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セブン-イレブンの店舗(「Wikipedia」より/Magnus Manske)
セブン、なぜローソンとファミマを圧倒?必ず鈴木会長が試食するワケ 「いい加減」排除
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10779.html
2015.07.19 文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授 Business Journal
どのコンビニエンスストアでもオリジナルのドーナツが売り出されるようになり、まさにドーナツ戦争といえる状態です。しかし、みなさんは商品だけを見て、どれがどこのドーナツか区別できるでしょうか?
どのドーナツも、恐ろしいほどに同質化しており、その源は確実にミスタードーナツにあります。「オールドファッション」のような一般的な商品はともかく、「ポン・デ・リング」などはミスドの商品開発の賜物ですから、類似商品の開発は遠慮してあげてもいいと思いますが、生き馬の目を抜くビジネスの世界では、そんな悠長なことはいっていられないのでしょう。
このドーナツ戦争に火をつけたのは、セブン-イレブンです。セブンの後を追うように、他のコンビニも続々とドーナツ販売に参入しました。こうした状況を見ると、セブンおよびセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長の存在のすごさをあらためて感じる次第です。
リーダー企業の戦略「まねをする」
一般的に、リーダー企業は保守的な戦略を採用しがちです。なぜなら、業界2〜3位のチャレンジャー企業やフォロワー企業などより、先行するメリットが少ないからです。
家電業界では、かつてパナソニック(旧松下電器産業)がソニーの戦略の後を追い、「マネシタ電器」と揶揄されました。自動車でも、アメリカでの現地生産、高級ブランドの立ち上げなど、トヨタはホンダを追随していました。
このように、リーダー企業が先行することが少ないのは、なぜでしょうか?
スケールメリットとも呼ばれる規模の経済は通常、売上高の最も大きなリーダー企業に有利に作用します。そのため、チャレンジャー企業やフォロワー企業がリーダー企業と同質の競争を行っても、勝つのは難しくなります。
その結果、チャレンジャー企業はリーダー企業との差別化を狙い、積極的に新たな取り組みに挑戦していきます。通常、リーダー企業はより豊富な資金や人材、研究開発、生産、営業体制を持っているため、先行されても後から挽回可能であり、リスクの高い新規事業に打って出るメリットは小さいのです。
また、他社の新規事業は、リーダー企業にとって、お金のかからない上にきわめてリアルなマーケティングリサーチになるという捉え方もできます。
■新たな取り組みに積極的なセブン-イレブン
こうしたセオリーに従えば、コンビニのリーダー企業であるセブンもローソンやファミリーマートの後を追うことになるはずですが、今回のドーナツに限らず、新たな取り組みへの積極的な挑戦、そして成功が目立っています。
例えば、プライベートブランド(PB)にもかかわらず、高価格で高機能を訴求する「セブンゴールド」では「金の食パン」が大ヒットしています。
金の食パンは、2013年の発売当時、1斤6枚入りで250円、ハーフ厚切り2枚入りで125円と、ほかのPB商品と比較して実に約2倍、一般のナショナルブランド(NB)商品よりも高価格でしたが、発売から5カ月足らずで累計販売数量が1500万食に達するという大フィーバーを巻き起こしました。
この開発に際して、セブンは製パンメーカーはもちろん、製粉メーカーも交えて長期にわたる調査・検討を行っています。
■鈴木敏文会長の存在感
セブンがこうした取り組みを他社に先駆けて実行している要因のひとつとして、筆者は鈴木会長の存在に注目しています。鈴木会長のコメントやエピソードは実に理にかなっていることが多く、リーダーにおける覚悟の重要性などは大変勉強になります。
詳しくは『セブンプレミアム進化論 なぜ安売りしなくても売れるのか』(朝日新聞出版/緒方知行、田口香世)などに詳しいですが、例えば、高付加価値PBであるセブンゴールドに関して、鈴木会長は以下のような考えで着手したようです。
「どこも価値訴求に重きを置いたPBを出していないときに、あえて我々はこれをやろうと考え、取り組んできました。また歴史的に見ても、PBは安く売るためということで出てきたのは事実だとしても、その時とは時代がもう違っていると考えたわけです」
「私は持論として、『量を追いかけても、なんの意味もない』『量は決して質を凌駕できない』『逆に質の追求の結果として、量はついてくるので、質を追求する』ということを厳しく言い続けてきました」
実際のメーカーとの交渉においては、「全部引き受けるから最高の品質のものを作ってください。価格は気にしなくていい」と切り出し、相手は「どこにいっても、価格のことばかり言われるのに」と驚いたというエピソードが残っています。
また、これは高付加価値PBに限定した話ではありませんが、食品の新製品開発において、最後は鈴木会長の試食で決定するというシーンをテレビなどで見るたびに、「嘘くさい! 顧客志向はどこにいった?」と不満を持っていたのですが、以下のようなコメントを拝見し、恥ずかしくなった次第です。
「私の味覚が優れているから合否を決めるために試食をやっているのではない。トップ自らが試食を繰り返しやっているということで、商品の品質の向上を重視しているという姿勢が示され、絶対にいいかげんなことは許されないという緊張感がそこに生まれてくる。これが大事なことです」
「リーダーとしての私の仕事は、幹部や社員の仕事を、どうマンネリ化させないかということについて、真剣に取り組んでいくこと」
コンビニにおけるドーナツ販売で、セブンは先陣を切ったものの、他社に追随され、現在は同質化した競争が展開されています。しかしながら、上記の通り、先行することを恐れないリーダー企業であるセブンなら、セブンゴールドでのドーナツ展開など、必ずや新機軸を打ち出してくるでしょう。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)
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