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”習ショック”の足音 新常態の誤算[日経新聞]
編集委員 後藤康浩
2015/7/5 6:30
思い起こせば2008年9月のリーマン・ショックから世界経済が立ち直るきっかけとなったのは08年11月に中国政府が打ち出した4兆元(当時のレートでは57兆円)の財政出動でした。これで中国の高度成長にさらに弾みがつき、10年には国内総生産(GDP)で日本を抜き、自動車販売で米国を抜きました。資源需要、製造業、金融市場など世界経済に対する中国の影響力は急激に膨張したわけです。しかし、今、中国は構造不況とデフレの入り口に立っています。この数週間の上海株式市場の急落はこれから世界に広がる中国発の経済危機の前兆なのかもしれません。習近平(シー・ジンピン)国家主席にちなめば”習ショック(シー・ショック)”が世界を襲うリスクは確実に高まっています。
今の中国経済を一言で表現すれば「過剰」といえます。鉄鋼、石化、セメントから家電、電子機器、自動車、太陽光発電パネルまで大半の産業分野で生産能力が過剰になっています。デパート、ショッピングモール、レストラン、銀行などサービス業もオーバーストア、オーバーバンキング。不動産業と地方政府は住宅や工業団地の大量売れ残り、空き物件と借入金に苦しんでいます。
■冷え込みつつある国内消費
中国ではデパートなど大型商業施設の閉鎖が相次いでいます。中国百貨商業協会によると、加盟百貨店の総売り場面積は撤退や倒産などで昨年1年間だけで1619万平方メートルも縮小しました。日本で最大級のデパート160個分にもあたる規模です。北京の老舗デパートの王府井百貨は14年に広東省湛江門店を閉店、湖南省の子会社、株洲王府井百貨を売却しました。日本では「爆買い」を続ける中国の消費者ですが、中国国内では消費は冷え込みつつあるのです。
世界の生産能力の半分を占める中国の鉄鋼業は昨年の稼働率が70%以下に低下し、政府は大手メーカーの共倒れを警戒して17年までに少なくとも1億トン以上の粗鋼生産能力を削減する方針を打ち出し、業界に実行を求めています。好調だった自動車もすでに今年1〜5月の伸びは前年同期比2.1%まで低下。4、5月は2カ月連続でマイナスとなりました。外資系の一部は工場の稼働率が70%を割り、販売奨励金の積み増しで販売テコ入れに躍起になっているといわれます。
08年以降の中国は「経済大国」の言葉に踊らされ、需要の先食いで高成長を無理に続けてきたといえるでしょう。高成長を止めることが「面子(メンツ)」を失うことに感じたのではないかと思います。昨年春に習政権が打ち出した無理な高成長を目指さない、という「新常態(ニューノーマル)」は「面子」より経済の健全化を狙ったものだったといえます。ですが、政府の下支えの弱まった経済は急激に坂道を下り始め、政府の考えより急速に悪化しているようです。
国内にあふれていた資金は有望な投資先を見失い、一時的に上海、深圳の株式市場に流入、高値を演出しましたが、企業収益や足元の景況感との乖離(かいり)に気がつくと、一斉に逃げ出しています。政府は利下げや預金準備率の引き下げを連発し、鉄道建設などインフラ投資も再開しましたが、効果は出ていません。
今、中国でバブルのまま維持されているのは1元20円近いレートの人民元だけかもしれません。日本で100円均一の店で購入できるまったく同じ商品が中国では「10元均一」、すなわち200円前後で売られています。中国人観光客が日本で買い物をしたがるのも、日本の専門店、外食チェーン、サービス業の中国進出が続いているのも、人民元の高止まりに理由があります。決して中国の景気がいいために「爆買い」が起きているわけではないのです。
■過剰在庫がアジア市場へ
さて、”習ショック”が現実化すると何が起きるのでしょうか。ひとつはっきりしているのは資源需要の縮小から資源価格が急落する可能性です。次に鉄鋼、石化、家電、自動車まで中国で過剰在庫になった商品がアジア市場に流れ出す可能性です。自由貿易協定(FTA)を結んでいる東南アジア諸国連合(ASEAN)市場が最初のターゲットになるでしょう。企業倒産や雇用調整で、中国国内の消費は一段と冷え込むのも当然です。
現実化してほしくない予想ですが、こうしたリスクを覚悟し、備えておくことも日本企業には必要です。”習ショック”にうまく対応できた企業こそ、やがて来る次の中国の成長ステージで成功できるでしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88916640U5A700C1000000/
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