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香港の金融街・中環で、急落する香港ハンセン株価指数を示す電光掲示板(2015年7月6日撮影、資料写真)。(c)AFP/ISAAC LAWRENCE〔AFPBB News〕
デフレ不況に突入していく中国経済 抜本的な改革なき株価対策、この先待ち受けるものは?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44340
2015.7.21 柯 隆 JBpress
中国経済が迷走している。経済成長率は下げ止まらず、IMF(国際通貨基金)の推計では、2015年の実質GDP伸び率は、政府が掲げる7%の成長目標を下回り、6.8%になると見られている。実態はそれ以上に深刻であろう。
多くの研究者が指摘しているように、中国では労働力の供給が減少に転じているため、経済成長の減速は決して驚くべきことではない。ただし、労働力は一気に減少しているわけではない。目下の景気減速の一番の原因は需要不足にある。
投資も消費も輸出も、いずれも振るわない。主要産業は多くの過剰設備を抱えており、新規投資は減少している。また消費は、GDPへの寄与度で見ると少しずつ拡大しているが、依然として50%に達することはなく、経済成長のけん引役として不十分である。さらに輸出は大きく落ち込んではいないが、拡大もしていない。
■20年以上前から内需振興を宣言してきたが・・・
いつの時代も、デフレは需要不足によってもたらされる。今の中国経済も同じ問題に直面している。20年以上も前から中国政府は内需振興を宣言してきたが、いまだに投資と輸出に依存する経済体質が続いている。
本来ならば、中国のような人口の多い国では、内需を刺激し自己循環する経済成長を実現できるはずである。しかし、政府が信奉する「比較優位」戦略があまりにも大成功を納めたため、そこから脱却することが困難になっている(比較優位戦略とは、安い人件費をテコに輸出製造業を振興し、廉価なメイドインチャイナの製品や商品を大量に輸出して、それによって経済成長を持続することを指す)。
しかし、比較優位戦略が有効なのは発展途上国の段階である。中所得国レベルを過ぎれば、内需依存の戦略に転換する必要がある。なぜならば、経済成長とともに自国通貨の為替レートが切り上がり、人件費も上昇するからだ。特に中国のような大国にとって、経済成長を牽引するエンジンとして外需に期待するのはそもそも無理がある。
内需不足の事例として自動車産業はその典型と言えるだろう。現在、中国では、外資系の完成車メーカーを含めれば、1年間の生産能力は5000万台に上ると言われている。しかし、実際に1年間生産される自動車は2500万台程度である。すなわち、約50%の設備は余っているのである。自動車産業は波及係数の大きい産業であり、設備が過剰であるということは、鉄鋼、板ガラス、アルミなどの素材産業の過剰設備を意味する。主要産業における供給過剰は自ずとデフレをもたらすことになる。
■デフレとインフレの混在模様
ただし、今の中国経済はデフレなのかインフレなのか、答えにくい状況にある。
消費者物価や生産者価格で見た場合、明らかにデフレ、あるいはその入り口に差しかかっていると言える。しかし、不動産と株式の資産価格を見ると、依然として資産インフレの状態にある。
その中で政策当局は、景気を下支えするか、資産バブルを警戒するかという選択を迫られている。
これまでの半年間、人民銀行(中央銀行)は4回にわたり利下げを実施してきた。要するに、資産バブルを警戒するよりも、景気対策を重視したのである。だが、思い切った金融緩和政策が採られたにもかかわらず、景気は上向かなかった。
あげくに資産バブルがさらに進行した。政府は不動産バブルの崩壊を恐れ、およそ1年前から不動産投資をコントロールし、不動産価格は小幅ながら下落した。しかし、行き場を失った資金が株式市場に流れ、株式バブルが再燃した。その結果、わずか1年で上海株価総合指数は2.4倍にも高騰してしまった。
専門家の予想通り、短期間に高騰した株価は暴落し悲劇が生まれた。そもそもマクロ経済のファンダメンタルズが改善されず、上場企業の業績もよくない状況で、株価の高騰は不自然な動きだった。
そのきっかけを作ったのは中国政府である。昨年来、「人民日報」は「株価の上昇はまだ始まったばかり」といった社説を何本も掲載した。それに拍車をかけるように、個人の投資家にも信用取引が認められるようになった。部の個人投資家は自己資金の3〜4倍の資金を証券会社から借り入れ、株式投資に注ぎ込んだ。
しかし、6月に入ってからわずか3週間で上海株価総合指数は32%も暴落した。信用取引に手がけた個人投資家の多くは金融資産がマイナスとなってしまった。今回の株価高騰が官制相場という性格を持つ以上、個人投資家の怒りの矛先は当然政府に向かっていくであろう。
■改革を加速する以外に有効策はなし
これからの中国経済はどうなるのだろうか。中国政府の株価対策を見ると、上場企業の半数近くが売買を停止し、上場の国有企業に自社株の買い増しを命じるなど、そのほとんどは反市場経済のやり方である。
国家権力を使って市場に直接介入するやり方は短期的に混乱を抑えることができるかもしれないが、必ずやさらなる混乱を招くことになる。
李克強首相はヨーロッパ訪問のときに行った演説で「中国経済はハードランディングしない」と宣言した。また、習近平国家主席の経済ブレーンの劉鶴氏は国内メディアのインタビューに答える形で「中国経済も株式市場も問題ない」と述べた。
しかし、IMFのブランチャード調査局長は「中国株式市場のバブルは崩壊した」と明言。株価の暴落という現実は、ブランチャード氏の認識が正しいことを示している。劉鶴氏の発言の論拠は不明だが、経済構造転換の遅れと株式市場の欠陥は明らかである。
国家統計局が発表した第2四半期の経済成長率(速報値)は7%と大きな改善が見られない。こうした局面においては、いかなる経済政策も安定した経済成長を実現できない。景気を下支えする緩和政策はバブルの再燃を助長することになる。反対に、思い切った引き締め政策は経済のハードランディングを招く恐れがある。
中国政府が行うべきなのは、抜本的な経済改革に取り組むことしかない。経済改革に景気を押し上げる即効性は期待できないが、差し当たって改革のロードマップとアジェンダを具体的に公表することが重要である。
中国経済は大きな問題を抱え、デフレの入り口に差しかかっていることを再認識し、抜本的な改革で対処すべきであると強調しておきたい。
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