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ギリシャ・アテネで、ギリシャ国立銀行の支店に入ろうとする年金受給者〔AFPBB News〕
アルゼンチンから見たギリシャ危機 デフォルト経験者が語る、「事態はギリシャの方が深刻」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44279
2015.7.13 Financial Times JBpress
(2015年7月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
2001年にアルゼンチンが経済崩壊に向かっている時に同国経済相を務めていたドミンゴ・カバロ氏は7月初め、地中海周遊クルーズの途中でギリシャに立ち寄った際、クレジットカードが使えなくて戸惑った。
「こんな状況では彼らは何日も持たない」
当時としては史上最大のソブリン債デフォルト(債務不履行)となった事態の直前に、銀行取り付け騒ぎを阻止するために銀行口座を凍結した「コラリート(預金封鎖)」の責任者として多くのアルゼンチン人に強い嫌悪感をもって記憶されているカバロ氏はこう話す。
ギリシャの債務危機が進む中、アルゼンチン人は既視感を覚えながら事態を見守っている。多くの人は歴史が繰り返すのではないかと不安を感じている。ただし、ギリシャの悪影響の方が、アルゼンチンよりひどいのではないかという。
カバロ氏は、ギリシャのユーロ圏離脱は、ギリシャの債権団が要求した財政緊縮措置の影響よりはるかに深刻な「恐ろしい結果」をもたらすと警告する。
「ギリシャは2002年のアルゼンチンと同じことをすべきだと勧める人たちは、本当に、非常に悪い助言を与えている」。カバロ氏はこう言い、アルゼンチンが回復を遂げたのはコモディティー(商品)価格の急騰のおかげだったと指摘する。
■アルゼンチン大統領などはギリシャ国民の「ノー」を喝采
ギリシャの状況の深刻さに異論を差し挟む人はほとんどいないが、カバロ氏の緊縮策の擁護は、アルゼンチンの他の多くの人、特にクリスティーナ・フェルナンデス大統領の意見と食い違っている。
アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス大統領〔AFPBB News〕
ギリシャが7月5日の国民投票で債権団側の条件を拒否したことを「民主主義と尊厳の完全な勝利」と称えたフェルナンデス氏の言葉に、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領などの地域の他の指導者も同調した。
マドゥロ氏の金融「テロ」に関する発言は、ベネズエラ政府も債務のデフォルトを検討しているのではないかという不安を煽った。
フェルナンデス氏はギリシャの国民投票の後、亡夫のネストル・キルチネル氏が2003年にアルゼンチン大統領に就任した直後に、国連総会で「死人は借金を返済しない」と話したことを振り返った。
「我々アルゼンチン人は、これがどういうことなのか分かっている」。フェルナンデス氏はこうツイートし、「何人とも、自分の死亡証明書に署名するよう求められることがあってはならない」と付け加えた。
■「トロイカ」の緊縮策は不合理
2002年の暫定政権下で経済相を引き継いだロベルト・ラバーニャ氏は、国際通貨基金(IMF)、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)の「トロイカ」が提案したギリシャの緊縮策に対して非常に批判的だ。
アルゼンチンの経済再生の立役者として広く評価されているラバーニャ氏は言う。「IMFは当時と同じレベルの思い違いをしながら行動しており、お決まりの(財政)調整計画を推奨している。彼らは全く何一つ学んでいない」
ラバーニャ氏は、ギリシャの回復には再度の債務再編が不可欠だと主張しつつ、金利が低く、満期が最長100年の金融商品が存在する今日の世界では、アルゼンチンの債務に関して同氏が成し遂げた70%という猛烈なヘアカット(債務減免)より「もっと微妙」なやり方があるかもしれないと指摘する。
アルゼンチンがデフォルトした時にカバロ氏の下で次官を務めていたダニエル・マルクス氏も、ギリシャで緊縮にこだわることは誤りだと同意する。
ギリシャ・アテネの議会前で、緊縮策に反対するバナーの前を歩く男性〔AFPBB News〕
「IMFがなかなか理解できないのは、非常に多くの場合、これが単に財政政策の問題ではないということだ。それよりずっと大きな構図を見なければならない」とマルクス氏は言う。
同氏は、資本流出を逆転させるために、信頼を回復することや経済を安定させることの重要性を強調する。「財政的なツールだけを扱っていると、最初に抱えていた問題より、さらに大きな問題を抱え込む結果になりかねない」
■アルゼンチンとギリシャの大きな違い
アルゼンチンとギリシャはどちらも、不成功に終わり、銀行危機をもたらした債権者側のプログラムに苦しめられたが、両国の状況の原因と複雑さには違いがある。
アルゼンチンは、他国とは切り離されていたが資源豊かな発展途上国で、ドルにペッグ(固定)された独自通貨を持っていた。一方ギリシャは、輸入に依存しているとはいえ比較的豊かな国で、離脱するのが難しい、強い国々が裏付ける厳格な通貨同盟に属している。
2002年の危機のどん底にアルゼンチンの中央銀行の運営を引き継いだ元IMFのエコノミストのマリオ・ブレヘル氏は、アルゼンチンの債務の大部分が民間部門によって保有されていたのに対し、ギリシャの債務は主に公的資金だと指摘する。
そのため、ギリシャの債務再編は心地良くないかもしれないが、アルゼンチンが「ホールドアウト」債権者と遭遇した問題に見舞われる可能性は低い。ホールドアウトは債務再編の条件を拒否したヘッジファンドの集団で、これが同国の国際資本市場へのアクセスを今も阻んでいる拷問のような法的論争につながった。
さらに、ブレヘル氏は、量的緩和プログラムを通じてECBが毎月増刷している紙幣――約500億ドル――は、ギリシャの問題を解決するのに十分な額だと主張する。
「とにかくお金が手に入らなかったアルゼンチンの場合と違って、これは金融問題ではない」とブレヘル氏は言う。「これは政治問題だというのが、私の結論だ」
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