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習近平国家主席の迅速な対応で相場は落ち着きを取り戻したように見えるが・・・〔PHOTO〕gettyimages
老舗シンクタンクが発表した 「中国経済予測レポート」驚きの悲観シナリオ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44150
2015年07月14日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■禁じ手のオンパレード
荒れに荒れた先週(7月6日〜10日)の株式市場だが、終わってみれば世界25主要市場の週間騰落率で最も値を上げたのは、ギリシャと並んで世界市場を混乱に追い込んだ中国株(上海総合指数)だった。その上昇率は前週末比5.18%高と、2位スイス(SMI、2.48%高)、3位ドイツ(DAX、2.33%高)などを大きく引き離したばかりか、23位で3.70%安だった日本株(日経平均株価)とは対照的な動きを見せた。
しかし、この中国株相場の上昇が本物で、先月から続いた下落傾向にピリオドを打ったと考えるのは早計だろう。というのは、中国の公安当局が空売りを取り締まるとの声明を発表したり、政府系金融機関が中央銀行の資金繰り支援を背景に株式の直接購入に乗り出す方針を示したり、ひと昔前ならば世界から批判の的になったであろう禁じ手のオンパレードで株価を下支えしているからだ。
足元の経済をみると、不動産バブルの崩壊、積みあがったシャドウバンクの不良債権、鉄鋼などの過剰在庫のヤマと、深刻な問題が一向に解決しない。それどころか、最近まで年率で2桁の成長が当たり前だったのが、今年度は7%成長の維持すら覚束ない。さらに、10年後を展望すると、年率3.0%と一段と成長が失速することもあり得ると危惧するシンクタンクも出てきた。
■このままでは市場の調整機能がマヒする
中国株高がそれほど長く続くはずがない――。早くから、こんな見方は多かった。なぜならば、中国株は2007年10月に上海総合指数が6124と史上最高値を記録した後、翌年のリーマンショックを挟んで3分の1以下に急落したにもかかわらず、4兆元という巨額の経済対策で株価を人為的に下支えしていたからだ。
この間、地方政府の不動産投資を過熱させて経済と市場のテコ入れを図る挙に出たことで、不動産バブルの崩壊とシャドーバンキングが扱う「理財商品」のデフォルト問題を引き起こした経緯がある。日本の7、8倍という粗鋼の余剰生産能力を抱えた鉄鋼メーカーなど製造業も、不良在庫の整理に困り“ダンピング輸出”に走っていた。
にもかかわらず、中国政府は個人消費の刺激に役立つとの判断から、中国株市場への資金流入を促す政策をとり、上海総合指数は昨年夏から今年6月中旬までに2.5倍に急上昇した。6月12日には5166と2008年1月以来7年5カ月ぶりの高値を付けている。だが、その後は勢いが続かず、同指数は7月8日までの間に3割以上も下げる事態になった。
下げ過程では、中央銀行にあたる中国人民銀行が2カ月ぶりの短期資金供給の実施と、政策金利と預金準備率の同時引き下げを決定したのを手始めに、当局は続々と株価下支え策を打ち出した。中国財政省は年金基金による株式投資を容認する草案を発表し、証券監督当局は信用取引の規制緩和と、証券21社に対する1200億元を投じた投資信託の買い入れを命じ、政府系ファンドは投信の買い上げを発表する、といった具合だ。
さらに上海と深圳の証券取引所が売買手数料の3割引き下げをテコに株式への投資を誘因しようと試みたり、予定していた28社の上場を先送りにして需給関係の改善を試みる決定を下したりした。
なんとか落ち着きを取り戻す端緒になったのは、公安省が9日に打ち出した「悪意ある空売り」の徹底的な取り締まりの表明だ。摘発を恐れた向きが多かったのだろう。翌10日には、先物を買い戻す動きが活発化した。信用取引のために株券や資金の貸借を行う中国証券金融が株式を買い始めたとの見方も広がったことも、株価の回復に寄与したという。これらが呼び水になって、中国株は先週、主要国の株価の中で最大の上昇を記録したのである。
だが、中国の株価下支え策は尋常の策とは言えない。異次元緩和の名の下に、日銀や年金積立金管理運用機構(GPIF)に大規模な株式や投資信託の買い入れを続けさせている日本政府には批判する資格はないが、中国のやり方は明らかに市場の価格形成機能をマヒさせるものと言わざるを得ない。
■悲観シナリオと「反日化」への不安
そこで、紹介しておきたいのが、保守的なことで知られる老舗シンクタンクの日本経済研究センターが6月30日に公表した「アジア経済中期予測」報告書の内容だ。
習近平総書記が掲げた「新常態」への移行を通じて、中国は経済成長のソフトランディングを目指しているとしながらも、「生産年齢人口の減少や地方政府の債務増加など様々な構造問題の改革が進まず」、実質GDP成長率(年率)は、標準シナリオで「2020年で5.2%、25年で4.1%に」、悲観シナリオで「25年に3.0%に」低下しかねないとしているのだ。
同報告書は、悲観リスクについて、「中国が農業、戸籍、労働、土地、社会保険などの構造改革を行わなければ、高成長が続いた国の成長率は急落する傾向が歴史的にある」と中国経済がこれまで考えられないペースの減速に陥る可能性を指摘している。
日本のバブル経済崩壊が国力の転換点になったように、GDPで世界第2位の経済大国に躍り出た中国の世紀も、ついに終わりを告げた公算が大きい。今後数年間は、中国向け輸出がさらに落ち込み、日本経済にとって依存できる外需は米国向け輸出が中心になりだろう。
一方、株価という経済の鏡をいくら磨いて見せても、長年のツケで、中国の実体経済の進退はいよいよ窮まりつつある。もはや、そのことを覆い隠すのは難しい状況だ。こうした時に、乱暴な指導者たちが採る常とう手段は、経済の他に不満のはけ口を作ることだ。
日米や東南アジア諸国が懸念する南沙諸島や尖閣諸島への中国の露骨な領土的野心の顕れや、習近平総書記のライバルとされる政治家たちの汚職問題の追及は、そうしたはけ口作りの色合いが濃い。これまで以上に、我々は隣国との付き合い方に十分に注意を払う必要がありそうだ。
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