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7月5日、ギリシャ・アテネで緊縮財政策への賛否を問う国民投票の投票を終え、記者団の取材に応じるアレクシス・チプラス首相〔AFPBB News〕
ギリシャの国民投票でイエス陣営が負けた理由 賛成派が犯した数々の判断ミス、新たな支援交渉は前途多難
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44236
2015.7.7 Financial Times
(2015年7月5日付 FT.com)
ギリシャのアレクシス・チプラス首相が国民投票で圧勝した理由を説明するのは、さほど難しくない。これから何が起きるかを見通すのは、それよりずっと困難だ。
ギリシャ国内および欧州連合(EU)域内のチプラス氏の反対勢力が失敗したのは、些細なものから重大なものに至るまで、さまざまな判断ミスを犯したからだ。
筆者から見ると、3つのミスが目立つ。
最大の誤算は、救済案を拒否する「ノー」の投票結果はグレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)につながると言った数人のEUの大物政治家による明らかに申し合わされた介入だった。
■EUによる「介入」への不満
その1人がドイツの経済相でドイツ社会民主党(SPD)党首のジグマー・ガブリエル氏だ。同氏は国民投票の結果が出た直後にも、この脅しを繰り返してみせた。ギリシャ国民はいみじくも、こうした脅しを自国の民主的プロセスに介入しようとする試みとして解釈した。
ユーロ圏の当局者らが国際通貨基金(IMF)の最新の債務持続可能性分析の発表をやめさせようとしたという先週のニュースも不利に働いた。IMFの報告書は基本的に、ギリシャ政府が債務減免を要求したのは結局正しかったということを明らかにしていた。
他のEU諸国はギリシャの国民投票を不正に操作することを望んでおり、それを隠そうともしなかったという印象を与えてしまった。
■経済的に説明のつかない救済措置と傲慢さ
イエス陣営の2つ目のミスは、救済プログラムが経済的にどう機能し得るのかを説明できなかったことだ。
これは本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の紙面上で我々を延々と忙しなく働かせているようなケインズ経済学と新古典派経済学の間の議論ではない。
ギリシャの国民投票はポール・クルーグマン氏やジェフリー・サックス氏、ハンス・ヴェルナー・ジン氏など、世界経済の仕組みについて大きく異なる見解を持つ経済学者やエコノミストを団結させた*1。
8年間に及ぶ深刻な不況を経験した経済国が経済調整を実現するためには新たな緊縮策が必要になるということを定めた信頼の置ける経済理論は存在しない。
3つ目の重大なミスは傲慢さだ。イエス陣営の支持者は、勝利は確実だと思っていた。前回の英国総選挙の前の労働党のように、結局ひどく不正確であることが分かった世論調査を当てにしていた。
■失業していておカネが稼げなければ、通貨が何でも関係ない
ギリシャ・アテネの議会前で、「オヒ(ノーの意味)」と書かれたバナーを掲げる緊縮策反対派の人たち〔AFPBB News〕
筆者が最も腹立たしく思ったのは、あたかも惨事がすでに起きていないかのように、グレグジットは経済的な惨事を招くと訴えた議論だ。
5年間失業していて、仕事を得る見込みもない人であれば、稼げないおカネがユーロ建てであろうがドラクマ建てであろうが何の違いもないのだ。
民主主義の軽視と経済リテラシーの低さは単なる戦術的なミスではない。これら2つの「性質」は現在、欧州統合プロジェクトの残骸のうち、まだ残っている2本の思想的支柱だ。
*1=いずれも救済案を拒否する「ノー」を支持する見解を示していた
ギリシャは、欧州通貨同盟は現在築かれている形では根本的に持続不能だということを思い出させてくれる材料だ。このことは、通貨同盟は是正される必要があり、さもなければいずれ終わるということを意味している。
では、現在ある選択肢はどんなものか。これについては、次のコラムで詳しく書きたいと思う。
だが、肝心な点は、支援の合意を成立させるのは、これから一段と難しくなるということだ。
日曜日の投票でノーの結果が出た後、ギリシャ政府は緊縮措置の少ない、従来と大きく異なる救済を主張するだろう。IMFの直近の計算に沿った債務減免を求めるだろうし、そう要求するのは正しい。
一方、ドイツの過半数の人がそのような合意を支持するとは思えない。実際、ドイツを無理やり債務減免の交渉の席に着かせる唯一の方法は、デフォルトし始めることだと筆者は見ている。別の方法では、これは実現しようがない。だが、その時点で、グレグジットの確率は高くなる。
■グレグジットは選択肢に非ず
恐らく今、最も現実的な解決策は、ギリシャの銀行システムの債務の借り換えだけをカバーする合意かもしれない。ギリシャ政府は債権者に対してデフォルトし、債権者はギリシャに新規の資金を与えるのをやめる。そうすれば全員のコミットメントを最小限に抑えられるが、そのような取り決めも困難に満ちている。
そして最後に、グレグジットのことを、ギリシャ政府が選ぶかもしれないし選ばないかもしれない選択肢とは見なさない方がいい。これはどんな人も選ばない選択肢だ。グレグジットは、他のすべての可能性が尽きた時に起きることだ。そして今、残っている選択肢は多くない。
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