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ギリシャ問題よりもっと怖い! 「中国株バブルの崩壊」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44093
2015年07月09日(木) 安達 誠司 現代ビジネス
■今回の中国の株価暴落は「異常事態」
今週日曜日に実施されたギリシャの国民投票では、大方の予想に反して、EUの提示した緊縮策に反対する票が全体の6割超となった。これをきっかけに、週初から世界のマーケットは大きく荒れている。
識者の話題は、「ギリシャがユーロから離脱するか否か」という点に集中している感があるが、筆者は、現時点では、ギリシャのユーロ離脱がユーロ崩壊へと波及していく可能性は極めて低く、ギリシャとEU諸国がどこかで妥協するのではないかと考える。
そのため、ギリシャ問題は、世界のマーケットにとって「ノイズ」に過ぎず、むしろ、中国株の下落が止まらなくなってきた点の方が、よほど「怖い」のではないかと考えている。
この1ヵ月(7月8日の午前中まで)の中国株(上海総合指数)のパフォーマンスは28.8%のマイナスである。当然だが、主要国の株式市場の中でも、過去1ヵ月の下落率は突出している。
これを「中国株バブルの崩壊」といってしまうのは簡単だが、株価のバブルは、過大評価された「成長期待」がもたらすというのがこれまでのパターンであったことを考えると、今回の中国の株価暴落は「異常事態」といえる。
例えば、80年代後半の日本株バブルは、「日本が米国を抜いて世界ナンバーワンの経済大国になり、その首都である東京が新しい国際センターの座につく」という期待がもたらしたものであった。
また、2000年の米国のITバブルも、「IT革命によって、米国企業の生産性は飛躍的に上昇し、米国経済は新たな成長ステージに入る」という期待がもたらしたものであった。
さらにいえば、リーマンショックで崩壊した米国の住宅バブルも、「アメリカが、(移民などの)低所得者層も自分の家が持てるような新しい福祉大国になる」という期待がもたらしたものであった。
この点で、今回の中国株は、これまでのバブル崩壊とは様相が異なる。確かに、「中国はやがて米国を追い抜いて世界第1位の経済大国になる」といった話はあったが、この期待はすでに2008年から2009年にかけての株価暴落によって剥落したはずである。
そのため、筆者にとっては、暴落以前に、中国株の暴騰自体が説明不可能で、「不可解」な現象であった(これについては、5月28日付けの本コラム『「金融緩和の幻想」の中で進行する不可解な中国株の上昇』で言及した)。
■典型的な「バブル崩壊」パターンに入った中国株
今回の暴落前の中国株の暴騰には、信用取引の「買い」が大きく関わっているといわれている。
信用取引とは、証券会社に保証金を積み立てれば、証券会社(もしくは証券金融会社)から融資を受けられ、より多くの株式を購入できる仕組みである。
将来、株価が上がることがわかっていれば、前もって価格が安い時に株式を購入して、上昇したところでそれを売却して利益を得ることができる。しかも、いくばくかの保証金を担保に多額の資金を借りて株式を購入できるので、手持ちの資金を大きく超えた売買でより大きな利益を得ることができるのだ。
どういうことがきっかけになったのかはよくわからないが、例えば、海外投資家(いまは香港経由で中国株を売買できるようになっている)の買い(欧米の投資銀行の多くが中国株に対して積極的な買い推奨をしていた)が中国の個人投資家の買い意欲に火をつけ、これを信用取引が加速させたということだろう。
すなわち、後からみれば、ファンダメンタルズ(基本的な経済環境)に基づく株価上昇ではなく、単なる「需給関係」で株価が上昇したに過ぎなかったのである(そのため、筆者は、前述のコラムで、マクロ経済環境をみると、中国株が上がる理由はないという点に言及した)。
とにかく、中国株は典型的な「バブル崩壊」パターンに入ってしまったようだ。本稿を執筆している8日現在、中国本土の証券取引所に上場されている銘柄の43%にあたる1249銘柄が売買停止となっている模様だ。これは中国株の時価総額全体の33%以上であるらしい(8日10時39分のブルームバークの報道による)。
ところで、中国経済は今年に入ってから悪化の一途をたどっている。5月の輸入総額は前年比-17.6%で、5ヵ月連続で2桁台の減少となっている。鉄道の貨物輸送量も5月は前年比-11.5%(昨年1月以降、17ヵ月連続の減少)、電力消費量も前年比+1.8%と伸び率はプラスながらも低い数字となっている。
特に、貿易相手国の側から把握可能でごまかしがきかない貿易統計(輸入金額)の悪化は、中国経済の実状を如実に物語っている。
さらに深刻なのは、信用収縮である。5月の社会融資総量は前年比-12.9%で、信用収縮も一段と強まっている。
中国政府の統制が効いている銀行融資の方は、残高が前年比+14.3%と安定しているが、社会融資総量全体が大きく減少しているということは、中国の「シャドーバンキング」のシステムが崩壊の危機に瀕していることを意味している。金融当局は金融緩和を強化しているが、加速度的な信用収縮に緩和が追いつかない状況である。
また、国際収支統計をみると、従来とは異なる大きな変化がみてとれる。それは、昨年4-6月期以降、資本収支が赤字に転じ、その赤字幅が拡大している点である。
従来、中国の国際収支は、輸出増による経常収支黒字に加え、資本収支も黒字であった。経常収支黒字国の多くは、資本収支赤字国になっており、それで国際収支がバランスしているが、中国の場合、経常収支と資本収支がともに黒字であった。そして、これをバランスさせていたのが、外貨準備の増加(政府による海外投資増)であった。
だが、最近は、資本収支が赤字に転じ、外貨準備が減少に転じている(外貨準備は3月時点で、ピーク比7%弱の減少となっている)。
資本収支の内訳をみると、「その他」の部分の赤字が急増しており、中国の富裕層(共産党幹部)が、資金を海外へ逃避させ始めた可能性が高い(もしくは、海外の不動産等を購入しているのかもしれない)。
以上を総合すると、暴落前の上昇局面で信用取引を拡大させていたのは、一般庶民の可能性が高い。
となると、マクロ経済的には、今後、中国の消費が急激に減速していく懸念が出てくる。そして、これが、現在進行中の中国経済の構造調整(高度成長から安定成長への)を加速させる可能性がある。
現在、中国の実質GDP成長率は前年比で7%程度である。日本等の先例を勘案すると、安定成長下での実質成長率は4〜5%程度と想定されるが、7%の成長率は、安定成長への移行期としては、ソフトランディングといってよい状態であった。しかし今回の株価暴落は、このソフトランディングをハードランディングへ変えてしまう懸念もある。
この中国株暴落の世界経済への影響だが、実体経済的には、ソフトランディングの状況でも、すでに中国を中心とする製造業のサプライチェーンを展開する東南アジア諸国の輸出は減速しつつある。中国経済のハードランディングが実現すれば、東南アジア諸国の景気も悪化していくだろう。
中国がこの苦境を乗り切るためには、大胆な金融緩和で、信用収縮に歯止めをかけるしかないが、この場合の金融緩和は、利下げや預金準備率引き下げではなく、量的緩和になるかもしれない。
そうなると、人民元レートが大きく下落する事態が想定される(その場合には、中国は米国と為替レートの低め誘導についての協議を行う可能性がある)。さらに、そのような状況では、マーケットは、いわゆる「リスクオフ」モードに入っているので、円高が加速する懸念もある。
■今後、注目すべきは米国株とFRBの動き
このように、中国株の暴落は、世界のマーケットに、単なる調整では済まされない大変動をもたらす可能性がある。
今後、注意すべき点は、この中国株の暴落が、米国株の下落に波及するか否かである。もし、米国株の下落へ波及すれば、FRBの利上げは先送りされる可能性がある。そればかりか、場合によっては、マネタリーベースが再拡大する可能性もあると考える。
一方、米国株が中国株暴落に影響を受けない場合、FRBは少なくとも年内に1回は利上げを実施するだろう。この場合、「流動性収縮」懸念の台頭によって、新興国の株価は下落幅を拡大させるリスクが出てくる。そして、新興国の株安は、新興国経済のさらなる成長鈍化へとつながり、それが輸出鈍化という形で日本経済にも波及する可能性がでてくる。
悲観シナリオを考え始めるとキリがないが、以上のような意味からも、中国株の暴落はギリシャ問題よりも怖いのである。
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