになる。あくまで私見だが、客観的に見て容易ではない高い物価目標をできるだけ早期に達成するためには、その善悪は別にして、円安・株高・債券高の三重奏による市場の全面協力を得ないと難しいだろう。

先月10日の国会答弁で黒田総裁が「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れていくことは考えにくい」などと発言して思わぬ円高ショックを喚起して以来、市場の一部では「これ以上の円安は日銀が望まないので追加緩和の可能性は消えた」との見方が渦を巻いているようだが、果たして本当にそうなのだろうか。

翌週16日の答弁で黒田総裁は「前回の発言は名目為替レートの水準や先行きの評価を申し上げたわけではない」と市場解釈の火消しに回ったほか、19日の定例会見では「為替は物価に影響するので注視するが、特定の水準やスピードを考えて政策を運営することは全くない」と明言している。一連の日銀総裁発言の真贋は、物価目標2%の早期達成が怪しくなり始めた場合の金融政策運営によって試される局面がやがて訪れるだろう。

ちなみに当社では、今秋以降の金融政策決定会合で「超過準備付利の小幅引き下げ」と「買い入れ国債の平均年限長期化」などを組み合わせた金融政策の調整が実施されると見ている。「安保最優先」の国会運営に邁進している安倍首相も、恐らくその頃には国民受けが比較的良かった「経済最優先」の姿勢を前面に押し出してくるのではなかろうか。

我々がメインシナリオとしている日銀の追加緩和が今秋以降に実施された場合、年内にもゼロ金利解除に踏み切りそうな米国の金融政策との方向性の違いが一層明らかになりそうだ。ドル円相場は再び1ドル=125円を超えた空中戦に向かうと見ておきたい。

*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

 

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