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2012年7月、ニューヨーク市が実施しようとした巨大飲料規制に反対する人々(写真:ロイター/アフロ)
あの加工食品が、あなたの健康を蝕んでいる 法律で一部の加工食品を規制するべき
http://toyokeizai.net/articles/-/75053
2015年07月04日 ケネス・ロゴフ :ハーバード大学教授 東洋経済
政府は飲酒や喫煙、ギャンブルのような常習的行為に規制や税をどの程度課すべきか。多くの国々での論点だが、世界の消費文化の生みの親である米国では現在、この論争は子供の肥満という流行病との闘いに向けられている。
子供の肥満は先進国が直面する公衆衛生上の主要な問題の一つであり、新興国にも急速に影響が及んでいる。しかも解決するには、広範なワクチン接種、飲料水へのフッ素添加、自動車の安全規則など、20世紀の公衆衛生上の政策成功例よりもっと困難な課題が控えている。
■米国で行われる「教育キャンペーン」
肥満で世界のトップを走る米国は、肥満論争でも最先端を走る。ミシェル・オバマ米大統領夫人の「レッツムーブ」教育キャンペーンは1世代で子供の肥満をなくそうとしている(成果はまだ明らかでない)。ほかにも、シェフのジェイミー・オリバーなどの有名人による訴えに加えて、「セサミストリート」に触発された「キッキングニュートリション(すばらしい栄養)」(情報の全面開示で、考案者は私の妻)など、仲間同士の学びを基礎とする学習を利用する試みもある。
ただし、過剰な消費を引き起こす潤沢な資金と強い動機を持つ食品大企業が支配する環境で、教育だけで十分かは未知数だ。
子供を標的とするコマーシャル付きのテレビ番組は、健康にとっての価値が疑わしい加工食品の広告で満ちている。
肥満の原因は科学的に未知の部分が多いが、これを流行病と呼ぶのは誇張ではない。米疾病対策センターによると、米国の6〜11歳の子供は約18%が肥満だ。
最大のリスクは、子供の肥満が大人の肥満につながることで、糖尿病と心臓病のリスクも増える。専門家の推定では、先進国の大人全体の18%以上が肥満だ。もっと驚くべきことは、米国民全体の約9%、そして世界の大人のやはり9%前後が糖尿病であるという推計だ。
■「大型ボトルの砂糖入り飲料」は規制すべき
政治家たちは危険を覚悟のうえで大手食品会社に反撃する。ブルームバーグ・ニューヨーク前市長が大型ボトルの砂糖入り飲料を禁止しようとした際には、医学の専門家が支持したにもかかわらず、裁判所だけでなく世論まで禁止に反対した。
しかし、禁煙、シートベルト法、自動車の速度制限など、過去50年の公衆衛生上の取り組みの成功例を考えると、多くの場合、法規制が教育を補ってきたとわかる。
そこまで踏み込まずに食品の選択に影響を与える方法は、砂糖入り飲料だけでなく、すべての加工食品に小売税を課すことで結果的に、非加工食品に補助金を出すことかもしれない。長期的には(最も肥満に苦しむ)低収入の家庭が最も恩恵を受けるだろう。少なくとも短期的には非加工食品への資金移転効果があるはずだ。医学研究者のデイビッド・ラドウィッグやダリウシュ・モザファリアンとともに、私はこうしたアプローチの概要を提案した。
加工食品の一部は、人体にとっての悪影響が明らかにほかのものよりずっと大きい。もっと細かく分類することも可能であり、反対意見を含め多様な考え方をぶつけ合うべきだろう。
それでも、われわれのやり方には、単純さという実践面での優位性がある。米国の消費文化は食品業界に支配されており、人々の食べる喜びが多くの場合、常習性と健康破壊に転換されてしまう。
踏み出す第一歩として、教育とコマーシャルの虚偽情報のバランスを改善することだ。ただ、食品にはあまりに常習性があり、食品環境は不健康な結果に向けて歪曲させられているので、より広範な政府介入について検討する時が来ている。教育に関する国家支出を大きく増やすことが含まれているが、長期の解決には、より直接的な規制が必要だろう。方策の検討開始に時期尚早ということはない。
(週刊東洋経済2015年7月4日号)
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