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0、デフレ下の公共投資は、ブラックホールである。
バブル崩壊後日本は、景気対策として莫大な公共投資を行ってきた。しかしそのほとんどは一時の景気回復であり、持続的な成長や、拡大再生産には至らなかった。
莫大な借金によってなされた公共投資により、インフラが完成されると、同時に経済成長が失速するのが常であった。
その結果、公共投資に要した借金を全く返せず、莫大な国の借金が積み上がり、財政難に陥ってしまったのである。
景気対策の根本である低金利と金融緩和、生産刺激策、公共投資の3本柱は、バブル崩壊後、一時的、刹那的、モルヒネ的な回復はあったが、持続的な、自律的な拡大再生産には至らなかった。
今までデフレ下での低金利や、生産刺激策がなんら効果がないことは再三述べてきたが、ここにきて公共投資も、なんら効果がないどころか、災いをもたらしている事が鮮明になってきている。
それは、バブル崩壊後の公共投資によるおびただしいインフラの完成や、社会資本の増加にもかかわらず、日本の地方経済や、辺境地域の経済が潮が引くように衰退、空亡化していることだ。
それはデフレ下で、100億の公共投資をすれば、それと同等の100億の借金が実体市場に形成されることを物語っており、公共投資分の100億の借金が丸残りになるだけでなく、さらに100億の借金(負の付加価値)が形成されるているからである。
100億に相当するインフラは完成するが、公共投資分の100億の借金も返せず、市場の借金も100億増える事になり、総借金は2倍になる。景気対策に全くなっていないのだ。
このことはデフレ市場のような負の乗数が存在する市場において、公共投資がなされると、それと同程度の借金(負の付加価値)が形成される事は理論的に容易に推測できた。
しかし実際にそのようなことが起こっているかどうかは、特にバブル崩壊当初は、なかなか確認できなかった。
しかし現在バブル崩壊後デフレに陥り、20年近く経った今、潮が引くように地方の崩壊、消滅、空亡化が明らかになりつつある。
これは明らかに公共投資がブラックホールとなり、それ以外の地域の経済を衰亡させ、空亡、消滅させているからにほかならない。
例えば東京オリンピック関連で、国立競技場が2千500億の予算で作られると、それと同様の2千500億が実体市場からなくなるということだ。
2千500億円の付加価値(新国立競技場)を生み出すために、ゼネコンやその他の関連企業は、必要な生産資材、起重機、ブルドーザー、ダンプ、などを発注し、労働者を募集し、そのための資金を調達することになる。
しかしそれ以外の地域は、生産資材、資源や、起重機、ダンプなどの多くの物が枯渇する。労働者も流出し、資金も出て行く。
例えばセメントを例に取ろう。全国のセメントが続々と東京に集中する。そのため日本全体でセメントが逼迫し、価格が上昇する。
セメント価格の上昇は建設価格を上昇させるため、施主はローン返済が増え、建設業者は付加価値を低下させる。建設価格の高騰は、建設量の減少を招き、仕事がないため、ますます東京に業者が集まっていく。
起重機やダンプ、運転手、その他の労働者も同じように東京に集まって行く。
地元に戻り、あるいは地元に残り地域経済の担い手になっていた人達が、会社が、ダンプ、建設機械が地元から引きはがされるように東京に集まっていく。
タイルやセメントが建物から引きはがされるようになくなっていく。地元の資金が強力な磁力によって、貸し剥がされ東京に吸い寄せられる。
その結果、その地方の人、物、お金が欠乏し、地方経済が空亡化していく。
デフレ下では、公共投資による経済拡大より、それ以外の地域の衰退が大きいため、公共投資による景気拡大は望めないのだ。
現在驚くべき早さで、地方が疲弊している。東京や東北で公共投資や、復興によるインフラ整備が盛んに行われている。これが盛んになるほど、地方のそれ以外の地域の崩壊、空洞化、廃墟化が速く大規模に進んでいる。
これがデフレ下の公共投資の実体である。
インフレ下の公共投資がビッグバンであるなら、デフレ下の公共投資は、ブラックホールといえよう。あらゆるものが吸収され、周辺が空洞化というより空亡化していく。
公共投資が景気対策として効果があるのは、インフレ下の時だけであり、デフレ下では効果がなく、それどころか負の付加価値(借金)倍増する。
2千500億投下しても景気対策になると思っているならとんでもない間違いである。
一時的に実質GDPが上昇するが、インフラの完成と共にししぼむことになる。
野放図にこのままの政策を続けると、日本は、東京オリンピック関連のインフラ整備のための公共投資や、東北復興関連の公共投資で潰れるだろう。
しかも東京オリンピックの大規模開発は、東北の余剰も吸収しかねないものになろう。
「阿部首相が東京からその他の地域にアベノミクスの余剰が広がっていく」、といっているが、このデフレ下ではありえない。逆に東京や東北復興地域に地方の余剰が吸収されていく。
公共投資が行われている地域から、余剰が生み出され、その周辺を潤すというのはインフレ下での現象であり、デフレ下では、それ以外の地域の余剰が、新国立競技場のような大規模な公共施設や社会資本を建設する、東京に吸収されていく。
そもそも公共投資されるような社会資本は、採算が取れるものでないため、その建設の段階で景気対策にならなければ、無用の長物になる物が多い。
東京オリンピック関連諸設備は、作り替え需要が多く、新規が少ない。特別に人がたくさん集まる訳ではない。しかも2週間のお祭りであるため、一過性の代物である。巨額の出費の割に見返りが少ないものである。
景気対策にならなければやる必要のないものである。
デフレ下の公共投資は、本当に必要なものに限定しなければ、赤字が増大し、それ以外の地域の衰亡可を招く。
負の乗数
デフレ下でこのような公共投資のブラックホール化が起こるのは、市場全体が、貯蓄より借金が多くなっており、個人の場合、所得から返済する、ローン金利や、借金の返済、国民負担の増大などで、消費額が、生産額より下回っている状態に陥っているからである。
そのため経済は縮小循環を続けているのである。
そのため私達が働いて得た所得から、生産物を買う費用、すなわち消費額が、生産額より少なくなっている。国民負担や、住宅ローンの返済額、借金の金利負担が、所得の中で大きな地位を占めているからである。
所得に対する借金や、国民負担が大きいほど、負の乗数が大きく、縮小循環が激しい。そのため公共投資の逆効果が大きくなる。
負の乗数がどの程度のものであるかを計数的にはっきり示すことはできないが、デフレ構造の場合、所得のうち、借金の返済にどの程度費やすか、あるいは、国民負担率がどの程度であるかによって決まってこよう。
所得に対して借金率や、国民負担率が高いほど、負の乗数が大きくなり、公共投資に対する波及逆効果は大きくなる。
消費税を8%からさらに10%に引き上げるとより国民負担率が高まり、負の乗数がさらに大きくなる。
そうなると、ますます東京の吸収力が高まり、地方経済が大規模に消滅することになろう。
一言主
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
参照:
公共投資の逆襲、2千15年6月15日
オリンピックに消費税引き上げを相殺する力はない。2千13年10月11日
くるなオリンピック、オリンピック招致の破滅的経済損失2千13年8月30日
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