1. 2015年7月03日 19:38:45
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ギリシャ投票、流動性支援への予断持つべきでない=ECB副総裁 2015年 07月 3日 18:49 JST [ビリニュス(リトアニア) 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁は、5日に予定されているギリシャの国民投票で緊縮策への反対票が賛成票を上回った場合、同国の銀行への緊急流動性支援(ELA)を実施するかどうかについてコメントを避けた。コンスタンシオ副総裁は金融会議後の記者会見で、ECBがELAを承認するかとの質問に対し「その質問に関して、前もって答えることはできない」と回答。「それは(ECBの)理事会が判断することになる。理事会が全体として、状況をどう分析するかは成り行きを見守るほかない」とした。 さらに副総裁は、国民投票で賛成派が多数を占めた方が金融支援はやりやすくなるとも発言。ECBとユーロシステムは、不測の事態によるユーロ圏への影響を最低限にとどめるための十分な準備があると述べた。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PD0XV20150703 ギリシャ危機、ウクライナ紛争と比べれば小さな問題=独経済相 2015年 07月 3日 18:53 JST [ベルリン 3日 ロイター] - ドイツのガブリエル経済相は3日、ギリシャの債務危機は欧州にとって相対的には大きな問題ではないとの見方を示した。 ガブリエル経済相はウクライナ紛争について言及した後、「ギリシャに関する協議でわれわれは、この問題が欧州では相対的に小さな問題だということを忘れている」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PD0Y520150703 情報BOX:ギリシャ国民投票、どちらに転んでも混迷続く 2015年 07月 3日 19:03 JST [アテネ 3日 ロイター] - 欧州連合(EU)など債権団が突き付けた緊縮財政要求に対して、ギリシャのチプラス首相は5日に国民投票を実施することを決めた。投票結果は不透明だが、緊縮策に「イエス(賛成)」となっても「ノー(反対)」となっても新たな不透明感や政治混迷が生じる見通しだ。 投票後のメーンシナリオは以下の通り。 <国民投票でイエス> ギリシャの左派政権は大々的に反対票を投じるよう国民に呼びかけている。チプラス首相は債権団の提案をギリシャに対する「侮辱」だとしており、国民投票で緊縮策に賛成となれば退陣する意向を強く示唆している。 チプラス首相が辞任した場合、通常なら解散総選挙に進む見通しだ。総選挙は9月に実施されるとの観測もある。 ただ、ギリシャは7月中に主要な債務返済期限を迎えるほか、銀行閉鎖を余儀なくされるという金融危機のさなかにあることを考慮すれば、債権団との交渉を続けるために総選挙までの「挙国一致」暫定政権の樹立を大統領が推し進めるだろう。 ただ、暫定政権の樹立は難航しそうだ。 中道政党・ポタミ、中道左派・全ギリシャ社会主義運動(PASOK)、保守派・新民主主義党(ND)といった親欧州政党は挙国一致政権への参加に意欲を示しているが、これらを合わせても議会(定数300)のうち106議席を占めるに過ぎない。 そのため、現与党の急進左派連合(SYRIZA)と連立相手である右派・独立ギリシャ人党がそうした暫定政権を支援、もしくは暫定政権に参加する必要が出てくる。この場合、無所属の政治家もしくはテクノクラートと呼ばれる実務者が政権を率いることになりそうだ。 賛成票を投じるよう国民に呼びかけているコスタス・カラマンリス元首相は、そうした候補の1人だ。 救国政権はギリシャではこれまでにもあった。2011年には当時のパパンドレウ首相が国民投票の実施計画を持ち出したものの、退陣に追い込まれ、翌年の総選挙まで主要政党の支援を受けた実務者が政権を担った。 SYRIZAの一部関係者によると、緊縮策に「イエス」となった場合、チプラス首相自身は職にとどまり、総選挙を実施するとの前提の下で債権団との交渉を続けようとするかもしれないという。 ユーロ圏の政策立案者らは緊縮策に賛成するようギリシャ国民に呼びかけている。 ドイツのメルケル首相は第3次ギリシャ支援交渉の準備があるとの姿勢を示している。ただ、独当局者の間には、支援を受けることに前向きな新政権がギリシャで発足し、欧州中央銀行(ECB)への返済期限を迎える今月20日までに第3次支援を交渉できるかどうかに疑念の声もある。 <国民投票でノー> ギリシャ政府当局者は、国民投票の結果が「ノー」であれば、債権団との交渉力が強まるとしている。ただ、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オランダ財務相)らユーロ圏の政策立案者はこの見方を断固否定している。 チプラス政権は債権団との協議を早急に再開すると表明しているが、欧州当局者は、改革案否決が債権団との交渉の拒否と解釈されることから、新たな支援策で合意することは非常に困難になると考えている。 ユーロ圏政策立案者は、改革案の否決は通貨ユーロの拒否を示唆し、追加支援の可能性へのドアを閉ざすことになると警告してきた。 ギリシャは7月20日に期限を迎えるECBへの大規模な返済でデフォルトに陥る可能性が高い。金融危機は急速に悪化し、不透明感の高まる中、銀行が営業する可能性は低いとみられる。ECBは、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を引き続き凍結することが見込まれ、銀行破綻の危機にひんするなか合意を目指すチプラス首相への圧力はさらに高まるだろう。 そうなれば、チプラス首相が辞任し、新たな挙国一致政権の樹立に道が開ける可能性がある。挙国一致政権はその場しのぎのためIOU(借用証書)を発行して二重通貨制度を選ぶことも予想され、事実上「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)」に向かうことになる。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PD0YD20150703 ギリシャ国民投票の「問い」、法律上も事実上も無効=欧州委員会 2015年 07月 3日 16:46 JST [ベルリン 3日 ロイター] - 欧州委員会のドムブロフスキス副委員長は、5日に予定されているギリシャの国民投票での「改革案を受け入れるかどうか」との問いは、法律上も事実上でも無効だとの見解を示した。3日付独ウェルト紙のインタビューに答えた。
ドムブロフスキス副委員長は「欧州委員会、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)の支援プログラムがらみの提案の賛否が国民投票で問われることになっているが、提案はすでに失効している」と指摘した。 さらに副委員長は「ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は彼らを受け入れてもいないし、拒否もしていない。彼らは、現在の協議の状態について答えていない。ギリシャのチプラス首相が国民投票の実施を宣言した時、われわれはまだ協議の最中だった」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PD0NO20150703 来週はギリシャが焦点、緊縮賛成ならリスク回避巻き戻しでドル上昇 2015年 07月 3日 15:40 JST [東京 3日 ロイター] - 来週の外為市場では、ギリシャ国民投票の結果が序盤の焦点だ。財政緊縮策への賛成が多数となれば、リスク回避ポジションの巻き戻しでドル/円に上昇圧力がかかりやすい。 一方、反対が多数を占めれば、ギリシャのユーロ圏離脱への警戒感が強まり、ボラティリティが高まる展開となるとみられている。 予想レンジはドル/円が120.00―124.50円、ユーロ/ドルが1.0450―1.1450ドル。とりわけ先行き不透明感が強いユーロは、市場が予想するレンジの幅が広がりやすい。 5日に実施予定の国民投票では、財政緊縮策に対する賛否が問われる。週明け6日のアジア時間にかけ断続的に経過が報じられる見通しで、結果を受けた相場の反応については「読みにくい。出たとこ勝負の面が強い」(国内金融機関)との声が多く聞かれ、波乱含みの様相だ。 ギリシャのエトノス紙に掲載された最新の世論調査によると、緊縮策受け入れ賛成派は44.8%、反対が43.4%となった。11.8%は未定としている。ユーロ残留希望は74%、自国通貨を望むのは15%だった。 実際の国民投票で賛成が多数を占めるようなら、これまでのリスク回避ムードが巻き戻されるとの見方が優勢で、ドル/円は上昇が見込まれる。ユーロについて、あおぞら銀行の市場商品部部長、諸我晃氏は「ポジション動向で買われる可能性がある。ファンダメンタルズではユーロ売り」と指摘する。いったんは好感されて上昇しても、その後はあらためて米欧金融政策の格差に目が向き、ユーロ安の流れが出そうだ。 一方、財政緊縮への反対が多数を占め、先行きの不透明感が強まるようなら、ボラティリティの高い相場が長引きそうだ。ギリシャがユーロ圏を離脱する動きになれば、中長期的にユーロの信認が高まるとの指摘がある一方、ユーロ圏各国の結束が緩むようなら逆に信認が低下するとの声もあり、相場の行方に対する見通しは定まっていない。 目先のユーロ相場では、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和(QE)導入後は欧州株価との逆相関が強まっており、ギリシャ国民投票後のユーロ相場にとっても、欧州株の動向が重要との指摘もある。 <イベント通過後は米利上げに目線は移るか> ギリシャの国民投票後に相場が落ち着くようなら、再び米利上げの行方に市場の関心が向かうとみられる。 経済指標としては、米国では週初の6日に米6月ISM非製造業景況指数が発表される。ISMでは、1日発表のISM製造業景況指数が強い数字だっただけに、良好な結果が期待されている。7日発表の米5月貿易収支では、ドル高の影響が見られるのかどうかに関心が寄せられている。 8日には6月16─17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が発表される。「米景気の回復傾向に対し、FOMCメンバーがどの程度の確信を持っているのかを見たい」(国内金融機関)との声が出ている。 欧州では7日に独5月鉱工業生産、9日に独5月貿易収支が、日本では8日に5月経常収支、9日に5月機械受注が、それぞれ発表される。もっとも、日本サイドでは日銀の追加緩和への期待感も盛り上がっておらず「ドル/円はもっぱら、円要因で動いていないため、経済指標も料視されにくい」(国内証券)という。 波乱要因として、不安定な相場が継続している中国株の動向も注目されそうだ。「利下げを行ったにもかかわらず、上海株は軟調になっている。ギリシャ情勢が不透明な中、中国経済もおかしくなれば、悪いムードが出てくる可能性もあるので注意したい」(別の国内金融機関)という。 (為替マーケットチーム) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKCN0PD0IT20150703
オピニオン:ギリシャだけではない円高要因=中窪文男氏 2015年 07月 3日 19:23 JST 中窪文男 UBS証券ウェルス・マネジメント本部 最高投資責任者(CIO) [東京 3日] - ドル円相場が再び狭いレンジ内取引の様相を呈している。ギリシャ問題の紛糾、中国経済の失速リスク、米国の利上げ時期、日本の経常黒字拡大など、入り乱れる変動要因をどう読み解けばよいのか。 UBS証券ウェルス・マネジメント本部のチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO、最高投資責任者)ジャパン、中窪文男氏に目先と中長期の相場見通しを聞いた。同氏の見解は以下の通り。 <当面は120―125円のレンジ相場か> 6月初旬に13年ぶりの高値となる125円台後半まで上昇したドル円相場は、同月10日の黒田日銀総裁による円安けん制発言を受けて急落し、その後122―124円のレンジで推移している。今後3カ月先から6カ月先を見通せば、やや円安方向に戻す可能性はあるものの、基本的には引き続きレンジ相場(120―125円)となる可能性が高いだろう。 ただし目先では、円高方向へのオーバーシュート(行き過ぎた変動)には特に注意が必要だ。最大の懸念は、言わずもがな、リスクオフの円高を加速させかねないギリシャ債務問題の行方である。同国がデフォルト(債務不履行)の末に、ユーロ圏からの離脱を選ぶことにでもなれば、120円割れを引き起こす可能性も否めない。 正直なところ、ギリシャ債務問題は現時点では着地点を見通しにくい。ギリシャが事実上デフォルト状態にあることは明白だが、同国が支払いを遅延した国際通貨基金(IMF)向け債務は、文字通り公的機関に対するものであり、民間の債権者に対して即座に影響が広がるわけではない。その意味で、注目すべきは今後順次支払期限を迎える民間向け債務であり、それまでに金融支援について何らかの合意がなされるかどうかだろう。 ちなみに、民間からの債務は20%程度と金額としては小さいものであり、その約半分(10%程度)はギリシャ国内からと見られており、デフォルト自体の波紋はそれほど大きくはないと思われる。だが、仮にギリシャのユーロ圏離脱シナリオに急展開した場合、リスクオフの程度が増幅されないか、気がかりだ。 <中国資産バブル崩壊の可能性は> もう1つ大きなリスクオフの潜在的材料と言えば、中国の経済情勢だ。米利上げの後ずれリスクも確かに円高リスクの1つだが、米経済の足腰はしっかりしており、年内の利上げ実施は固いと見ている。むしろ心配すべきは、中国の資産バブルが崩壊し、同国経済がハードランディングするシナリオだろう。 実際、中国ではこのところ、理財商品市場の混乱が進み、不動産市況も厳しさを増し、さらに株価も大きく下げている。何らかの材料をきっかけに、投資家のパニックが引き起こされ、逆資産効果で成長率が政府目標の7%前後を大きく下回るようなハードランディングのシナリオも、10%程度あり得る状況になっている。 むろん、中国はハードランディングを避けるため、昨年11月以来、政策金利と預金準備率の引き下げを繰り返しており、6月27日にも実施した。今後も緩和的な金融政策を持続するだろう。また、市場の動揺が激しくなれば、構造改革の手綱を緩めるなどして景気刺激策を優先するものと思われる。ただ、中国経済は明らかに変調をきたしており、今後の動向には細心の注意が必要だ。 そのほかにも、ロシア・ウクライナ、中東情勢など、円高を招きかねないリスクオフの芽は枚挙にいとまがない。大幅な円高を招いた2008年のリーマンショックもそうだったが、ブラックスワン(予測できない極端な出来事)は意外なところに潜んでいるものだ。 <実需は来年の円高シフトを示唆> もっとも、上記のようなリスクオフが起こらずとも、1年程度のスパンで見れば、1ドル=120円程度への円高が進む可能性は高いと考える。最大の理由は、予想を上回る経常収支の黒字拡大ペースだ。 日本の経常黒字は4月までの累計で約5.6兆円と、すでに昨年1年間の2.6兆円 を大きく上回っている。特に注目されるのが、旅行収支の黒字拡大だ。むろん、急激な経常収支改善をもたらした最大の要因は、円安を受けた配当収入増などによる所得収支の黒字拡大や、原油安効果なども加わって進んだ貿易赤字の改善だが、ここにきて旅行収支の寄与度も大きくなっている。円安を背景に海外からの旅行客が増えて、4月の旅行収支は1334億円の黒字となり、単月で過去最大となった。 政府は、訪日外国人旅行者数について、年間2000万人の早期実現、2030年3000万人の目標(2014年実績は約1341万人)を打ち出しており、 計画通りに進めば、インバウンド消費(訪日外国人観光客による消費)がさらに盛り上がり、経常黒字増大に寄与することになろう。こうした実需面からの円買い圧力は、短期で相場を動かすものではないが、長期では確実に円高方向に効いてくるものと思われる。 <125円超は「悪い円安」の入り口> では、逆に円安方向にオーバーシュートする可能性はないのだろうか。年内にあるとすれば、引き金は日銀の追加金融緩和だろう。 市場では現在、日銀の追加緩和は遠のいたと見られている。先述した黒田総裁発言が示すように、当局者の間で、行き過ぎた円安に対する懸念が高まっていると考えられているためだ。こうしたムードの中で追加緩和が行われれば、文字通りサプライズであり、一時的には円安方向へのオーバーシュートを引き起こす可能性があろう。 また、より長期で見た場合、「悪い円安(=悪いインフレ)」となるリスクにも引き続き注意が必要だ。労働力人口が減り続けている日本の場合、需要が大きく伸びてモノの値段が上がるインフレシナリオは、なかなか描きにくい。むしろ、マネー供給が増えることに伴って、通貨価値の低下とともに進むインフレとなる可能性が高い。 それでも企業収益増やインバウンド消費拡大をもたらす安倍政権の円安戦略は、日本経済を引き上げるのに大きな役割を果たしたのは事実ではあるが、これ以上円安方向にオーバーシュートすることも別の意味での大きなリスクをはらんでいる。今の水準は、実質実効レートで見れば、すでに約40年前に変動相場制が始まって以来の安値になっている。物価を加味した上で相当な円安であり、輸入企業や中小企業にとっては、経営上かなりきつい水準であるはずだ。 怖いのは、125円を大きく超えてくると、チャート的にもドル円の天井がない点だ。振り返れば、名目ベースで85%という急激なドル高円安が進んだ1990年代後半当時、私は為替のトレーダーだったが、2日連続で10円程度円高になったこともあった。チャート上の抵抗線がないと、勢いがついて、振り抜ける可能性がある。その意味で、125―130円近辺は危険地帯だ。 恐らく最近の円安はスピードが速すぎると、政府も日銀関係者も懸念を共有しているはずであり、今後も125円を大きく超えるようなことがあれば、けん制に入ってくるのではないか。まずは口先介入、そして実弾すなわち円買い介入もあり得るだろう。 幸いにして、日本には外貨準備が百数十兆円あり、そのほとんどが米国債で運用されているので、相当な介入余地がある。また、円買いドル売り介入は、行き過ぎたドル高による景気冷え込みリスクを懸念する米国からも賛同され、協調介入の可能性もあるだろう。 ただし、過去の経験則から言って、実弾介入は、初回こそ市場をびっくりさせて効果を発揮するが、2回目以降はあまり効かなくなる。その意味でも、長期的に最も有効な手法は、財政への懸念という「悪い円安」の芽をしっかりと摘んでいくことだ。 *中窪文男氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部のチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO、最高投資責任者)ジャパン。日本生命、ブラックロックなどを経て、2014年6月より現職。京都大学経済学博士。一橋大学金融工学・経営学修士。 *本稿は、中窪文男氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて構成されています。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKCN0PD0MW20150703 焦点:激論の末の「骨太」、首相は成長優先 財政再建失敗リスクも 2015年 07月 3日 15:47 JST 7月3日、激しい攻防が水面下で展開された安倍晋三政権の財政再建への指針「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」。財務省と内閣府の対立が表面化したが、「第三者」による瀬戸際の仲裁で異例の決着をみた。ただ、安倍首相の本音は「成長優先」にあり、外的な経済ショックで成長がとん挫すれば、財政再建が失敗するリスクも内包する。写真は、安倍首相、5月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai) 1 of 1[Full Size] トップニュース ユーロ圏総合PMI改定値、6月は4年ぶり高水準 ギリシャ国民投票の「問い」、法律上も事実上も無効=欧州委員会 来週の日本株は戻り試す、ギリシャ国民投票通過し国内の好実態評価 マレーシア首相事務所、政府機関などからの資金提供報道を否定 [東京 3日 ロイター] - 激しい攻防が水面下で展開された安倍晋三政権の財政再建への指針「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」。財務省と内閣府の対立が表面化したが、「第三者」による瀬戸際の仲裁で異例の決着をみた。ただ、安倍首相の本音は「成長優先」にあり、外的な経済ショックで成長がとん挫すれば、財政再建が失敗するリスクも内包する。 安倍首相のリーダーシップが問われる局面が、いずれやって来る。 <首相の投げた一石> 6月19日午後、首相官邸の執務室は重苦しい雰囲気に包まれた。「調整がまだ、ついていません」──。財務省幹部が安倍首相に提示した資料には、もとの原稿に訂正線を入れて上書きする「見え消し」の箇所がいくつも残っていた。 財政再建の道筋を明記する「骨太の方針」は、3日後の22日の経済財政諮問会議で最終案が提示される予定だったが、期限通りの取りまとめは、ほぼ絶望的にみえた。歳出をめぐる財務省と内閣府の事務方レベルの調整が、暗礁に乗り上げかけていたからだ。 その日、麻生太郎・副総理兼財務金融担当相と甘利明・経済財政担当相に順次、会っていた安倍晋三首相が投げかけた一石が、関係者の予想を超えて波紋を広げることになった。「とにかく(22日の)諮問会議までに、よく調整するように」と、それぞれの会合で指示を出した。 <第三者の調整案> 複数の政府・与党筋によると、財務省でも内閣府でもない官邸に太いパイプを持つ政府関係者が「見るに見かねて」両者の間に入り、双方が合意できるギリギリの調整案を作成したという。 この調整案を手に甘利経財相が政府内の枢要な関係者と連絡を取り、精力的に調整を進めたという。 官邸での会議からわずか1日後の20日、骨太方針の政府原案が出来上がった。 その内容は、歳出に目安を新設し、過去3年間の実績を脚注に明示する一方、2018年度の歳出の上限は示さず、内閣府がこだわった「経済・物価動向等を踏まえ」という文言も盛り込まれる構成だった。 ある経済官庁幹部が語った「美しい着地点だった」との表現は、関係者全員の顔を立てたという「霞が関文学」と言える。 <首相周辺、歳出に縛りかけず> だが、安倍首相とその周辺は、今回の骨太方針の決着について、ある政治的な意味を見出している。首相周辺の関係者の1人は、目安の1.6兆円について「よく読めばわかる。1.6兆円などはあくまで脚注になっていて、本文に入っていない。それがポイント。何も縛らないようになっている」と言い切った。 首相に近い政府関係者は、19日の段階で「安倍首相から、将来の歳出ペースに縛りをかけるなと言われた。骨太の表現は、その首相の意向に沿っている」と述べた。 さらにその関係者は「成長に伴う歳出に縛りをかけると、かえって成長を抑制することになるというのが、首相官邸の意向だ」と語る。 実際、14年12月下旬の経済財政諮問会議で、安倍首相は「基礎的財政収支の黒字化へのスピードをただ単に上げていこうとした結果、成長が止まってマイナス成長になれば、むしろ債務残高とGDPとの関係においては、悪化していくことになる」と発言していた。 <二階ペーパーの波紋> 歳出規模が税収の2倍にも膨れ上がっている国は、主要7カ国(G7)で日本しかない。国際通貨基金(IMF)への返済が遅滞し、事実上のデフォルト状態に陥っているギリシャでさえ、単年度の歳出と歳入の規模は均衡状態にある。 だが、政府・与党内には、経済は生き物であり、単年度の歳出と歳入を単純にバランスさせる考え方は、逆に財政再建を遠ざけるという考え方を支持する声が多かった。 今年1月、「基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)目標は、債務対GDP比(名目)を悪化させている」と題した藤井聡・京大教授の資料に、自民党の二階俊博総務会長は思わず、うなった。全10ページにおよぶ資料は「自由民主党政務調査会・国土強靭化総合調査会会長、二階俊博」と記名が変わり、名実ともに「二階ペーパー」となった。 波紋は早速、政府部内に広がる。「官邸に近い二階さんがそういうなら、総理は、本当はPB目標なんて入れたくないのではないか」、「解散宣言でのスピーチをよくよく聞けば、財政健全化目標の堅持と声高に言うものの、PB黒字化の堅持とは言っていない」との声が漏れ始めた。 2月12日の経済財政諮問会議に提出した民間議員のペーパでは、「黒字化」の3文字が消え、昨年までPB黒字化の後に活用するとされていた「債務残高GDP比の安定的な引き下げ」の目標が、「また」という接続で並列的な存在に格上げされた。 さすがに「黒字化」が消えてしまったことに対しては、首相の周辺からも「昨年11月の消費税引き上げ延期の際の首相の公約を反古(ほご)にしかねない」との批判が出て、5月12日の骨太の論点整理の際に復活した。 <稲田政調会長の台頭> この間、政府・与党内で存在感を着々と増してきた幹部がいた。自民党の稲田朋美政調会長だ。 6月9日、自民党特命委員会に、諮問会議民間議員の高橋進・日本総研理事長を呼びつけると、こう迫った。「歳出の目安を設けないというのは、安倍政権の過去3年の取り組みを否定してのことか」。一気呵成(かせい)にたたみかけると、高橋氏は「そこに異論はない」と答えた。 安倍政権は、過去3年に社会保障費の増加分を1.5兆円程度に抑えており、提言には、これまでの取り組みを継続するとの表現を盛り込む方向で調整が進んでいた。 高橋氏が改革の継続を追認したことで、特命委は勢いを増す。歳出の目安が明記された提言は、自民党総務会で了承され、党の「お墨付き」を得た。歳出目標を骨太の方針に明記する可能性が、その段階では高まったようにみえた。 だが、最終的な決着は、1.6兆円は目安となって、脚注に書き込まれるということになった。先の首相周辺の関係者は「やはり成長を前面に出すかたちになった。安倍首相、菅官房長官、甘利経財相の思いがあるのだろう。稲田政調会長もその点は理解されているだろう」と解説する。 <諮問会議弱体化の声> しかし、今回の骨太の方針では、高い経済成長による税収増に「賭け」、将来の財政危機リスクが高まりかねないとの批判もある。その原因は、経済財政諮問会議の弱体化にあるとみているのが、財政問題に詳しい明治大学の田中秀明教授だ。 「財政再建をめぐる安倍首相の本気度が伝わらず、諮問会議ではおざなりの議論しかできなかった。財務省と内閣府も、幹部は事実上、官邸に人事を握られており、どうしても『政治迎合的』になってしまう。これでは諮問会議の弱体化もやむを得ない」と語る。 日本の財政再建の道のりを振り返ると、財政最優先を掲げる官僚や学者からは、「失敗の連続」という評価が出ている。 1997年に消費税率を5%に引き上げた橋本龍太郎政権は、財政構造改革法で赤字国債からの脱却を図ったが、凍結を余儀なくされた。 2006年の小泉純一郎政権は、PBを黒字化するため、社会保障費を5年間で1.1兆円削減するとぶち上げたが、08年のリーマン危機もあってとん挫した。 一方、安倍首相の提唱するアベノミクスを支持する学者らからは、歳出削減ばかりに目が行き、経済成長をなおざりにし、成長を阻害するデフレの芽を摘まずにきたことが、財政事情を一層悪化させたとの指摘が出ている。 <底流にある2つの主張の対立> 今回の骨太の方針をめぐる政府部内での「論争」は、その延長線上にあった。その結果、「ある種の政治的な妥協が計られた」(先の首相周辺関係者)。 20年度にPB赤字を解消するため、18年度までの集中改革期間に国内総生産(GDP)比の赤字を1%程度にする中間目標を設け、高いハードルとされた歳出の目安も明記した。 同時に実質2%、名目3%超の高い経済成長率を見込み、後発医薬品の普及などの歳出抑制に着実に取り組まなければ、20年度のPB黒字化達成への道筋は描けない。 今後、諮問会議の下に、財政健全化計画の進ちょくを点検するための専門調査会が設置され、社会保障など分野ごとに改革工程表や数値目標を定める。 安倍首相の下で、諮問会議や専門調査会が、この計画をどれだけ軌道に乗せられるのか。実行力が問われるのはこれからだ。 (梅川崇、吉川裕子、中川泉 取材協力:伊藤純夫、竹本能文 編集:田巻一彦、山口貴也) おすすめ記事 脳を食した部族の研究、難病解明のヒントに 2015年 06月 11日 コラム:南シナ海めぐる米国の「危険な賭け」 2015年 05月 22日 ギリシャの要求、ユーログループ拒否=フィンランド財務相 2015年 07月 01日 米が主張撤回しなければ戦争も、中国国営紙が南シナ海問題で警告 2015年 05月 25日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PD0J720150703?sp=true |