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「お金は魔物」――年収アップ転職には要注意!
年収アップ転職ほど危険なものはない
http://diamond.jp/articles/-/74402
2015年7月6日 野田 稔 [一般社団法人 社会人材学舎 代表理事] ダイヤモンド・オンライン
今回はまず転職に伴う年収の問題を考えてみよう。結論から言うと、年収にこだわる転職はまず失敗する。
自分や自分の家族が生活するのに本当はいくら必要なのかをわからずに、今もらっている給与を下げたくないと、年収に固執する転職は、ほぼ失敗するということだ。
「お金は魔物」――そのことを念頭に置いて、今回の話を読んでほしい。
■給与が高ければ当然期待値も高い その期待に応えられるか?
転職で頻繁に聞くのが、「今の年収をキープできればそれでいいです」というセリフだ。一見、謙虚で分をわきまえているような発言だが、私に言わせれば大甘だ。
給与を下げたくないという気持ちはよくわかるのだが、規模の小さな会社に転職すれば、同じ仕事ならば給与は下がるのが通例だ。同じ業界への転職ならば、今よりも高いパフォーマンスを発揮しなければ、間違いなく給与は下がる。
「ならば、高いパフォーマンスを発揮すればいい」と思うかもしれないが、それができるのであれば、今の会社で冷遇されているはずがない。きついことを言うようだが、冷静に自分を見つめてほしい。今の自分の処遇、会社からの期待は本当に不当なものなのか。実力・実績は本当に不当に低い評価なのか。よく考えてほしい。
よくよく考えてみれば、多くの場合、自分が会社からの期待に応えられていないとわかるはずだ。だとしたら、次の同業他社でどうして今まで以上のパフォーマンスが発揮できるというのか。
もちろん例外はある。同業他社への転職で昇給する例もなくはない。かつてサムスンが液晶技術者を大量にスカウトしたように、その会社にない技術やノウハウを持っている場合がそれだ。海外の新興メーカーであれば、これからもそうしたこともあるだろう。しかし、そういった“時間差型高給転職”が、長い目で見ても安全で得策かと考えると、何とも微妙な話だ。ブレインピック(知識を吐き出す)されて放り出される例が後を絶たない。3年契約が1年半で契約打ち切りというのはよく聞く話だ。
では業界をずらせば年収は間違いなく上がるかと言えば、それもNOだ。むしろ、当初は給与が落ちるケースの方が多い。会社の規模が小さくなる場合も多いだろうし、その業界での実績もないわけだから、高い年収を期待するのは難しい。
もちろん、巧みな交渉術を駆使して自分を売り込み、高い年収を最初から得ることも可能ではある。ところが、これが実に危険なのだ。
交渉によって年収アップを成し遂げた転職を称して、一般的には「成功」と言う。多くの斡旋会社やヘッドハンターもそれを売り物にする。しかし、本当は、この場合の危険性こそ注意すべきものなのだ。
なぜならば、その会社にとって高い給与をコミットするということは、それだけ高い期待をするということなので、一にも二にも、その期待に応えなくてはいけない、しかも応え続けなくてはいけないということだからだ。
その会社にいて、間違いなく高いパフォーマンスを上げ続けられる自信があるならチャレンジすればよい。しかし、本当にそんな自信があるのか。その自信を裏付けるエビデンスがあるのか。そこを冷静に見てほしい。
実際にそういう例をこれまでにも見てきた。あるケースでは、人並みには優れているのだが、決してそれ以上ではない能力の人が、ヘッドハンターの巧みな交渉で、その会社としては通常の給与テーブルをはるかに逸脱する年収での契約をしてしまった。
その結果、ヘッドハンター会社には多額の成功報酬がもたらされたが、本人はかなり高い期待に苦しめられ、結果として数年たたずして退職を余儀なくされた。一度高く設定された報酬を下げるのは、本人だけでなく企業にとっても簡単ではないのだ。
そういう状況になってしまえば、本人が困るだけでなく、受け入れた会社もとても困る。周りの社員もいい思いはしない。年収交渉は魔物、そう思い定めてほしい。
結局、給与は、自分が許容できる範囲で低く下げ、入社後のパフォーマンスで上げてもらうというのが成功のパターンと言える。そのことを覚えておいてもらいたい。
■高い金額を提示されても、簡単に飛びついてはいけない
では、高い金額が会社側から提示された場合はどうするか。もちろん、それを無碍に断る必要はない。ただし、先方が自分に期待するパフォーマンスの内容はしっかり聞き出さないといけない。自分のどこに期待されているかを知る必要がある。時に、ひいきの引き倒しという状況もあるからだ。
近頃、シニアに対する耳触りの良い就職口として、“顧問紹介”がある。
皆さんは顧問派遣の実態をご存じだろうか。大部分が、その人の前職企業への売り込みのための人脈紹介を期待されての契約なのだ。実は本人の能力発揮などちっとも期待されていない。名刺の束を渡してもらい、電話で一言「よろしく頼む」と言ってもらえればそれでいいのだ。
当然、当初は高い顧問料が支払われるが、人脈が尽きればそれまでだ。
本当に自分の働きが必要とされているのか。自分の何が価値だと認識されているのか。厳しい目で自分を見てもらいたい。
私の場合も同じだ。社外取締役などを受ける際、提示された金額が相場に照らして高い場合は、十分警戒することにしている。念入りに自分に対する期待を聞き出すようにしている。何を、どのくらいの頻度で要求されるのか。そのニーズに応えられると判断すれば、いくら高い報酬であっても断ることはない。とにもかくにも企業は、期待する価値以上には絶対に支払わない、と肝に銘じるべきだ。
それゆえ、過度な期待だとわかった場合は、潔く断る勇気が必要だ。そのためにも、自分の実力を棚卸ししておくことが重要になる。自分はいったい、何が、どのくらいできるのか。これこそ最も重要な事前の準備だ。
金額が初めにありきの転職を望む人は、何でも「やれます」「やります」と言い始める。それがどれほど危険なことか、その後の人生を暗転させるかを知ってほしい。
■生活レベルは極限まで下げてから、許容できる範囲まで上げる
仮に40代で大手企業を辞めて転職するとなると、新卒から働いていれば、どうだろうか、400万や500万の退職金は出るのではないだろうか。この退職金を、一度下がった給与が耐えられる水準に戻るまでの穴埋めに使うという方法もある。
その期間を自分への投資とすることは、賢い使い方だと思う。
さらに、冒頭の話に戻るが、生活レベルのダウンサイジングも必要になる。mustの縮小である。
かつて、野村総研を退職するときに、私もそれを行った。いったい、自分は、家族は、どれだけのお金があれば生活ができるのか。その時に初めて家計簿分析も行った。これだけは譲れないというものを挙げていって、そのコストを算出した。
大きなものは、たとえば家賃だろう。現在家賃の高い東京に住んでいるとして、家賃の安い郊外に移り住むことができるのか、それは無理なのか。可能性を探ってほしい。
子どもがいれば教育費もかかるだろうし、そのほか、必要な経費というものがそれなりにある。会社を辞めても交際費もゼロにはならない。私は、週に何回、呑みに行きたいか、そのクラスはどのくらいかということも考えた。本は月に何冊欲しいかも考えた。「ハードカバーは我慢しよう。でも、文庫本は我慢したくない」と自分に宣言した。
そうしたすべての経費を家計簿につけていった。ちなみに文庫本は6冊で月3600円の支出と計上した。居酒屋は月2回で月間9000円を計上した。
当初はぎりぎりまで生活費=経費をそぎ落として計算した。結果390万円と出た。しかし、それではあまりに生活が窮屈だと思い、今度は少し、そこから贅沢をすることを考えた。家計ダイエットは必ずできる。ただ、過剰ダイエットをすると、心が病むから、やり過ぎは禁物だ。
そこで再度考えた。年金もなくなるであろうから、ある程度の貯金も必要であろうし、たまには旅行にも行きたい。
そうして結論が出た。これは「最高限度まで膨らませた、贅沢の最低限」の数字だ。私の場合は一家で690万円となった。
結構な金額だ。しかし、自慢に聞こえると恐縮なのだが、当時、野村総研の部長職にあって、私はその倍以上を稼いでいた。だから、「何だ、今の半分でいいじゃないか」と思えて、肩の荷が下りた。
もちろん、この過程は配偶者がいれば、配偶者と膝を突き合わせてじっくりと考えるべきことだ。
たとえば1500万円もらっている人が800万円にダイエットすると、できると思っても半額近くにするのだから非常に辛く思えるかもしれない。そこで私がやったように、まずは過剰ダイエットをしてみる。いったん400万円にまで下げて、そこから少し積み上げていくと、700万円でも悪くないと思えてくる。
金額の高は人それぞれだが、家計ダイエット、mustの縮小は必ずすべきだ。mustを引き下げればそれだけ転職の可能性は広がる。
繰り返すが、最初にもらえる金額が相場の上限に張り付く交渉は失敗と思ったほうがいい。mustを下げて余裕を持った上で、少しでも下げた金額で手を打つ。それこそが交渉上手だ。後は入社後のパフォーマンスで勝負する。
低い年収で入社し、「あいつ、なかなかやるじゃないか」と思わせる。それでいい。転職は、転職したときがゴールではなく、その職場で成功し、ステップアップしたときがゴールだからだ。
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