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新幹線焼身自殺テロ 年金を35年間払っても生活保護以下〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150708-00000001-sasahi-soci
週刊朝日 2015年7月17日号より抜粋
6月30日午前11時半頃、男は神奈川県小田原市付近を走行中の東海道新幹線「のぞみ225号」の先頭車両でガソリンをかぶり、焼身自殺を遂げた。一種の“自殺テロ”といえる行為で、炎は天井が焼け落ちるほどだった。逃げ遅れた女性1人が死亡、28人が重軽傷を負う大惨事となった。
「男は黒焦げで、指紋と運転免許証で身元が判明した」(神奈川県警関係者)
男の名は東京都杉並区西荻北の無職、林崎春生(はるお)容疑者(71)。犯行前には周囲に、繰り返し年金の受給額の少なさと保険料や税金の高さへの憤りをぶつけていた。林崎容疑者とは、かつて飲食店を経営していたときから40年来の付き合いがある男性(73)は言う。
「今年の春ごろに空き缶回収の仕事を辞めて、6月から年金だけの生活になると話していました。『年金が少ない』とよく言っていて、滞納があったのか、国民健康保険や住民税で6万円も払わないといけないと怒っていました」
自殺をほのめかすような発言もしていた。
「『区役所に縄を持って行って首を吊ってやる』という話もしていた。実際、区役所に行って自殺の話もしたようです。すると、職員から『本当にそんな覚悟があるんですか』と言われ、ハヤシさん(林崎容疑者の愛称)は『お前も一緒に死んでくれるか』と言い返したと話していました」(同)
杉並区の生活保護基準は14万4430円だ。しかも、生活保護の場合は国民健康保険や住民税などの負担が減免される。つまり、林崎容疑者は35年間も真面目に年金を納めたにもかかわらず、生活保護水準以下の12万円の支給しか受けられない「下流老人」だった。
アパートの大家によると、1年ほど前に「生活が苦しいから家賃を下げてほしい」と言われ、千円下げたという。ただ、支払いは2カ月分のまとめ払いだったが、「遅れたことはなかった」と話す。
6月12日には、区議会議員に電話で生活相談をしていた。応対した議員は、
「『年金が少なくて生活が大変だ』と言っていました。生活保護の申請ができるか、今度会って話をしましょうと言いました。後日に日程調整をしようと携帯電話に連絡を入れたのですが、そのときは留守だったんです。折り返しの連絡を待っていたのですが、こんなことになるなんて……」
区議会議員によると、林崎容疑者は数年前にも借金の返済について相談をしていたという。
6月中旬ごろには、林崎容疑者のおかしな言動も確認されている。近所のスーパーの店員が証言する。
「店ではいつも練乳入りのかき氷アイス2個とタバコを買っていました。酒を一緒に買うときは発泡酒やカップ酒が多かったですね。それが事件の2、3週間前に来たときは『これ(酒)がないと眠れないんだよ』と、独り言みたいに小さな声でつぶやいていました」
林崎容疑者の姉(75)を直撃すると、生活苦の悩みを打ち明けられていた。
「6月中旬に電話がありました。年金は月18万円ぐらいもらえると思っていたら、12万円だった。年金のことでうつになっていたと思う。『国会の前で自殺でもしようか』とも言っていました。最後に話をしたのは事件の1週間前。『アルバイトがまだ見つからなくて』と。お金を貸してほしいと言ってくれれば、貸してあげたのに……」
貧困に苦しむ高齢者の実態を記した『下流老人』の著者で、生活困窮支援のNPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典さんは言う。
「彼は典型的な下流老人です。現役時代の収入が多くなく、貯蓄も底をついた。生活の助けを求めることのできる家族や友人関係もない。こういった人たちが、いざ年金だけで生活する年齢になると、突然貧困層に落ちる。これはまれなケースではなく、私の試算では、高齢者の9割が下流老人になる可能性があります」
林崎容疑者の生い立ちは戦後日本人の典型だけに、他人事ではない。
(本誌・上田耕司、西岡千史)
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