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ソニー側は調達資金の大半をセンサーに投じると説明するが、市場では別の見方も…(撮影:尾形文繁)
ソニー、巨額調達に飛び交う「2つの憶測」 会社側はセンサー事業の拡大に充てると説明
http://toyokeizai.net/articles/-/76832
2015年07月18日 許斐 健太 :東洋経済 編集局記者
「いくら何でも1300億円の研究開発費は多すぎる。2000億円近い設備投資額にも過大感がある。ましてや4400億円となると、ソニーの真意が読めない」(市場関係者)
ソニーが6月30日に発表した資金調達は、その使途をめぐり、さまざまな憶測を呼んでいる。同社は公募増資と転換社債を合わせ、最大4400億円を調達する。公募増資は実に26年ぶりの決断だ。
■逼迫するイメージセンサーの需給
会社側は、その大半をイメージセンサーなど、デバイス分野につぎ込むと説明。1000億円超の最終赤字を計上し、構造改革に追われた前期から一転、成長事業で一気にアクセルを踏む方針だ。
実際にイメージセンサーの需給は逼迫している。特にソニー製のセンサーは小型・高感度など技術面で評価が高く、ハイエンドのスマートフォン向けで独り勝ちの状態。「液晶パネルと比べ、技術進化の余地も大きい。現状3割のスマホ向けシェアは、増強後には約5割に伸びそうだ」と、バークレイズ証券の伊藤和典アナリストは見る。
今後の需要増の柱となりそうなのが、米アップルのiPhone向けだ。現在、ソニーと米オムニビジョンの2社が供給しており、量ではソニーが圧倒しているとみられる。さらに2016年発売の「iPhone7」(仮称)は、フロント部分にカメラを二つ搭載する「デュアルカメラ」を採用するとの見方が強い。
「iPhoneで採用されれば、一気に普及し、需要が急増する。今回の増資で生産能力を増やしても、供給が足りなくなる可能性がある」(IHSテクノロジーの李根秀・主席アナリスト)
ソニーは、2010年に月産2.5万枚だったセンサーの生産能力を、2016年には同8.7万枚まで引き上げる見通しだ。それでも不足感が残るほど、センサーの引き合いは次第に強まっている。
とはいえ、工場を新設するわけでもないのに4400億円という調達額は多いのではないか、と見る向きも少なくない。株式市場でささやかれるのは2つのシナリオだ。
■シャープから事業買収?
ソニー製センサーはハイエンドのスマホ向けで独り勝ちの状態
1つは買収である。ソニー製センサーは現在、シャープがほかの部品とともにカメラモジュールへと組み立て、スマホメーカーに出荷している。今後車載向けなど新分野を開拓するには、センサー単品でなく、モジュールでの提案が必要になる。
シャープとしても経営危機下で、事業の選択と集中が避けられない。そのため「ソニーがシャープのカメラモジュール事業を買収するのではないか」との見方が浮上している。
もう1つがソニーフィナンシャルだ。同社は金融事業を手掛ける上場子会社で、出資比率が60%のため、連結決算では少数株主持ち分利益が純利益から差し引かれる。
仮に完全子会社化した場合、その流出がなくなるほか、「実効税率が下がるメリットもあり、合計で数百億円規模の純益押し上げ効果がある」(前出の市場関係者)。そうなると、ソニーが中期経営計画で掲げる、自己資本利益率(ROE)10%達成にも近づく。
ソニーは今年度からの中期計画で、センサーなどデバイス分野を「成長牽引領域」に位置づけたが、金融事業の位置づけは明確にしなかった。どこで収益の地盤固めをするのか。巨額調達の使途が行く末を左右しそうだ。
(「週刊東洋経済」2015年7月18日号<13日発売>「核心リポート03」を転載)
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