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7月10日、中国株の下落を受けた日経平均の2万円割れは、一部で予想されていた米利上げ後の「9月危機」説の「予告編」だった可能性がある。都内の株価ボードに映った人々。10日撮影(2015年 ロイター/Thomas Peter)
コラム:日中株価の連動安、「9月危機」の予告編か
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PK06V20150710
2015年 07月 10日 15:17 JST
田巻 一彦
[東京 10日 ロイター] - 中国株の下落を受けた日経平均.N225の2万円割れは、一部で予想されていた米利上げ後の「9月危機」説の「予告編」だった可能性がある。
米利上げで新興国から米国へマネーが還流し、中国株式市場が動揺した場合、日本株にマネーが流入するのではなく、連動安になる可能性を意識させる動きだった。この背景には、緩和マネーをアジア株で運用してきた欧米系のヘッジファンドの動きがあるとみられる。
8日に中国株が大幅に下げた際、東京市場でも日経平均が前日比638円95銭安と予想外の下落幅となった。市場にはショックが走ったが、複数の市場筋によると、米系ファンドを中心にした欧米系ファンドが主体で、先物売りを起点に大規模な売りを出していたという。
市場筋の1人によると、中国株式市場で売買停止の銘柄が拡大し、欧米勢の中国株に対する見方が変化。「売りたい時に売れない株はリスクが大き過ぎる」とみて、自由に処分売りできない代替として、日本株が売りの対象になったという。
その市場筋は「欧米投資家がアジア株の比重を落とそうとする際、中国株と同時に日本株を売ることが、今回の下落局面ではっきりした」と述べる。
もともと、市場の一部では「9月危機」説がささやかれていた。米連邦準備理事会(FRB)が9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決断した場合、新興市場からマネーが流出し、株や通貨が下落。中でも中国株が大幅に下落して、それがきっかけとなって、リスクオフ心理が台頭するというシナリオだ。
ただ、その場合でも、コーポレートガバナンスを強化し、株主資本利益率(ROE)が上昇傾向を示し始めた日本株は、米株とともにマネーの受け皿となり、米株ほどではないにしても、新興国株売り/日本株買いの取引活発化に伴って、株価は堅調に推移するとの予測が少なくなかった。
だが、今回の欧米ヘッジファンドの取引をみていると、中国株を含めたアジア株の比率を圧縮すると決めた場合、利益率の高い日本株も同時に売って、収益を確保しながら新たな投資先を物色するという「コース」が、再現される可能性が高いと考える。
8日の日経平均の急落局面は、あたかも映画館のシートに腰を下ろし、9月に展開される「世界的な株価下落」の「予告編」を見ていたのと、同じようなことではないかと感じる。
一方、このシナリオの大前提である9月の米利上げはあるのかどうか。米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は8日、海外情勢に関し、ギリシャ問題が米経済に波及的な影響を及ぼすリスクは小さいとの認識を表明した。
中国株急落への直接的な言及はなかったが、中国政府要人との一段の会談で得た心証では、成長維持に向けた政策対応への意思があることは確認できたと述べている。
10日のイエレンFRB議長の講演で、何らかのヒントが出ることも予想されるが、中国株が戻していることもあり、9月利上げを断念しそうだとの明確な兆候は見えない。
国際通貨基金(IMF)が9日に発表した世界経済見通しでは、2015年の世界経済の成長見通しを前回の3.5%から3.3%に下げた。中国の15年は6.8%に据え置かれたが、世界経済が短期的に減速しつつある中で、FRBが利上げに踏み切った場合、新興国からのマネー流出の影響がショックに変わるリスクを無視してはいけないだろう。
ただ、日本としてやっかいなのは、中国発の株安が再発しても、主要7カ国(G7)の枠外にいる中国の対応を見守る以外に、基本的な政策対応がない点だ。このことも今回の「予告編」をみて、わかったことの1つではないか。
とりあえず、13日に発表される6月の中国貿易統計をみて、輸入の減少率が緩和されているのかどうか、チェックする必要があるだろう。
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