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グレグジットと債務減免のススメ 欧州はギリシャの投票結果を歓迎すべきだ(Financial Times)
http://www.asyura2.com/15/hasan98/msg/560.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 7 月 08 日 00:17:05: igsppGRN/E9PQ
 

7月5日夜、アテネの国会議事堂前のシンタグマ広場で、国民投票の出口調査で反対票が60%を超えたとのニュースを聞いて喜ぶ反緊縮派の人々〔AFPBB News〕


グレグジットと債務減免のススメ 欧州はギリシャの投票結果を歓迎すべきだ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44250
2015.7.8 Financial Times


(2015年7月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


 ギリシャの「ノー」の投票結果はアテネのシンタグマ広場で歓喜をもって迎えられた。噴水は赤くライトアップされ、旗が振られ、群衆は愛国的な歌を歌った。ギリシャのアレクシス・チプラス首相は、これは国家の威信に関する投票だと述べ、そのメッセージは国民の胸に響いた。


 フリージャーナリストのある若い女性は筆者にこう打ち明けた。


 「私は実はイエスに投票しました。でも、心のどこかでギリシャがノーと言ったことを喜んでいます。ギリシャは小さい国だけれど、大きな歴史がある。これは私たちの尊厳の問題なんです」


 だが、結果を祝う様子を見ていて、筆者は悪い予感を覚えずにはいられなかった。債権者との新たな合意がすぐにまとまらなければ、ギリシャの銀行は数日内に破綻し、この国は全く別のレベルの経済的困窮を知ることになる。威信と尊厳は、仕事と貯蓄とともに急速に消えてなくなるだろう。


■債権者が強硬路線を取る理由


 チプラス氏はギリシャの同胞に、欧州からより良い合意を引き出せると語った。だが、それを本当に信じているのだとすれば、欧州連合(EU)の政治を大きく読み誤っている。実際には、ギリシャの債権者は非常に強硬な路線を取るだろう。


 債権者はギリシャに怒り、うんざりしている。それ以上に重要なことに、多くの人が、欧州単一通貨の長期的な存続は、各国が共通のルールに従って暮らし、予算を均衡させ、債務を返済しなければならないということをはっきりさせることにかかっていると信じている。


 その点を強調するためにギリシャを罰する必要があるのであれば、それも仕方ない、というわけだ。


 悲劇は、ギリシャ政府もその債権者も今、自己の利益を読み誤っていることだ。ギリシャはまだ欧州単一通貨圏内にとどまりたいと主張している。単一通貨がギリシャ経済にとって厄災だったという証拠が積み上がっているにもかかわらず、だ。


 一方、ユーロ圏の指導者たちは、他の潜在的な規則違反者を思いとどまらせるためにギリシャに厳しい態度で臨まなければならないと感じている。


 実際には、ギリシャも他のユーロ圏諸国も、ギリシャの投票を機能不全のユーロプロジェクトを再考する機会として扱うべきだ。


 双方は、ギリシャが極力痛みの少ない形でユーロから離脱できるようにすることに共通の利益を持つ。ギリシャの一般市民の苦しみを和らげるとともに、他国が将来従えるかもしれないモデルを確立することがその目的だ。


 というのも、ギリシャは通貨同盟に対処するのに苦労している唯一の国ではない。現在の危機は、すべての関係者――通貨同盟を離脱する国と残る国――に恩恵を与え得るユーロ離脱方法が存在することを示すチャンスなのかもしれない。


■ユーロ圏の指導者の目に映る経済的、政治的なリスク



ユーロ圏の指導者たちは、アレクシス・チプラス首相(中央)に褒美を与えるように見えることだけは何としても避けたいと思っている〔AFPBB News〕


 だが、差し当たりは、ユーロ圏の指導者の目に見えるのは、チプラス氏に「褒美を与える」ように見える行動を取ることの危険性だけだ。


 彼らは多額の債務を抱えた国が欧州にたくさん存在することを知っており、国はいつか債権放棄が自分たちを救ってくれるかもしれないと期待して国家財政を整理するきつい仕事を避けられるという考えを助長したくない。


 ギリシャの国内総生産(GDP)に対する国家債務の比率は現在178%で、EU内で最高水準だ。だが、イタリアの対GDP債務比率は130%を上回っている。フランスでさえ100%に迫っている。100%というのは、市場が2009年に最初に怯えた時のギリシャと同じ数字だ。


 ギリシャで反緊縮政党が勝利するのを許すことが招く政治的な結果についても似たような不安がある。


 アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアといった国はいずれも、国家財政を再建するために痛みを伴う歳出削減を行った。


 これら4カ国の政府は、ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)流のポピュリスト政党に悩まされている。こうした政府としては、何より嫌なのは、SYRIZAが成功していると見られることだ。


 実際、ひどく不快な真実は、彼らはギリシャが苦しんでいるのを見ることに対して既得権を持っているということだ。左翼ポピュリズムの道を選ぶなという自国有権者に対する警告として、ギリシャに苦しんでいてほしいのだ。


 フィンランドやドイツ、オランダといった他のEU諸国では、SYRIZAが勝利するように見えた場合に得をする立場にあるのは右派、つまり、最初のギリシャ救済に反対し、お金は絶対に返済されないと警告した人々だ。


 ここでも、政治的な動機はすべて、欧州の指導者たちが強硬路線を取ることを指し示している。


■ギリシャ人の屈辱とドイツ人の怒り


 こうした要因に、純粋な苛立ちを加えなければならない。財務相としてギリシャの債権者をテロリストになぞらえたヤニス・バルファキス氏は辞任した。だが、チプラス氏さえ債権者のことを、保守的な過激派でギリシャを脅迫していると批判した。


 ギリシャ人が怠け者だとか債務者だとか言われることに屈辱を覚えるのと全く同じように、ドイツ人はギリシャにお金を貸すこと、そして挙句に、ただギリシャのメディアでナチスと呼ばれる羽目になることに怒りを覚える。


 しかし、危険なのは、こうした怒りと悪しき前例を作ることへの不安からEU諸国がギリシャの失敗の結果に対して狭すぎるものの見方をすることだ。


 もしかしたら、EUがグレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)からの金融危機の伝染を封じ込めることができると考えているのは正しいのかもしれない。


 だが、政治的な代償は非常に大きい。経済的なカオスに陥るギリシャは簡単にEU内の破綻国家になってしまうだろう。


 そうなれば、欧州プロジェクトの信用がさらに傷つく。折しも全方位から圧力をかけられている時に、だ。


■グレグジットと引き換えに債務減免を


 もし欧州の指導者たちが明瞭に考えていたら、今はギリシャを罰するのではなく、最低限の痛みでギリシャがユーロから離脱しつつEU内にとどまれるようにするために最善を尽くすことがEUの利益にかなうということが分かるはずだ。


 もしそれが離脱パッケージの一環としてギリシャに債務減免を与えることを意味するなら、そうすればいい。グレグジットと引き換えの債務減免は、経済的にも政治的にも理にかなうだろう。


 それでも、一段と激しい経済危機を引き起こすことなくギリシャでドラクマを復活させるのは極めて難しいだろう。だが、それを成し遂げることができたら、EUはついに他の欧州国家を機能不全のユーロから解放するためのモデルを手にするのかもしれない。



 

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コメント
 
1. 2015年7月08日 08:03:33 : jXbiWWJBCA
こっそりとグレグジットに至る道
ドイツで強まる強硬論、「チプラス政権との合意は無理」
2015.7.7(火) Financial Times
(2015年7月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ギリシャ新財務相にツァカロトス氏、交渉チーム責任者
ユークリッド・ツァカロトス氏(右)がヤニス・バルファキス氏の後を継いで財務相に就任した〔AFPBB News〕
 アレクシス・チプラス氏のユーモアのセンスには感心する。ギリシャの首相はヤニス・バルファキス氏の後任としてユークリッド(エウクリデス)・ツァカロトス氏を財務相に据えることで、エセックス大学で教育を受けたマルクス主義とされる経済学者をオックスフォード大学で教育を受けたマルクス主義とされる経済学者に交代させた。驚いたことに、これを楽観的になる理由と見なす人が何人かいる。

 ツァカロトス氏について我々が知っていることは、彼がタフネゴシエーターであり、前任者と全く同じように債務減免の正当性を信じているということだ。チプラス氏自身も信じている。

 だから合意への障害は解決されないまま残る。ギリシャが古い合意にノーと言い続ける一方、ドイツはそれ以外のすべてのものにノーと言うのだ。

 明らかに、ドイツは昨日(7月6日)、自国の財務相を交代させていない。それどころかドイツ政府は昨日、現時点では合意の土台は存在しないとの立場を再確認した。

債権者が全員望んでいれば、合意がまとまるはずだが・・・

 ギリシャと債権者の間で新たな合意がまとまるためには、今後数日間で一連の政治的変化が同時に起きる必要がある。まず、ギリシャ側は国民投票で拒否したものとよく似た緊縮プログラムと構造改革を受け入れなければならない。ドイツ側は債務減免を受け入れる必要がある。

 前者については、バルファキス氏が辞任した今、合意が容易になったかもしれない。ギリシャの有権者が先日拒否した債権者の最後の提案とギリシャ政府の最後の提案を比べてみたら、実際の違いを見つけるのに苦労するだろう。全員が合意を望んだら、ごまかしの合意をまとめ上げ、国内で売り込むことがきっとできるはずだ。

 問題は、筆者はもはや、すべての債権者――具体的にはドイツ――がまだ合意を望んでいるかどうか確信できないことだ。ベルリンの政官界では、チプラス氏の率いる政府とはどんな合意も成立させられないとの考えが強まっている。

 最も攻撃的なコメントの一部は、ドイツ社会民主党(SPD)の指導部から発せられている。

 SPDはアンゲラ・メルケル首相が率いる連立政権のジュニアパートナーで、最近までドイツの政治を穏和にする勢力だった。

 それが今では主要なグレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)支持勢力になっている。ポピュリストの政治領域を自党のものとして囲い込むチャンスを見いだしているからだ。

 筆者はドイツの議論を多少詳しく観察している者として、ドイツだけで870億ユーロと推定される損失など気にも留めずにグレグジットを心から待ち望んでいる人を大勢見かける。

 ベルリンのコンセンサスは、ギリシャ人は経済的な自殺をすることを決めたというものだった。チプラス氏が昨日、新たな交渉の申し出を携えて戻ってきた時、メルケル氏は今夜のユーロ圏首脳会議でチプラス氏の話を礼儀正しく聞くことを受け入れた。

ドイツの議論はグレグジット後の人道支援

 しかし、ベルリンで行われている議論は妥協に関するものではなく、グレグジット後の人道支援を組織する方法に関するものだ。ギリシャがユーロ圏にとどまるという考えは、どこか奇怪だと見なされている。

ギリシャ支援協議「後退」、デフォルトの暗雲迫る
6月25日の首脳会議の際は、こんな和やかな場面も見られたが、今夜はどうか・・・〔AFPBB News〕
 ギリシャの戦略は債権者を分裂させることだ。

 それが恐らくギリシャにできる最大限のことなのだろうが、大したことではない。支援協定には全会一致の承認が必要だからだ。

 だが、少なくともギリシャの政治的孤立を終わらせることにはなる。フランス政府とイタリア政府はドイツ政府よりは、再び交渉に入ることに前向きなように見える。

考えられる代替策は?

 もし大規模な支援パッケージを実現できないようなら、代替策はギリシャの銀行システムだけを再編し、ほかには何もしないという合意かもしれない。

 残念ながら、そのような協定を結ぶ財力を持った唯一の機関は、通常の融資プログラムを施すのと同じ欧州安定メカニズム(ESM)だ。

 規模の大小を問わず、どんなESMの支援も加盟国による全会一致の承認が必要になり、ギリシャ政府が公的債権国・機関に対してデフォルトし続けている間にドイツが銀行限定の支援を承認するとは筆者には思えない。

 もう1つ検討すべき選択肢は、銀行のみを支援する多国間協定だ。イタリアとフランスは、ギリシャの銀行システムがギリシャ政府が資本規制を解除できるだけの資金を持つようになるまで同国銀行の自己資本を増強する有志連合を先導することができるだろう。資本規制を解除した時点で、ギリシャは公的債権者に対してデフォルトし始めることができる。

 フランスのフランソワ・オランド大統領とイタリアのマッテオ・レンツィ首相がそのような巨大な政治的、経済的リスクを取る気があるという証拠を筆者は何も持っていない。どちらもドイツとの政治的な確執は望んでいない。

 筆者の総合的な結論は、もしグレグジットが起きるのだとすれば、それはこっそりと起きるというものだ。

いつの間にかグレグジット

 チプラス政権はいつかユーロ建ての流動性証券を導入する。銀行システムの状態が一段と悪化したら、政府は新たな「IOU(借用書)」を大量に印刷しなければならなくなり、その結果、IOUが灰色市場で割引価格で交換されるようになる。いずれ中央銀行がこの影の通貨の供給を統制するようになる。法定通貨にはならないかもしれないが、もし流通しているユーロが足りなければ、それがギリシャの事実上の通貨になる。

 言い換えると、今ではグレグジットが規定のポジションだということだ。今夜のサミットが何とかして今の苦渋に満ちた膠着状態を打破しなければ、それが起きるのだ。

By Wolfgang Munchau

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44249


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