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[真相深層]農家保護へ政官が圧力 全農、コメ3年ぶり値上げ 買い手反発で苦肉の小幅
全国農業協同組合連合会(全農)は秋に収穫する2015年産米の卸向け販売価格を14年産に比べ引き上げる。値上げは3年ぶりだ。コメの需給が緩んでいる中での値上げには、米価回復を求める生産者や自民党の圧力が働いた。消費者のコメ離れを懸念する需要家の声もあり、全農は上げ幅を小幅に抑えた。
「コメ余りの解消が見通せず、卸は買い付けに慎重になっている」。主要コメ卸でつくる全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)の木村良理事長は話す。14年産米の在庫がだぶつく中、卸は15年産の契約を進めるべきか頭を悩ませている。
全農は6月16日までに卸会社に15年産米の基準価格を提示した。正式な定価は収穫後に調整して決めるが、主要銘柄で前年産の定価より5〜10%程度引き上げた。代表銘柄の新潟産コシヒカリは60キロ1万5800円で、前年産と比べ800円(5.3%)高い。
コメは年間流通量約600万トンの5割を全農が扱う。全農は秋の収穫時期に仕入れの手付金に当たる「概算金」を生産者に払ってコメを集める。卸向けの販売価格から流通経費を差し引いた分が概算金の原資になる。
平均価格基準に
14年産は在庫増加などを受け、卸向け価格や概算金が前年比2割前後下がり過去最低水準になった。概算金は全農を通さない取引の価格にも影響する。コメ生産者から不満の声が高まり、概算金の引き上げが政治的な問題として浮上した。
コメ価格の引き上げは政治主導で展開した。自民党が昨秋以降開いた会合では「全農が赤字販売を恐れて、概算金を必要以上に低く設定した」との批判が噴出した。農林水産省は昨年12月に「米の安定取引研究会」を立ち上げ議論を進めた。
「これはほぼ最終的な報告書に近い」。3月19日、自民党で開かれた会合で同省の幹部が配布した研究会の骨子について説明すると、全農の米穀担当幹部の表情が一瞬にして変わった。
骨子では概算金や卸向け価格について「過去の平均値を基本に設定するのが望ましい」と指摘していた。平均値を当てはめると、15年産は14年産と比べ2割近く高くなる。15年産米の価格を大幅に引き上げることを意味し、全農にとって値上げ圧力となった。
パスタに流れる
値上げが既定路線となったことに対し、コメの買い手からは反発が広がった。「大幅な値上げをすれば弁当はコメの使用を減らして、パスタの量が増えますよ」。弁当など中食業者でつくる国産米使用推進団体協議会の福田耕作会長は5月、全農の担当者との面会でけん制した。
農水省の研究会の需要家のメンバーは「全農以外の新しいルートからコメを調達せざるを得なくなる」と懸念を示した。コメ卸からも、無理な値上げは消費を冷やすとの声が出た。
実際に全農が12年産を値上げした時は、中食や外食企業がコメの使用量を減らした。需要家や卸が全農を通さず、生産者との直接取引を模索するきっかけにもなった。農水省の研究会の示す手法で卸向け価格を決めるのは、流通実態からみて無理があった。
全農は5月末、上げ幅を抑えるため、定価ではなく実売価格の過去の平均値を使い、15年産米の卸向け価格を設定することにした。国産米使用推進団体協議会の福田会長は「上げ幅は予想より小さかった」と指摘する。
一方で、全農は生産者の手取り拡大を目指す。収穫前の卸会社との契約で、前年の1.5倍となる140万トンを販売する計画だ。売り先を早めに確保し、流通経費を削減することで、概算金の上げ幅を販売価格以上にする狙いだ。
農水省は主食用米の需給引き締めのため、飼料用米への転作を推進している。全農もこれに対応し、前年の生産量の3倍強の60万トンの飼料用米を買い取る計画だ。今後、主食用米の需給が締まる可能性もある。
コメの価格が市場原理で決まらないのは、需給を反映した指標となる現物市場がなく、政治が介入するからだ。全米販は7月1日に地域農協や生産者も参加する新たな取引市場を開設し、価格の発信を狙う。全農も市場の活用に前向きだ。誰もが納得できる価格形成の場が必要で、それができなければコメ離れが加速する可能性がある。
(田上一平)
[日経新聞7月10日朝刊P.2]
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