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老人も中年も若者もみんな苦しい〔PHOTO〕gettyimages
【現地ルポ】他人事ではない! 「借金まみれ」ギリシャを見て、10年後の日本を思う
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44136
2015年07月12日(日) 週刊現代 :現代ビジネス
■まともな治療も受けられない
「ギリシャでは財政問題が明るみに出て以降、風景が一変しました。
ほんの一例を挙げれば、失業者や貧困者が街には溢れ出す。自宅のローンが支払えない人たちや、長い失業で家賃が払えない人たちが家財道具一式を車に詰め込み、車上生活する姿も散見されるようになりました。
国が借金返済の財源を確保するために、これでもかというほど財政支出をカットするので、さまざまな公共サービスの運営が滞り、国民生活に混乱も生じています。
たとえば、病院です。公立病院が医薬品や衛生用品などを購入する費用を政府が捻出することができないため、公立病院にそれらが納品されない状況になっている。そのため緊急の手術は受けつけるけれども、急を要さない手術などは無期延期状態。早期に治療できず、以前なら助かる病気も助からないという悲劇的な事態に陥っています。
公立病院は以前は無料だったのに、いまは少額ですが支払いが必要になりました。だが、公立病院に来る人の中にはその少額の現金さえ支払えない人がいる」
ギリシャ現地の状況を克明に語ってくれるのは、アテネ在住ジャーナリストの有馬めぐむ氏である。
ギリシャの莫大な財政赤字問題が発覚したのは、いまから6年前のこと。それ以来、ギリシャは「借金まみれ」から脱却するために財政緊縮策を続けてきたが、いつまで経っても借金は返せず、その度に追加で財政支出のカット、カットを続けてきた。その結果起きているのは、冒頭の発言にあるような目を覆うばかりの国民の「生活崩壊」である。
これを他人事と見ていられないのは、実は日本はギリシャより最悪の財政問題を抱えているからにほかならない。
日本ではいまだ本格的な財政支出カットを行わず、問題を先送りしているから「ギリシャ化」していないだけ。いよいよ待ったなしの状況に追い込まれて、歳出カットが始まれば、それこそギリシャの比ではないほどの惨事になりかねない。
そうした意味で、かの国の現実が、10年後の日本の姿そのものとなっていても、まったく不思議ではない。
「ギリシャの財政問題が発覚して以降、まず目立って急増したのは失業、ホームレス化、自殺でした。
信用不安から外資系企業の撤退が相次ぎ、さらに、支払いが滞る可能性があるためギリシャ企業向けの輸出に対する保険の停止といった事態が発生。結果、打撃を受けた輸入関連業者の中には廃業を余儀なくされるところや給与支払いができないところが出てきて、アテネの目抜き通りには『貸店舗』の張り紙をした空き店舗が一気に目につくようになりました」(前出・有馬氏、以下同)
■中間層から一気にホームレス化
国家の借金問題が一向に解決されない中、このような国民の生活不況ぶりは悪化するばかりで、よりひどい状況へと追い込まれていく。最近では次のような惨状にまで堕ちている。
「定職があっても月収が300~500ユーロほど(約4万~7万円)なので、家賃と光熱費を支払ったらなにも残らないどころか、足りない。1日に卵1個の食事しかとれない若者もいます。
以前はメトロなどで物乞いをするのは不法移民などでしたが、最近ではギリシャ人が病気の子供を救いたいなどと涙ながらに訴えて、車両を渡り歩いて物乞いをしている。
公園などで寝泊まりするホームレスはあまり見かけなかったが、いまは寝袋で寝ている人をよく見ます。経営者だったけれど仕事がなくなって倒産の憂き目にあった人、大手企業に勤めていたけれどリストラにあった人なども少なくなく、援助してくれる親戚などがいない場合、突然中間層から貧困層、そしてホームレス生活に堕ちていくからおそろしい」
財政危機が発覚し、金融支援と引き換えに緊縮政策が開始されて以降、貧困率が特に上昇しているのは18~24歳の若年層。高学歴でも仕事が得られず、仕事にありつけても700ユーロ以上は稼ぐことが難しいため、彼らは「700ジェネレーション」と呼ばれている。
「小さい子供を持つ家庭の貧困もすさまじいものです。ある財団が貧困層の多い公立小学校の調査をしたところ、17%の家庭が誰一人収入のある人がいない、25%の家庭が毎日の食事に困っている、60%が明日以降の生活に不安があるという切迫した状況であることがわかりました。公立の小学校では空腹の子供が急増し、体調不良や集中力低下の児童が多く報告されています。
しかも、以前は多くの公立の保育所には給食センターがあったのですが、資金難でこれを閉鎖して安価なランチボックスのサービスを利用するようになった。それも最近は国からの運営費が来ないため、十分オーダーできない保育所が出てきているので、状況は悪くなるばかりです」
おのずと若者の中には、職を求めて「国外逃亡」する者も後を絶たない。ギリシャ国内で職がある若者もまだ余裕がある内にと、幼な子を連れて国外移住を目指す家庭が急増している。
「こうして若者と子供が去り、ギリシャは老人だらけの国に成り果てる可能性が出てきました。それを避けるためにも教育予算だけは削減するべきではないという議論もあるのですが、聖域なき歳出カットをしている政府はどうにも対処できずに手をこまねいたまま。その間にも、若者たちが国外に逃げていっているというのが現実です」
■生活苦が高齢者を直撃
そうしてギリシャ国内に残された高齢者の生活も、かなり悲惨なものへと転落していく。
「年金カットが凄まじい勢いで実行されているからです。先日、銀行の事実上の預金封鎖が行われた際にも、初日の朝からギリシャナショナル銀行の開かない窓口に行列を作っていたのは老人たちでした。月末は年金の支払日で、毎月のわずかな年金でギリギリの生活をしている老人たちには死活問題だったわけです。
'12年4月には年金カットの生活苦にあえいでいた77歳の老人が国会議事堂前のシンタグマ広場で抗議自殺をしています。これがきっかけとなり、年金カットに苦しむ人たちが国会議事堂前に殺到し、数日間にわたる抗議集会をしたこともあります。
そのためか、政府は今回、年金の支払いがないとまったく手持ちのおカネがなく困窮する人たちについては指定した銀行を開いて年金の一部を支払うことを決めました。しかし、その額はたったの月額120ユーロ(約1万6000円)です」
これ以上の歳出カットで年金を削られたら、文字通り生死に直結する。EUなどが求める緊縮案をギリシャ国民が簡単に受け入れられないのには、こうした事情があるわけだ。
「ギリシャ国民は金融支援を受けているくせに、痛みを受け入れようとしないなどと外国では批判されますが、こうした意見はギリシャの実情をわかっていない。
というのも、支援されたおカネは困窮するギリシャ国民に回っているわけではなくて、ギリシャ国債の債権者である外国の銀行に流れていっているだけだからです。支援金は外国の銀行の救済に使われていると言っても、過言ではありません。
一方で、当のギリシャ人は金融支援と引き換えに数年におよぶ緊縮策で歳出カットと増税の二重苦を受けている。政府が作ってしまった借金のツケを回されるのは、結局は国民。特に中間層以下の、弱い立場の国民にシワ寄せがいくわけです」
これと同じようなことが日本で起きると想像すれば、目も当てられない。
ギリシャよりも少子高齢化が進んでいる日本では、歳出カットの煽りに直撃されるのが大量の高齢者であり、年金生活者であるということになる。
しかも、日本が1000兆円超という天文学的な額の借金を背負っていることを考えれば、歳出カットや緊縮策の規模はギリシャよりも過激かつ執拗なものとなるだろう。
「ギリシャでは公務員を容赦なくリストラしたので、いまや郵便局では遅配が当たり前。以前は窓口に5人いたのが2人になって仕事が回らないから、窓口は長蛇の列です。
こうした事例はいくらでもあって、たとえば役所ではビザの更新なども停滞している。2年のビザがおりても、すでにその時点でビザの期限が1年半くらい過ぎているという話も聞きます」
これが借金まみれの国の末路であり、日本がいつか通る道になるのかもしれない。見たくもない現実だろうが、ギリシャのいまを直視することで心構えをしておきたい。
「週刊現代」2015年7月17日号より
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