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7月12日、ブリュッセルでユーロ圏首脳会議の開始前に言葉を交わす(左から)ドイツのアンゲラ・メルケル首相、フランスのフランソワ・オランド大統領(後ろ向きの人物)、ギリシャのアレクシス・チプラス首相〔AFPBB News〕
ギリシャ救済を巡るユーロ圏の不協和音 思想的な分裂が露呈、埋めなければならなかったこれだけの溝
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44287
2015.7.13 Financial Times JBpress
(2015年7月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャ危機では、ユーロ圏に深刻な政治的断絶があることが露わになった。ドイツとフランスにとっては、争点となっていたのは、通貨同盟の将来の形だ。フランスの社会主義者の大統領、フランソワ・オランド氏は、強い者が弱い者を支援する協同的な同盟、財政の規律と同じくらい投資や経済成長にも目を向ける同盟を想定している。
これに対しドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏は、ユーロ圏のルールを厳しくすることを望んでいる。
基準に達しない国にもっと早く制裁を科すことができるようにすることでギリシャ危機の再来を避けよう、というわけだ。
一方、スペイン、ポルトガル、アイルランドなど、自ら過酷な救済プログラムに耐えたユーロ圏諸国は、ギリシャがそうした痛みを免れることを望んでいない。
東欧では、ユーロ圏で最も貧しい部類に入る加盟国が、ギリシャが自国よりはるかに条件のいい年金制度を賄うのを手助けするとの見通しに腹を立てている。旧共産圏が崩壊した時にはるかに深刻な景気後退に苦しんだ東欧諸国は、ギリシャ政府が文句を言うのをやめて本気で改革に取り組み始めることを望んでいるのだ。その声は小さいかもしれないが、経済面で実績を残しているだけに重みがあった。
以下が、ブリュッセルで週末に行われた緊迫した交渉で折り合いをつけなければならなかった各国の立場だ。
■ドイツ:強硬路線を継続
ドイツはギリシャに厳しい姿勢を取ってきた。それがどれほど厳しいかは、「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)」を避ける唯一の方法だとして新しいギリシャ改革案を列挙したドイツ財務省のペーパーで明らかになった。
そこには行政機構の多くを欧州委員会の監督下に置くことや、ギリシャが民営化のためにルクセンブルクで運用している独立した基金に国有資産500億ユーロを移管することも含まれていた。
メルケル氏はギリシャと取引することを支持しているが、どんなコストを払ってでもこれを実現すべきだとは考えていない。同氏が恐れているのは、グレグジットが欧州連合(EU)のまとまりを乱すこと、世界におけるEUの評判を悪化させること、バルカン半島の安定性を損なうこと、そしてギリシャに貧困や社会不安をもたらしかねないことだった。
メルケル氏はまた、オランド氏との間で新たに復活させた協力関係を維持したいと考えており、EUが分裂した時に指導的な立場にあった初のドイツ人政治家として記憶されるのは避けたいと思っている。
しかしメルケル氏は、改革されていないギリシャをユーロ圏に残すことは通貨同盟全体にダメージをもたらす恐れがあるとの見方で、タカ派のヴォルフガング・ショイブレ財務相と一致している。
ショイブレ氏はグレグジットが最善のやり方かもしれないと考えている。ギリシャをいったんユーロ圏の外に出し、5年かけて経済の近代化を成し遂げた後でまたユーロ圏への参加を認めるという筋書きだ。
メルケル氏は、ショイブレ氏ほど確信が持てなかった。同氏にとっては、地政学的リスクの方が重くのしかかるからだ。
どんな取引になっても、メルケル氏は国内の懐疑的な有権者にこれを売り込まねばならない。キリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)の連立与党で増えているグレグジット賛成派にも売り込まねばならないだろう。それゆえ同氏は、「失われた信頼」と昨日呼んだものを取り戻すために、ギリシャ政府からもっと譲歩を引き出す必要があった。
■フランス:ギリシャのユーロ圏残留に尽力
オランド氏は何カ月も前から、自らをメルケル氏とギリシャのアレクシス・チプラス首相との仲介者と位置づけてきた。ギリシャがユーロ圏にとどまれるように話をまとめようとしたのだ。
ギリシャの国民投票で欧州連合(EU)主導の救済計画が拒否されてからは外交努力をさらに強め、急進左派連合(SYRIZA)率いるギリシャ政府が改革案をまとめてメルケル氏を納得させるのを手伝うべく、オランド氏は指導をしたり技術的な支援を行ったりした。
しかし、ギリシャ政府による最新の対策は「真剣で、信頼できるもの」だと語ったにもかかわらず、オランド氏は欧州全域にあふれる不信の念に直面した。要求されている改革をギリシャ政府は本当に実行できるのか、という不信感だ。
これまで、フランスの主張の効果は時間を買うだけにとどまっており、フランス・ドイツの二国協商におけるイデオロギーの溝が拡大しつつあることを露わにしてしまった。
昨日、社会主義者のオランド大統領がドイツ政府に苛立っていることが明らかになる場面があった。
ドイツが率いるグループの国々は、ギリシャの極左政権が一連の緊急財政政策の法案を議会で成立させるまでは新たな救済プログラムの交渉に応じない方針だったが、オランド氏は「今夜中に合意」するよう促したのだ。
また、ギリシャを一時的にユーロ圏から離脱させるというショイブレ氏の提案についてはこう述べた。
「ユーロ圏からギリシャが一時的に離脱するなんてあり得ない。ギリシャはそのままユーロ圏に残るか、ユーロ圏から離脱してそれきりになるかのどちらかだ。だが、もし離脱すれば欧州は後退することになるだろうし、私はそういう状態を望まない」
■南部ユーロ圏諸国とアイルランド:交渉に前向き
スペインの改革派の政権は、急進的なギリシャ政府が譲歩を勝ち取り、スペイン国内のポピュリスト政党ポデモスが勢力を伸ばすような事態があってはならないと思っていた。だが、ドイツと比較すると、スペインもイタリアもこの週末、ギリシャに対して比較的穏健な姿勢を取った。特にイタリアは打ちひしがれた南欧ギリシャにとって欠かせない盟友になった。
「イタリアはギリシャがユーロから離脱することを望んでおらず、ドイツに対しては『もうたくさんだと言ったら、たくさんだ』と言いたい」。イタリアのマッテオ・レンツィ首相はイタリアの新聞にこう語った。
スペインは、ユーロ圏屈指の高成長を誇る国になって以来、欧州の経済改革の象徴になった。それに応じ、スペインのルイス・デギンドス財務相はしばしば、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)議長としてギリシャに対してかなり強硬な路線を取ってきたオランダのイェルン・デイセルブルム財務相の後継候補として話題に上る。
ユーロ圏危機のピーク時に、アイルランドとギリシャは同じ窮地に立たされた。今、ギリシャがユーロ離脱の瀬戸際に立たされている一方で、かつての仲間は安定した基盤の上に立っている。
ソブリン債務危機の最悪期に両国が共有した経験から、アイルランドはギリシャの苦悩に対して比較的穏健なアプローチを取る。
アイルランドは救済措置を受けていた期間に、185億ユーロの国際通貨基金(IMF)融資の借り換えや債務の償還期間の延長の恩恵を受けた。アイルランドのマイケル・ヌーナン財務相は、ギリシャのための同様な措置を支持する姿勢を明確にしていた。
ヌーナン氏は、自分は「ギリシャに対して強硬なアプローチを取ったことはない。常に、アイルランドはギリシャがユーログループにとどまることを望んでいると言ってきたし、我々は債務再編を交渉の一環と見なしている」と語っていた。
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