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この頃はまだ、余裕があった? 7月7日、ベルギー・ブリュッセルの欧州連合本部で4首脳会合を行うギリシャのアレクシス・チプラス首相(左)、アンゲラ・メルケル首相(左から2人目)、ジャンクロード・ユンケル欧州委員長(右から2人目)、フランスのフランソワ・オランド大統領(右)〔AFPBB News〕
ギリシャ救済はドイツの条件付き降伏 「ドイツの勝利」はナンセンス、自国の評判を守るために譲歩
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44299
2015.7.15 Financial Times JBpress
(2015年7月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
7月13日月曜日の朝、欧州が目を覚ますと、メディアにはギリシャの屈辱、絶大な力を誇るドイツの勝利、欧州の民主主義の壊滅といった見出しが数多く躍っていた。
何とナンセンスな話だろう。もし降伏した国があるとするなら、それはほかならぬドイツだ。
ドイツ政府は、これで3度目となる数十億ユーロのギリシャ救済策に原則的に同意した。
その見返りに受け取ったのは、経済改革を実行するというギリシャ政府の約束だが、そのギリシャ政府は合意したばかりの事項のいずれについても全く同意できないとの見解を明らかにしている。
急進左派連合(SYRIZA)政権は今後、署名したばかりの取引を妨げるためにやれることを全てやろうとするだろう。もしこれがドイツの勝利なのだとしたら、敗北など見たくもない。
■ギリシャの民主主義がないがしろにされた?
ギリシャの民主主義をないがしろにしたという指摘もナンセンスだ。7月5日に行われたギリシャの国民投票の結果は、本質的には、他のユーロ圏諸国はギリシャに対する数十億ユーロの融資を継続すべきである、それもギリシャが決めた条件で融資すべきだ、というものだった。そもそも、これは現実的ではなかった。
ギリシャの行動の自由を実際に制限しているのは、欧州連合(EU)の非民主的な性質などではない。ギリシャが破産しているという事実なのだ。
今回合意された枠組みではギリシャの主権が失われるというコメントの多くは、ギリシャが500億ユーロ相当の国有資産を民営化しなければならなくなることと、アテネに置かれる基金を外国人が監督することの2点に着目している。
歴代ギリシャ政府の汚職や恩顧主義の実績を考えれば、これはとてもいいアイデアのように思われる。
しかし、SYRIZAは民営化に強く反対しており、500億ユーロというような規模の資金が調達されることは考えにくい。
もちろん、一般のギリシャ国民はひどいジレンマに直面している。筆者は先週アテネにいたが、そこで出会った人々の多くは職や貯蓄、将来のことなどについて不安を募らせており、実に気の毒だった。
■すべてが残酷なヨーロッパ人のせいではない
だが、こんなことになったのはすべて残酷なヨーロッパ人のせいだ、緊縮さえなければギリシャは健全な国なのに、むやみやたらに緊縮財政を押しつけてきた連中のせいだなどという見方は、ネオ左翼の夢物語でしかない。ギリシャは何十年にもわたって不適切に統治され、かなり分不相応な暮らしを営んできたのだ。
危機に襲われた時、ギリシャ政府は国内総生産(GDP)比で10%を超える財政赤字を出しており、民間セクターはこの国への融資を拒んでいた。
ギリシャ・アテネの議会前で、緊縮策に反対するバナーの前を歩く男性〔AFPBB News〕
この時、国際通貨基金(IMF)やEUからの融資が得られなければ、緊縮財政への調整は即座に行われていただろうし、その内容も非常に厳しいものになっていただろう。
ギリシャの債権者たちが全く柔軟性を示さなかったという指摘も正しくない。
民間セクターの債権者たちは、すでに2012年の時点で「ヘアカット(債務元本の削減)」に応じていたし、ギリシャ側の返済期限もかなり先まで延長されているのだ。
一方、ドイツやオランダ、フィンランドなどの一般市民にも、不当に扱われたと感じる権利がある。
これらの国々がユーロに参加する時、単一通貨を創設する条約には「非救済」条項があると国民には告げられていた。
この条項は、他のユーロ圏諸国のツケをあなた方納税者が払う必要は決してないと安心させるはずだった。
非救済も、もはやこれまでだ。救済措置はすでにスペイン、ポルトガル、アイルランドにも講じられている。ギリシャは今回で3回目だ。
ギリシャへの新規融資は850億ユーロで、同じ地域の中規模国家セルビアのGDPのほぼ2倍に相当する。
また、ヨーロッパ人はケチでギリシャの債務の棒引きを拒んでいるとの話があるが、実際には、ギリシャがすでに借りている3200億ユーロを全額返済することはまずないだろうと理解されている。
ギリシャの債務元本削減を拒むユーロ圏はケチだと最も強く批判しているのが、自国納税者が責任を負うことのない国々のエコノミストたちであることは、実に印象的だ。
■フランスがギリシャの肩を持つ理由
フランスのオランド大統領はギリシャのチプラス首相を擁護してきた(写真© European Union )
繰り返されるギリシャ危機の直近のエピソードでは、フランスとドイツの亀裂も露わになった。
フランス政府は、ギリシャをユーロ圏内にとどめ、緊縮を緩和することを訴える擁護者として浮上した。
フランスには間違いなく、ギリシャを擁護する立派な動機があるのだろう。欧州の連帯や地政学といったことに関連した動機だ。
だが、もし筆者がドイツの納税者だったとしたら、EUのビルを去る際に、フランスのフランソワ・オランド大統領がギリシャのアレクシス・チプラス首相の肩を抱いた光景にかなり寒気を覚えたろう。
というのも、フランスには欧州の緊縮を覆そうとする自己中心的な理由もあるからだ。この国は1970年代半ば以降、均衡予算を1度たりとも可決したことがない。歴代のフランス政府はギリシャ政府とほぼ同じくらい、国内経済の構造改革を推進するのが難しいと感じる。
この直近の危機の後、フランスは恐らく、ユーロ圏を「強化する」ための名案――EU全域の社会保険など――に関する論争に戻るのだろう。さて、そのおカネを誰が払うと思っているのだろうか。
ドイツ人について言えば、彼らは直近のサミットで明らかに「グレグジット」――ギリシャをユーロ圏から追放するという考え――に手を出そうとした。そのような行動方針は「EUおよび世界におけるドイツの評判にとって致命的だ」と言ったルクセンブルク外相の忠告など、数々の警告を受けた後、ドイツ側はこの案を引っ込めた。
■悲劇と茶番
ドイツ政府はそのような結果となるリスクは取らずに、さらなるギリシャ救済に合意した。しかし、現実には、ユーロはすでに欧州に対するドイツの態度とドイツに対する欧州の態度に害を及ぼしている。
この物語全体は、あの偉大なドイツ人、カール・マルクスの格言を思い出させる。「歴史は繰り返す。最初は悲劇として、2度目は茶番として」という言葉である。ギリシャ債務に関する直近の合意は、茶番と悲劇を同時に演じてみせている。
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