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2015年07月01日 (水) 午前0:00〜[NHK総合]
時論公論 「課題残した財政健全化」
関口 博之 解説委員
▽日本の国と地方の借金は1000兆円、国民一人当たり800万円にもなります。
財政危機といえば、今その瀬戸際で、連日注目を集めているのがギリシャですが、借金残高をGDP比で見ると、そのギリシャより日本の方が悪いほどです。
これをどう立て直すのか、政府が財政健全化の計画を「骨太の方針」で打ち出しましたが、これで道筋がついたとはなかなか言えません。
残る課題を見ていきます。
▽日本の財政は、赤字という「贅肉」が毎年、毎年たまる、こんな状態です。
これを2020年度には「太らない体質」に変える、つまり国と地方の基礎的財政収支を黒字にもっていこうというのが目標です。
政策にあてる経費を、税収で賄えていれば、黒字化達成となります。
目標自体はこれまでと同じですが、それを確実に達成できるようにするのが今回の計画の趣旨です。
▽そのために新しく作ったのが「中間目標」、これが最大のポイントです。
真ん中の2018年度に、一度、体重計に乗ってみようというわけです。
そして、その時点での基礎的財政収支の赤字幅を、GDP比で1%程度に収めようということにしました。
▽予算の姿で見ればこんなふうになります。
政策的経費と税収を均衡させることが目標ですが、その前段階として18年度は、まだ赤字は赤字でも、できるだけ圧縮します。
今のGDP比3・3%を1%にまで下げようというわけです。
▽ただ、この目標は、なかなか曲者です。
まず税収は、景気次第で大きくぶれるものです。
想定外に落ち込んだ場合に備えておかなくていいのか、という問題があります。
また、GDPとの比率を取りますから、経済成長でGDPが大きくなれば、赤字幅は見た目、縮小することになります。
却って財政規律が緩むことになる恐れもあるのです。
▽一方で、この中間地点の前には、2017年4月の消費税の10%への引き上げが予定されています。その前にあまり予算を絞りすぎては、景気が腰折れして、元も子もなくなる懸念があります。
なので安倍総理は、「経済再生なくして財政再建なし」と言い続けています。
2018年度までは、成長戦略に重心を置いて行って、財政再建の正念場は、その後からと考えているのではないか、そう見る専門家も少なくありません。
▽そもそも、財政再建への道は幾つもあるわけではないのです。
歳出を減らすのか、増税するのか、経済を成長させ税の自然増をはかるのか、あるいはこれらの組み合わせしかありません。
今回、消費税を10%に上げることは計画に織り込まれているものの、それ以上の増税策は事実上、封印されています。
となれば、あとは歳出削減と経済成長の兼ね合いをどうするかです。
▽デフレ脱却を至上命題にする安倍総理と甘利経済再生担当大臣が、成長重視の立場なのに対し、麻生財務大臣や、自民党の稲田政調会長は、歳出削減に力点を置いています。
このため「歳出額自体にも何らかの目標設定を」と主張しましたが、甘利大臣は「それでは景気動向を踏まえた柔軟な予算編成ができなくなる」としてこれに反対しました。
▽一律の機械的な予算カットには弊害がありますが、何らかの目安は必要です。
その妥協の産物で盛り込まれたのがこちらです。
予算が膨れ上がる最大要因である社会保障費に、一定の枠を設けたのです。
「安倍内閣の過去3年間の社会保障費の伸びは1・5兆円程度になっている」
「その基調を2018年度まで続ける」としました。
けれどもこれは、かなり緩いルールに見えます。
少し意訳をすれば、こうなります。
「社会保障費は増加幅を抑えるだけで、純減にはしません」
「その場合の窮屈さも、これまでと同じ程度なのですから、あまり心配しないで下さい」こう言っているのに等しいのです。
▽こうした「緩さ」の一方で、今回の計画には、予算の増加を抑えたり、削減したりする「項目」を、できるだけ盛り込んでおこうという努力はうかがえます。
▽例えば後発医薬品、いわゆるジェネリックの利用促進がそうです。
これは、経済財政諮問会議と厚生労働省の間で、何度も議論がありましたが、結局、「2018年度か2020年度末までのなるべく早い時期に、後発医薬品のシェアを80%以上にする」と、一応、具体的に書き込まれました。
先進国並みに、ジェネリックの普及を目指す姿勢は示したわけです。
▽けれども他は、大半が「検討項目」の段階に止まっています。
例えば、都道府県別に見た一人当たりの医療費は、最も多い所と少ない所では1・5倍以上の開きがあり、この差を半分にすることで、全体の医療費を抑えるということが提案されていますが、そのための具体策は示されていません。
▽外来窓口での定額負担も、検討すると書かれています。
この定額負担、今の窓口での1割から3割の本人負担とは別に、一回いくらという定額の料金を設けて、必要以上に頻繁に医者にかかるのを抑えるのが狙いですが、過去に提案された時は、猛反発にあっています。
また、来年から導入されるマイナンバー制度を使って、高齢者でも、預金や株などの資産を持っている人には、医療や介護でそれなりに負担を求め、現役世代との負担の公平を図ろうという考えも示しています。
どれも賛否の分かれるテーマで、いつまでにどう制度を変えるのかを、議論しなければならないが、その工程表作りはこれからです。
年末の来年度予算編成から、議論は再スタートということになるのだろう
▽さて、そもそも、財政再建の原点とは何でしょうか。
今、私たちが直面しているのは、先進国で最悪の財政状況です。
当座はしのげるとしても、子や孫、更にはこれから生まれてくる世代に、このツケを先送りしてはダメで、それを解決する責任は今の我々にあります。
それがことの本質です。
▽幸い今、日本経済にはデフレ脱却の兆しが見えてきました。
そのおかげもあって、税収は見込みより大幅に上ブレしそうです。
▽しかし、先行きを見ると、決して楽観できる材料ばかりではありません。
2017年度に消費増税をするなら、その後の消費の反動減を打ち消す経済対策がまた必要というふうに、なるかもしれません。
一方、デフレ脱却が見えてくれば、日銀も異次元緩和からの出口を模索することになります。その結果、金利が上がり出せば、過去の借金の利子が、財政にまた重くのしかかります。
さらに2020年代前半には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、社会保障費もピークを迎えます。その後は本格的な人口減少時代です。
そう考えていくと、日本の財政問題を解決するのは、今がギリギリのタイミングかもしれないのです。
▽最後に気がかりなことを一つ、申し上げます。
今回の財政再建の論議は、「実質成長率が2%を超える、楽観的なシナリオを想定しても、2020年度には、どうしても9・4兆円足りない」という内閣府の試算から始まりました。
学者や専門家も巻き込み大論争になったのですが、それが最後は、すっかり立ち消えになりました。
なぜならば、税収の上ブレが見えてきたからなのです。
こんな「腰の据わらないやり方」で大丈夫なのでしょうか。
本当に気になるところです。
(関口 博之 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/222003.html
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