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「増税しないと日本もギリシャになる」は真っ赤な嘘
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150720-00895959-sspa-soci
週刊SPA! 7月20日(月)9時21分配信
連載09【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】
▼ギリシャの悲惨な経済状況
⇒【グラフ】図2「ギリシャのGDPと政府債務対GDP比の推移」
http://nikkan-spa.jp/895959/11-2-2
ギリシャは2008年に表面化した財政問題を解決すべく、緊縮財政、増税を5年間続けていましたが、その結果は以下のとおり。散々たる結果です。日本で増税、緊縮財政を訴えている人たちは、この状況をどう受け止めているのでしょうか。
・25.6%の高い失業率 (緊縮前は7.8%)
・100万人が職を失う(ギリシャの人口は1100万人)
・自殺率が36%増加
・20万人が海外へ出国
・GDPが2421億ユーロから1791億ユーロに減少。実に26%の下落。
とくに雇用は最悪です。ギリシャの人口は1100万人ですが、100万人の失業者という状況を日本に当てはめると、なんと1000万人が失業したことになります。失業率は25%ですから、4人に1人が失業状態です。自殺者も急増し、多くのギリシャ国民の命が失われました。ギリシャ経済は完全に崩壊したと言ってもいいでしょう。
しかし、増税派のエコノミストと、マスコミはこのギリシャの惨状を報道しません。彼らにとって、緊縮財政と増税によって経済が崩壊した事実は「不都合な真実」だからです。
▼「緊縮財政の社会実験」は見事に失敗
ギリシャ国民が受けた経済的な打撃は想像を絶します。それでも財政健全化が達成できたのならば、まだ救いはあります。しかし、財政状況の指標と言えるギリシャ政府の債務対GDP比は減るどころか逆に増えています(図2)。驚いたことに、政府の支出を30%も削る大緊縮財政を行ったというのに、ギリシャの財政はかえって悪化しているのです(緊縮開始110% → 現在177%)。
ちなみに政府債務対GDP比とは、政府が抱えている債務をGDPで割ったものであり、その国の経済規模に対して債務がどれだけあるのかを表しています。経済規模が大きければ大きいほど許容できる借金の額は大きくなるので、債務の絶対額ではなく、経済規模に対する割合で財政状況を評価するのです。
政府債務対GDP比=政府債務÷GDP(国内総生産)×100%
今回ギリシャの財政健全化(政府債務対GDP比の縮小)が失敗した理由ははっきりしています。図2を見ていただければわかりますが、ギリシャの経済規模を示すGDP(国内総生産)が26%も減少してしまったからです。
経済規模(GDP)そのものが縮小してしまったので、いくら増税緊縮で債務を削減しても、政府債務対GDP比は改善しません。ギリシャのGDPが縮小した原因は言うまでもなく、増税と緊縮財政による経済の悪化です。ギリシャは国民経済を破壊されたうえに、財政状況はさらに悪化、そして結局財政破綻へ……。
ギリシャによる「緊縮財政の社会実験」は失敗に終わったのです。
増税緊縮財政で財政健全化ができないことは、ギリシャが身をもって証明したにもかかわらず、いまだに「日本はアベノミクスをやめて緊縮財政、消費税増税をしなければギリシャの二の舞いになる」と主張する人たちが存在します。これには呆れるしかありません。増税派のエコノミストは増税して日本をギリシャにしたいのでしょうか?
▼日本の財政はアベノミクスで解決!
しかし、日本はギリシャと違いアベノミクスがあります。ギリシャもアベノミクスのように量的緩和を行えばいいのではないか?と思われるかもしれませんが、ギリシャはできません。なぜなら、ユーロ共通通貨圏に加入しているからです。ユーロ共通通貨圏では、金利や通貨の発行をすべて欧州中央銀行(ECB)で行っているため、ギリシャ一国の判断で金利の調整や通貨の発行などの金融政策(量的緩和政策)ができなくなっているのです。
しかし、日本ならばユーロ共通通貨圏の国々のような金融政策の縛りがないため、政府日銀の判断によって金融機関が保有している国債を買い取る、量的緩和政策を実行することが可能です。そして、日銀は政府の子会社であるため、日銀が買い取った国債は政府の負債ではなく、政府の資産となります。したがって、量的緩和策を行うと、実質上の政府の債務が減ることになります。
日銀はアベノミクス開始以降、国債を200兆円以上買い上げているので、日本政府はこの2年間で借金を200兆円減らしたことになります。ギリシャが経済を破綻させても実現できなかった財政健全化を、アベノミクスはいとも簡単に成し遂げてしまいました。
これもマスコミが正しく報道しない不都合な真実の一つです。
▼緊縮増税こそが日本をギリシャ化させる
消費税1%の税収は約2兆円と言われています。したがって、消費税増税によって政府の借金を200兆円減らそうとするならば、単純に10%の増税と10年の歳月が必要になります。しかしながら、この試算は増税により経済が悪化しないことを前提にした試算となり、ギリシャの惨状を見ればそのような前提はありえないことは明白です。緊縮増税をやれば、今のギリシャのようにGDPの激減とともに税収は悪化、多くの失業者と自殺者が溢れかえることになるでしょう。日本の経済はまちがいなく崩壊し財政は悪化する。結局国民が苦しむだけ……一体何のための増税なのでしょうか。
量的緩和、アベノミクスにも副作用がまったくないというわけではありません。量的緩和を実行すれば、市中の貨幣量が増えることになるので、日本経済はインフレに向かいます。しかし日本は15年以上ずっとデフレに苦しんできたので、むしろインフレは望むところです。副作用どころかメリットです。
増税により失う代償とは比較になりません。
つまり、日本が取るべき道は、効果がまったく期待できないばかりか日本の経済を破壊してしまうだけの緊縮増税ではなく、アベノミクス推進による経済成長なのです。愚かな消費税増税は即刻凍結するべきです。
◆まとめ
・ギリシャは厳しい緊縮政策を断行し、100万人の失業と、GDP26%減という大きな犠牲を払った
・多くの犠牲を払ったにも関わらず、財政健全化はあえなく失敗。結局財政は破綻した
・緊縮財政によって財政を健全化させることは不可能であることが証明された
・日本は量的緩和によりたった2年で政府の債務を200兆円減額させた
・アベノミクスによる経済成長こそが日本が取るべき道
・増税は日本をギリシャ化させる
【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ
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