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長期金利上昇は景気回復の表れと言えるのか? 日本の金利上昇の背景にギリシャの財政破綻
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44190
2015.7.2 鷲尾 香一 JBpress
主要国の長期金利に微妙な変化が表れている。不安定な動きとともに、ジリジリと上昇し始めているのだ。
こうした長期金利の上昇は、景気回復の動きを背景としていると捉えられている。しかし、日米欧の長期金利の上昇は、本当に景気回復を背景としたものなのだろうか。
■米国、ドイツで金利が急上昇
米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)が年内に利上げに踏み切る可能性が高く、量的緩和政策終了の先行きが見えない欧州や日本と違い、「利上げ」という新しいステージに向かい、景気回復基調を背景に長期金利が上昇しやすい環境になっている。
この長期金利の上昇に警鐘を鳴らしたのは、イエレンFRB議長だった。5月6日の講演で、「初回の利上げを契機に、債券利回りは急激に上昇するかもしれない。こうした現象は2013年の『テーパータントラム』でも見られ、金利は非常に大きく上昇した」と金利上昇リスクを指摘した。
「タントラム」とは「癇癪(かんしゃく)を破裂させること」で、量的緩和の縮小・停止(テーパー)を契機に長期金利が急上昇することを指している。2013年にはバーナンキ前FRB議長による量的緩和の縮小・停止発言を契機に「テーパータントラム」が発生した。
実際に、米国10年債利回りは今年4月初旬には1.9%程度の水準にあったが、その後、急激に上昇を始め、6月27日には2.487%まで上昇した。
欧州経済の中心を担うドイツでは、10年国債利回りが不安定な動きとなっている。4月17日には0.049%だった10年債利回りは、その後、急激に上昇して6月10日には一時1%を超えるまで上昇した。
ドイツの金利上昇の要因としては、欧州経済が立ち直りの兆しを見せており、中でもドイツ経済が好調であること、あるいは大口機関投資家の債券ポジションの変更などが挙げられている。
しかし、ドイツ10年債利回りの上昇は、本当に経済の好調さを背景にしたものだけだったのだろうか。ギリシャの財政問題は影響していなかったのか。確かに、同じユーロ加盟国でも、ギリシャの財政危機を直接、ドイツに結び付けるものはない。だが、各国の長期金利の動きはある程度リンクしており、ギリシャの10年債の価格下落(金利の上昇)がドイツの金利上昇にまったく影響がなかったということは考えづらい。
■ギリシャの財政問題と日本の長期金利動向
では、日本の長期金利動向はどうなのか。
10年国債見回りは、4月24日の0.292%から6月11日には0.545%まで上昇した。この長期金利の上昇を市場関係者(特に株式市場関係者)は、景気回復の現れと捉える向きが多い。また、米国債やドイツ債の上昇に連動した動きと見る向きも多い。
しかし、本当にそうなのであろうか。
6月29日、日経平均株価は一時、前週末比600円を超える急落となり、終値ベースでも前週末比596円安と今年最大の下げ幅を記録した。27日にEU(欧州連合)とギリシャの支援策を巡る交渉が決裂、ギリシャのデフォルト(債務不履行)懸念が急速に現実味を帯びたことが背景だ。一方で、国債は買われて長期金利は低下した。
これは、株式というリスク商品を売って、リスクの低い国債を買うというリスク回避の行動でしかない。背景に、日本国債がギリシャ国債と同様に暴落する不安心理があることは否定できない。
ユーロ加盟国の財政基準は、財政赤字がGDP(国内総生産)比で3%以内、政府債務残高がGDP比で60%以内である。ギリシャが最初に財政問題が表面化した2009年時は、財政赤字がGDP比12.7%、政府債務残高がGDP比113%だった。ここからギリシャの財政危機はスタートする。
同じ2009年の日本の財政赤字はGDP比8.9%、政府債務残高はGDP比188.7%。2015年度末には財政赤字はGDP比6.6%、政府債務残高はGDP比233.8%になると予想されている。
確かに、日本には2014年3月末で1700兆円を超える個人金融資産があり、純債務は赤字ではないことは重々承知している。しかし、日本の財政が際立って悪いことは、ギリシャの政府債務残高と比較しても明らか。日本の長期金利の上昇は、ギリシャの財政問題が“合わせ鏡”のように反映されたものである可能性は否定できない。
■「本当の狼」を警戒せよ
自民党の「財政再建に関する特命委員会」の委員長を務める稲田朋美政調会長は、6月17日の講演で、財政健全化が遅れた場合の影響について、「低金利がいつまで続くかという保証はない。(政府目標である)2020年度までに基礎的財政収支の黒字化をしないと、いつかは金利が急騰し破産状態になることがありうる」と発言している。
こうした財政危機論を出すと、市場関係者(特に株式市場関係者)から「オオカミ少年」という蔑称をいただく。これまでにも、財政危機や国債暴落という問題や可能性を指摘し、その度に実際に暴落が起きていない、長期金利が急騰してない、財政破綻をしてないから、「オオカミ少年」と言われる。
しかし、思い出していただきたい。イソップ寓話の「狼と羊飼い」では、最後には本当に狼が現れ、村の羊を全て食べてしまうのだ。
2月12日、政府の経済財政諮問会議で黒田東彦日銀総裁は、「ここからの発言はオフレコとして、議事録から外してほしい」とした上で、「財政の信認がこれ以上揺らげば、金利が急騰し、国債価格に影響が出るリスクがある」と財政健全化を訴えた。
日銀は異次元緩和で国債を大量に保有している。国債価格の暴落が起きれば、日銀のバランスシートは崩壊する。本当に狼が表れてしまうのをもっとも警戒しているのは、「異次元緩和の張本人」である日銀の黒田東彦総裁かも知れない。
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