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GPIFの昨年度末の運用比率
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52717145.html
2015年07月11日 在野のアナリスト
ギリシャが再建策を提出し、EU側も肯定的に評価している、とされます。ギリシャ議会も承認しており、後はEUの承認待ちですが、問題は支援したからといって再建できるかどうか分からない点です。これでギリシャから多くの国民が脱出し、経済規模が縮んでしまえば例えプライマリーバランスが改善しても、返済計画が滞ることになります。債権カットをどの程度EU側が認めるのか? ただでなくともこれまでの緊縮策で、規模が小さくなった経済で、今の借金を返すことはほとんど不可能でしょう。債権カットの問題となったとき、EU側も政治的な決断を必要とすることになります。明日にそれが決断できるか、その辺りがカギとなってくるのでしょう。
中国株も落ち着きをとりもどしたかに見えますが、今回は一旦の小康であって、問題は何も解決されずに先送りされただけ。シカゴ日経平均は2万円台を回復していますが、日本はギリシャ不安で株価が下げたわけではないので、週明けも中国株の動向に注視する展開がつづくでしょう。
そんな官製相場の日本市場で存在感を増す年金積立金管理運用独立法人(GPIF)が、3月末時点の運用比率を発表しました。14年度末の国内債券39.4%(53.4%)、国内株券22.0%(15.9%)、外国債券12.6%(10.7%)、外国株券20.9%(15.0%)。カッコ内は13年度末の数字なので、国内債券を大きく減らす一方で、国内、海外の株を大きく買ったことがうかがます。運用益は15.3兆円規模にふくらみ、これを成果と捉える向きもありますが、見方を変えるととても危険です。
外国株を大きく増やす一方、外国債券は微増の域です。これは外国債券を買うと、金利差が縮まって円安に誘導できない。またこれだけ外国に資金を移しているのですから、GPIFだけで円売り需要がかなりあった、ということになります。つまりGPIFは外国債券を買えず、外国株だけを買う、という構図には強烈な円安誘導をはかっていた、という疑いすら生じてしまいます。
甘利経再担当相などは「意図的に円安に誘導したことはない」と述べますが、GPIFの運用だけみても円安に誘導していたことは明らかです。安倍政権で運用比率を35%、25%、15%、25%に変える、と決めたのですから、まさに円安誘導をはかったのです。そして恐らくこの水準はさらに目標に近づいていて、夏場以後のGPIFは逆張り運用しかできなくなった、ということもわかります。
そしてこれは円安要因が一つ消えた、という為替市場の動きも読みとれるのです。目標まで残りの運用比率で考えると、外国債券は2.4%、外国株券は4.1%、つまりこれだけをみても、今までと同じ円安要因が生じ難い、ということもうかがえる。米利上げなども想定されますが、需給要因の一つが剥落した、という事実が円の下値を抑える要因ともなってくるのでしょう。
リーマンショックと同じ規模の株価の調整がおきると、GPIFだけで30兆円の損をだすといった試算もありますが、中国で400兆円が吹き飛んだ、という報道も対岸の火事ではありません。個人の損なら自己責任で済みますが、年金の損はさらに税金投入を促そうとする政治的圧力にもつながりかねません。2万円割れとなった日経平均、これが今以上の円安が見込めなくなり、業績の重しともなってくれば、さらに調整してもおかしくない。まさに悪循環に陥る懸念すら出てくるのです。GPIFがクジラから撤退した、この事実を短期で運用している主体がどう捉えるか? 木曜日には1日で700円以上の急変動をおこしましたが、下支え要因が消えつつある日本、ギリシャの年金カットも、明日は我が身と思っておいた方がよいのかもしれませんね。
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