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日本は世界の大国でいられるのか? 元ゴールドマン・サックスのアナリストが見た日本の真の実力インタビュー「書いたのは私です」デービッド・アトキンソン
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44127
2015年07月11日(土)週刊現代 :現代ビジネス
―アトキンソンさんは、アナリストとして'90年代、日本の銀行が抱える不良債権額が20兆円にも上ると指摘して論争を巻き起こしました。その後、文化財を修復する会社の社長に転身。近年は観光を中心に、日本の現状に対する意見を発信し再び注目を集めています。
デービッド・アトキンソン『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』
私が日本経済の分析をはじめたのは32年前ですが、当時から疑問に感じることがありました。海外と比べて日本企業の生産性は必ずしも高いわけではないのに、なぜ世界第2位の経済大国なのか、ということです。
日本では、「高い技術力と勤勉さ」によるというのが一般的ですが、必ずしもそれだけが理由とは言えません。GDPは経済の総額。最近になってわかったのは、一人あたりのGDPは決してよくない日本が2位だったのは、先進国のなかで「人口が多い」から。日本の技術には素晴らしいものがたくさんありますが、それだけでは実力を見誤る危険があります。
―世界の奇跡と言われる高度成長が主に人口のおかげとは、日本人には違和感がある話ですね。
日本人は忘れていますが、戦前から日本は経済大国で、GDPは世界第6位でした。江戸時代末期にはすでに世界5位だったという研究もあるほどです。世界の国々が日本を脅威に感じたのもそのためです。
敗戦で大きな打撃を受けたのは確かですが、戦前からの基盤があった上に終戦後はインフラの復興だけで経済は拡大したし、そこに先進国には異例の人口の急増が加わって、高度経済成長が続いた。むしろ必然と言えるでしょう。
―他に日本人が思っている常識で、おかしいと思う点はありますか。
特に東京五輪が決まって以降、「世界が注目している日本」というフレーズが目に付きますが、それが事実ならなぜ外国人が年間1300万人しか来日していないのでしょう。ベトナム人の訪日が増えたと盛んに報道されていますが、その目的の46%は研修と商談、つまりビジネスです。
中国人が日本で「爆買い」しているという報道もありますが、アメリカに行った中国人は平均66万円使っているのに、日本では23万円だけ。なぜアメリカの3分の1にすぎないのかを冷静に分析しないといけません。
―本書では企業も資産が有効活用できていないと指摘しています。
日本の経営者は、労働者が極めて優秀で真面目なことに甘えて、やるべきことをやっていない。誰も買いたいと思わない商品を一生懸命作らせる一方、多くの人が欲しいと思う商品を作っているのに、海外に輸出していない例もまま見られます。
労働者が意味のない書類ばかり作らされるなど、無駄に時間を食わされている。極端に言えば、上司に言われて穴を一生懸命掘って、終わったら埋めろと言われてまたやっているだけ。これではどんなに真面目に働いても経済効果はゼロ。一人あたりGDPが26位と低迷するのも、無駄が多すぎるからです。給料が増えないのも仕方ありませんし、誰もハッピーになれません。もったいないと思いますし、より賢い働き方があるのでは?
―一方で、日本の強みはどこでしょう。
多様性ではないでしょうか。たとえば芸術で言えば、元々雅楽は古代中国の音楽ですが、本国では既に消えてしまったのに日本では生き延びている。このように日本は古いものを遺しながら、さらに、新しいものを加えている。時代劇と同時に漫画が人気な点もそうですが、これは世界的に見ても大変珍しい。
この多様性を上手に使えば大きな売り物になるはずですが、残念ながら現状はうまくいっていません。日本には珊瑚の海もあり、北海道のような平原もある。実に変化に富んでいるのに、その美しい姿をまだ活かしきれていない。統一感のない建物が目に入るため、ぶち壊しです。歴史的文化財など魅力的なコンテンツがあるのに、宝の持ち腐れに終わっています。
また、漫画やアニメは海外で人気があります。しかしそれは政府が「クールジャパン」と言い出す前からで、その意味で新鮮味には欠けますし、一定の人々がそれ目当てに来日するのは確かでも、何千万人と観光客が増えるわけではない。期待するような経済効果が得られるかは疑問ですね。
―元エコノミストの立場からアベノミクスに対する評価についてもお聞きできますか。
アベノミクスの恩恵が地方まで届かない、という批判は的外れです。500兆円の経済規模を考えればわずか2年程度で国中を豊かにしろというほうが無理な話。それを期待するほうが間違いでしょう。ただし、諸手を挙げて評価するかと言えばそれもNO。いまの段階でも成長戦略を示せていないのは、いかがなものでしょうか。
―株価の上昇傾向はこれからも続きますか。
大きく崩れたものが元に戻っているのであり、アメリカ株が史上最高値を更新し続けているのとは違うということは認識するべきでしょうね。いまの株価も、バブルのピークにつけた高値の半値程度に過ぎません。最近の上昇は、ドルで換算したらそれほどではない。むしろそれが世界的な評価ではないでしょうか。
現役日本人はここから激減していきます。イメージではなく、論理的にものごとを分析することが、いまの日本には大切。せっかくもっている強みを活かすためにも、そこから真剣に取り組むことを期待します。
(取材・文/平原悟)
『週刊現代』2015年7月11日号より
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