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トヨタ自動車「アクア」の現行モデル(トヨタグローバルニュースルームより)
トヨタ「アクア」の人気が全く衰えない理由 発売4年目でも販売トップをひた走る
http://toyokeizai.net/articles/-/77524
2015年07月19日 岡本 幸一郎 :モータージャーナリスト 東洋経済
トヨタ自動車のコンパクトカー「アクア」が、ロングヒットを続けている。
日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会が7月上旬に発表した2015年上半期(1〜6月)の新車販売は、アクアが約12.1万台で普通乗用車、軽自動車を合わせた車名別ランキングの中で堂々の1位に輝いた。
■プリウス、フィットや「売れ筋」軽自動車を圧倒
アクアは、普通乗用車部門のランキングで2位のトヨタ「プリウス」(約7.1万台)、3位のホンダ「フィット」(6.7万台)を5万台以上も引き離しただけでなく、ホンダ「N-BOX」(約10.7万台)、ダイハツ工業「タント」(約8.7万台)、日産自動車「デイズ」(約8.7万台)など、軽自動車の「売れ筋」モデルも圧倒している(図表参照)。
アクアは2011年末の登場以来、プリウス、フィットとしのぎをけずりながら、普通乗用車の月販ランキングでは常に3位以内をキープし、2013〜2014年は2年連続で暦年1位に輝く。
2014年6月以降は、ここまでずっと同ランキングでトップの座を堅守している。今年1〜6月の販売は前年同期比約2%減とわずかながらの落ち込みにとどまっている。発売から4年が経ち、新車効果はとっくになくなっているはずなのに、人気はまったく衰えていない。
軽自動車は今年4月の増税以後、販売の勢いが落ちているとはいえ、購入価格や税金、保険料といった維持費などのコスト面では圧倒的に安い。たとえばホンダ、ダイハツ、日産の売れ筋軽自動車の車両本体価格は110万〜120万円台からの設定になっている。対するアクアは最安でも車両本体が176万円台。値引きが多少あるとしてもオプションや諸費用・税金込みにすると、200万円前後以上のおカネを出せないと買えない。はっきりいって、アクアは「安くはない」のだ。
それなのに、アクアはなぜこれほどまでに売れ続けているのだろうか。
まずは、クルマとしての完成度の高さが挙げられる。最大の特長は圧倒的な燃費の良さだ。改めて説明すると、アクアは排気量1500ccのガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド専用モデル。既存の燃料インフラを使って燃費を高められるのが利点である。カタログ値で37.0km/L(ガソリン1リットル当たりの走行距離、JC08モード、以下すべて同じ)という世界トップの燃費性能を持っている。
もともとアクアは2011年末の発売当初、プリウスの弟分的な立ち位置で、35.4km/Lという燃費性能を持って登場した。この時点で、トヨタのもう一つのHV専用でドル箱のプリウスを1割近く上回る世界最高水準の燃費性能を実現して、世に出てきた。
■発売当初は悪評もあったが…
発売当初は「実燃費がそれほどよくない」「乗り心地が硬い」「インパネ(内装)がプラスチック感丸出しで、安普請なところが気になる」などといった指摘もあったものの、アクアは順調に売れた。車両本体価格で200万円を軽く超えるプリウスよりも割安ながら、最新鋭のエコ性能を備えた点が高く評価されたのだ。老若男女、誰にも嫌悪感を抱かせないデザインも受け入れられた理由だろう。
現行アクアの「X-URBAN」(トヨタグローバルニュースルームより)
アクアの購入者は40〜50代がもっとも多く、法人は全体の約2割という。法人が買い求めることは想像がつくとして、40〜50代の人にとって、単なるコンパクトカーを買うというのは、少なからず抵抗があるのではないかと思うが、アクアはご近所の手前、乗っていて恥ずかしくない一方、ドイツ製の輸入車のように贅沢にも見えない。地方都市で奥さんが足代わりに乗るような、セカンドカーユースだけではなく、1家に1台のファーストカーでも十分に耐えうる。
アクアが売れた一方、トヨタの「ヴィッツ」や「ラクティス」など、自動車業界で「Bセグメント」と区分されるアクアと同クラスのコンパクトカーの販売が落ち込むという現象が起きた。たとえばヴィッツの車両本体は最安で144万円台から、ラクティスは同165万円台からと、アクアよりも安い。室内だけで比べるとラクティスのほうがアクアよりも広く、荷物もたくさん積める。
従来はこうしたコンパクトカーを購入していた層が、多少、高くても商品内容が充実したアクアに目を向けた。アクアと同じような価格帯で、もう少し大きなクルマから、それもトヨタの固定客だけではなく、ライバルメーカーからの乗り換えたユーザーも少なくないだろう。
メルセデスベンツ「Aクラス」やBMW「1シリーズ」などのように、日米欧など先進国を中心として世界全体で自動車のダウンサイジングが進み、小さなクルマにも「プレミアム」感が求められてきている流れが追い風になった側面も少なからずあるかもしれない。
■3代目「フィット」が燃費世界一を奪取したが…
そんなアクアの牙城が崩されかけたことがある。2013年秋、ホンダの3代目「フィット」の登場だ。
フルモデルチェンジ(全面改良)で生まれ変わった現行フィットは、内外装はもちろん、エンジン、トランスミッション、プラットフォーム(車台)など、すべてを刷新。新しいハイブリッドシステムを採用することで、最高で36.4km/Lの燃費性能を達成し、当時のアクアから世界一を奪取したのだ。2代目フィットハイブリッド(26.4km/L)とはケタ違いの進化を遂げた。
そもそも初代フィットは、それまで車体後部(リア)に位置するのが当たり前だったガソリンタンクを、車体中央(センター)に配置するセンタータンクレイアウトを採用。小さな車体で最大限の居住空間を実現するなどの商品性や、優れたデザインなどが高い評価を受けている。日本だけでなく120カ国を超える全世界で販売し、これまでの累計販売台数は500万台を超える。
華々しく登場した3代目「フィット」だったが…(撮影:梅谷 秀司)
そのフィットが世界最強の燃費性能を手に入れたのだ。しかも、ホンダは3代目フィットハイブリッドの価格をアクアとほぼ同水準に設定して、真っ向からぶつけた。もともとユーザーの多い初代、2代目フィットからの乗り換えだけではなく、アクアの購入を検討していたような層に訴求。3代目フィットは2013年10月に月販台数でアクアを上回り、普通乗用車の車名別販売ランキングで首位を奪い返す。もちろん新車効果もあっただろうが、2014年半ばにかけてフィット優勢の展開が繰り広げられる。
ところが、その後はアクアが再び隆盛を取り戻す。アクアは2013年12月にマイナーチェンジ(一部改良)で、燃費性能を37.0km/Lに高め、燃費世界一を奪還した。これに加えて、フィットの新車効果の一巡もあるが、最大の要因はフィットの「自滅」だ。3代目フィットから採用した新型ハイブリッドシステムに不具合が連発。短期間で計5回に渡るリコール(回収・無償修理)を出してしまったことだ。
これでフィットに一定のネガティブなイメージが植え付けられてしまった側面は否定できない。トヨタ、ホンダ以外にはコンパクトハイブリッドを持っている日本車メーカーはなく、アクアは「敵失」でこの分野の第一人者の地位を一層強固にした。
今年中にもフルモデルチェンジがうわさされるプリウスが、モデル末期になっているのもアクアの販売には有利に働いている。アクアの売れ行きを語るうえで、国内の自動車販売で軽自動車を除くと過半近いシェアを持つ、トヨタの販売網の強さは外せない。
■トヨタ4系列で売る強さも
トヨタの国内販売には高級車ブランド「レクサス店」を除くと、「トヨタ店」「トヨペット店」「ネッツ店」「カローラ店」という4系列の販売店があり、そのすべてがアクアとプリウスを扱っている。「トヨタの国内販売会社は地元の名士が経営している優良会社が多く、営業・サービスのレベルは、競合系の販売会社に比べて高いケースが多い」とは、国内自動車販売業界でよく語られる話だ。その強力なネットワークに、総合的に商品力の高い商材が乗っかっているのだから、ある意味、売れて当然という部分もある。
ただ、あえて悪い言い方をすると、「横並び気質のある平均的な日本人が無難に選んでいるクルマ」だという側面はあるのかもしれない。40〜50代が購入の中心なのはある程度の財力がある層だからで、まだ所得も高くない20〜30代にどれだけ人気があるのかは逆に気になるところだ。
アクアのスポーツモデル「G“G's”」(トヨタグローバルニュースルームより)
アクアの販売に興味深いデータとして、スポーツコンバージョンモデルである「G‘s」の販売比率が高いことが挙げられる。2013年秋に追加されたのだが、2014年には1万5130台を販売。実に月販1000台をゆうに超えるペースである。2015年に入ってからも、上半期で5500台を販売している。
アクアは意外なほどハンドリングマシンだ。重量物を車体の中央寄りに集約したことで、ステアリング操作に対して応答遅れの小さい、一体感のあるハンドリングを身に着けている。プリウスの弟分的な位置づけには違いないのだが、クルマとしての性格として、意外や走りにこだわっている。
走行性能は販売面ではあまり影響していないかもしれないが、この点は見逃せない。半面、たびたび指摘されている動力性能の物足りなさが、依然としていかんともしがたいことは付け加えておきたい。
アクアは走りに期待するユーザーが多いということだろうか。これはプリウスにはないキャラクターだ。圧倒的な低燃費という強力な武器を持ちながら、スポーツコンパクトとしての資質も備えているということだ。
また、2014年秋のマイナーチェンジでは、「X-URBAN」という、SUVテイストに架装したモデルが加わった。発想としては安直とはいえ、アクアに関心はあっても、そもそもの発売年数の経過や「誰でも乗っている」という同質性に懸念を感じていた人にとって、新鮮味を感じさせるモデルであり、このタイミングで登場したことに意義があるといえる。
アクアの販売が相対的に鈍る可能性があるとすれば、次期プリウスの販売後かもしれない。消費者の関心も、トヨタ販売店の意識も次期プリウスに向きやすくなるからだ。ただ、それでも次期プリウスとの価格差から、逆にアクアに目を向けるお客が生まれるきっかけにもなりうる。新車が出れば販売店は新しいお客を店頭に呼び込め、販売機会を広げられる。
フルモデルチェンジまではまだ時間はありそうなアクアだが、当分は高水準で売れ続けそうな勢いを感じさせる。なんだかんだ言って、競合メーカーがアクアの隆盛を止めるのはなかなか難しい。
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