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運命を決する国民投票を日曜に控え、賛成派と反対派がデモを行っている〔AFPBB News〕
ギリシャの有権者が迫られる難しい選択 私がギリシャ人だったら、こう投票する――マーティン・ウルフ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44204
2015.7.1 Financial Times JBpress
(2015年7月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
もし筆者がギリシャ人だったら、ユーロ圏の経済プログラムに関する日曜日の国民投票でどちらに投票するだろうか。その答えは、残念ながら、よく分からない。
ギリシャは独り立ちしてうまくやっていけると思えば、きっとプログラムに反対票を投じるだろう。
しかし、そのような確信は持てないかもしれない。ギリシャが通貨主権を賢明に行使できるのであれば、恐らく現在のような状況には陥っていないからだ。
逆に、もしプログラムに賛成票を投じるとしたら、そのプログラムがまだ交渉のテーブルに載っているかどうか分からないまま投じることになる。ユーロ圏はもう載っていないと言っているが、これははったりかもしれない。
分かっているのは、もし投票で「イエス」の方が多くなったら、ギリシャは数年に及ぶ支出削減と不況の時代に直面するかもしれないということだ。だが、それでもユーロ圏離脱後のカオスよりはましかもしれない。
また、もし筆者がギリシャ人だったら、折衷案はないのかときっと思うことだろう。そのため、たとえ政府がデフォルト(債務不履行)してもギリシャがユーロ圏にとどまることはあり得ると見る人もいる。この見方も、「ノー」に投票する根拠になるかもしれない。
■馬鹿げた急進的左翼主義と独善的な姿勢
どちらに投票するかを決める際に、筆者は恐らく、ギリシャ政府のばかげた急進的左翼主義とほかのユーロ圏諸国の独善的な姿勢の両方について不満を口にすることだろう。今回の長い物語では、評価できる人物が1人も見当たらないのだ。
急進左派連合(SYRIZA)政権は、ギリシャの政治形態や経済の諸問題を解決するかもしれない、信用できる改革プログラムを提示できておらず、大衆迎合的な政治をしている。要するに、ひどい時代が生み出したひどい政権なのだ。
しかし、この結果についてはユーロ圏にもかなりの非がある。ドイツの言葉遣いからは、同国が20世紀にデフォルトを繰り返していたことなどみじんも感じられない。
また、英国を含めて考えても、あれほどの恐慌に陥りながら政治が無傷でいられる民主主義国家は存在しない。
思えば、ヒトラーが権力を握ったのは、現在のようなレベルの不況にドイツが前回見舞われた時だった。
確かに、SYRIZAは幼稚で無責任なギリシャ政治の産物だ。しかし、これは2010年以降に債権者たちが犯してきた失敗の結果でもある。特に、ギリシャ国民を犠牲にして、ギリシャにカネを貸し付けた愚かな民間債権者を救済することに強くこだわった結果でもあるのだ。
とはいえ、今となっては、これらの過ちはすべて取り返しのつかない過去の話である。ギリシャ人は未来に目を向けなければならない。
■心臓発作に襲われたばかりの人に断食療法?
もっとも、未来に目を向けても思ったような効果は得られない。支援の延長は、景気回復への出口になりそうなものをもたらさなかった。逆に、あまりにも大きな過剰債務を残し、あまりにも短い期間での緊縮財政を要求した(後者の方が重要だ)。
最近の後戻りの様子を見る限り、ギリシャはプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の対国内総生産(GDP)比を今年の0%に近い状態から2018年までに3.5%の黒字にするよう求められているようだ。これを達成するには、GDP比で7%に相当する資金を調達する一方で経済規模を10%縮小させるような財政政策手段が必要になるかもしれない。
いくら太りすぎだと言っても、心臓発作に襲われたばかりの人に断食療法を施したりはしない。ギリシャに必要なのは経済成長だ。実際、ギリシャの公的債務の対GDP比が急上昇した理由は、景気の悪化で説明がつく。
ユーロ圏がギリシャに示したプログラムでは、経済成長が軌道に乗るまで追加的な財政緊縮を行わないことにするべきだった。経済成長を促進する改革に力を入れ、改革が成し遂げられたら債務を減免すると約束すべきだった。
では、もし筆者がギリシャ人で、このプログラムが非常に悪い内容だったら、筆者はリスク覚悟で「ノー」に投票すべきなのだろうか。
恐らく筆者はその決断にあたり、投票の結果が「ノー」になったら何が起こるかをしっかり考えなければならない。
■「ノー」と「イエス」がもたらす結果
短期的にどうなるかは明白である。欧州中央銀行(ECB)はすでにギリシャの銀行への緊急支援を縮小し、預金の引き出しに厳しい限度が設けられる原因を作った。この行動については、大きな間違いだという声もあれば、国民投票で有権者に「イエス」と書くよう促すための措置だとする見方もある。
国民投票の結果が「イエス」と出れば、ECBは方針を転換して銀行への支援を拡大するかもしれない。しかし、ギリシャの現政権が居残る場合、ユーロ圏の支援プログラムが無事再開されることは考えにくい。
「ノー」に投票するよう呼びかけた以上、現政権は債権者から全く信頼されなくなっているに違いない。従って新しい政権が誕生しなければならないだろうし、その新政権はユーロ圏の提案に全面的に同意しなければならなくなるだろう。
ということは、国民投票で「イエス」という結果が出れば、不愉快なうえに不透明でもあるが少なくとも想像のつく未来がもたらされることになる。
ギリシャ国旗を背景に撮影された1ユーロ硬貨(右)とギリシャの旧ドラクマ硬貨〔AFPBB News〕
今度は「ノー」という結果について考えてみよう。その場合は2つの展開が考えられる。
1つは、正真正銘のユーロ圏離脱である。ギリシャ政府は新しい通貨を導入し、ギリシャの法律に基づく契約すべてを新通貨建てに切り替える。
新通貨のユーロに対する価値は、間違いなく急落する。どの程度下落するかは、政府が作る政策と制度(特に中央銀行の統治)次第だろう。
最悪の事態を恐れる人もいるかもしれないが、それももっともだろう。ギリシャは「ユーロ化」された状態が続くと述べる人すらいる。もしそうなったら、新通貨の対外価値が急落してもギリシャの競争力はほとんど向上しないかもしれない。筆者自身はこれよりも楽観的で、競争力は大幅に改善するだろうと考えている。
考えられる2つ目の展開は、政府が支払い不能になりながらもユーロ圏に残留するというものだ。
論理的にはあり得ることだ。銀行システムについては、保険がかかっていない負債を株式に転換することで資本を増強できるだろう。技術的には実行可能だと思われる。ただ、民間の富には大きな負のショックをもたらすだろう。
すると、ECBが緊急融資を再開するのか、するとしたらどの程度の規模になるのかが大きな問題になる。筆者には、これは魅力的な選択肢に見えない。政府の全面的なデフォルトという傷ができるところに、通貨同盟の一員になることの問題をすべて背負うことになるからだ。それなら、「イエス」に1票を投じる方が間違いなくいいだろう。
■悪魔か深くて青い海か
つまり、もし筆者がギリシャの有権者だったら、悪魔か深くて青い海のどちらかを選ぶことになる。
悪魔とは、ユーロ圏からの際限ない財政緊縮要求だ。ギリシャ国民が先の総選挙で選んだ方針とは逆の道だ。深くて青い海とは、ギリシャ国債のデフォルトと通貨主権である。
もし筆者がアレクシス・チプラス首相だったら、際限ない救済と若干の条件という第3の道があると考える。しかし首相は、惑わされているに違いない。では、筆者ならどちらを選ぶだろうか。慎重を期すなら、よく知っている悪魔についていきたくなるところだ。しかしここは、海に飛び込むリスクを取る方がよいのかもしれない。
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