●6月調査日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DIが3月調査の+12を3ポイント上回る+15になった。但し内訳をみると、素材業種は3月調査と同じ+8、加工業種は3月調査から2ポイント改善の+17である。内訳の動きの方がやや弱めなのは、四捨五入の関係で、3月調査の大企業・製造業の業況判断DIが+12.3か+12.4と+13に近い数字だったからだ。9期連続で「良い」超を意味するプラスであり、8期連続で2ケタのプラスである。
●今回6月調査の調査期間は5月27日〜6月30日だ。
●6月調査の大企業・製造業の業況判断DI+15は3月調査の「先行き」見通しが+10に弱含むとみていたのに反し改善、+10を5ポイント上回る数字になった。足元の景況感が予測より良かったということになり、景気の緩やかな持ち直し状況を裏付ける数字と言える。大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は3月調査では9%だったが、6月調査では7%に低下した。
●大企業・非製造業・業況判断DIでは、6月調査は+23と3月調査の+19から4ポイント改善した。3期連続の改善であり、16期連続のプラスであることは、内需の底堅さを反映し、非製造業は底堅い動きが続いていることを示唆していると言えよう。但し、関連データのロイター短観やQUICK短観では大幅改善だったので、改善幅は小幅で物足りない結果となった。雇用・所得環境が改善していることに加え、訪日外国人のインバウンド消費の増加などがプラスに働いていよう。小売は3月調査の+5から今回6月調査では+22へと17ポイント改善した。
●6月調査の大企業・非製造業・業況判断DI+23は、3月調査の「先行き」+17を6ポイント上回る数字で、景況感が思ったより良かったことを示唆している。大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は3月調査では6%だったが、6月調査では2ポイント減って4%になった。
●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIをみると、+16と「最近」の+15から1ポイントの改善が見込まれている。「悪い」と答えた割合は「最近」では7%だが、「先行き」では3ポイント減って4%になる。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では22%、「先行き」では20%になるが、変化幅が2ポイント減にとどまる。このためDIは改善見通しになる。
●大企業・非製造業では「先行き」は+21と「最近」の+23から2ポイントの悪化が見込まれている。「最近」から「先行き」への悪化予想幅は3月調査と一緒だ。「悪い」と答えた割合は「最近」では4%だが、「先行き」では1ポイント減って3%になる。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では27%、「先行き」では24%になるが、変化幅が3ポイント減になる。このためDIは悪化見通しになる。小売の「先行き」は+19と「最近」の+22から3ポイント悪化している。エルニーニョ現象が強まっていることから夏物商戦などの不透明さを見込んでいるのだろうか。
●中小企業・製造業の業況判断DIは、昨年9月調査で▲1とマイナスに転じていたが12月調査(新ベース)で+4とプラスに戻り、3月調査でも+1とプラスを維持していたが、6月調査で0になった。3四半期ぶりに非・正となるが、これは製造工業生産予測指数で延長すると鉱工業生産指数が3四半期ぶりに前期比減少見込みであることと整合的だろう。3月調査の「先行き」0と同じになった。足元の景況感は予測通りやや鈍化したということになる。
●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、13年12月調査で+4と92年2月の+5以来21年10カ月ぶりのプラスになり14年6月調査まで3期連続プラスを維持した後14年9月調査は0になった。しかし、12月調査(新ベース)で+1とプラスに戻り、3月調査は+3、今回6月調査では+4とプラス継続となった。3月調査時点の「先行き」▲1を5ポイント上回った。中小企業・非製造業は、足元の景況感が予測より良かったということになる。雇用吸収力がある業種が多い、非製造業のDIが久し振りにプラス継続となっていることは、5月分の有効求人倍率が1.19倍と92年3月分以来23年2カ月ぶりの高水準になったことと整合的だろう。
●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年6月調査では▲2まで改善した。そして13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになった。14年3月調査では91年11月の+12以来の水準である+12まで改善していた。消費税率引き上げにより、6月調査・9月調査で悪化し9月調査で+4になっていたが、12月調査(新ベース)で3期ぶりに改善し+6、3月調査で+7と2期連続改善していた。今回6月調査では+7と前回と同水準にとどまった。全規模・全産業という全体の景況感は8期連続してプラスの水準だ。非製造業は改善基調だが、製造業は大企業では改善したものの、中堅・中小企業ではやや悪化したため、全規模・全産業という全体の景況感は横ばいにとどまった。
●中小企業・製造業の「先行き」業況判断は0と「最近」と同水準の見通しである。中小企業・非製造業は+1と「最近」より3ポイントの悪化見通しである。中小企業、特に非製造業では比較的「先行き」を慎重に見る傾向があることを考慮すれば、次回9月調査の「最近」がそこまで悪くなかったとなる可能性が大きいのではないかとみられる。
●また、全規模・全産業の「先行き」業況判断は+7と、「最近」と同水準の見通しである。4〜6月期の鉱工業生産指数(前期比減少?)、実質GDP(前期比年率0%台?)など目先発表される主要経済指標には弱いものも予測され、企業の景気の先行きには不透明感が強いのであろう。但し、景気の好循環が再認識されれば、先行き、業況判断の持ち直しが期待されよう。
●今回6月調査では、2015年度の想定為替レートは1ドル=115円62銭と3月調査の1ドル=111円81銭よりは円安になったものの、現在の120円台前半の水準との乖離は大きく、輸出企業の景況感にとってプラス材料になる可能性が大きいだろう。
●大企業・製造業の仕入れ価格DIは6月調査では+14になった。3月調査の+11から3ポイント上昇した。大企業・非製造業の仕入れ価格DIは6月調査では+20で3月調査の+18から2ポイント上昇した。また中小企業・製造業の仕入れ価格DIは+35となった。3月調査は+33であったので2ポイントの上昇だ。中小企業・非製造業の仕入れ価格DIは6月調査では+25で3月調査の+24から1ポイント上昇した。
●一方、6月調査の販売価格判断DIは、大企業・製造業全体では▲4と3月調査の▲6からは2ポイント上昇、中小企業・製造業では▲4でこちらも3月調査の▲6からは2ポイント上昇した。大企業・非製造業では+7で3月調査と同じ。中小企業・非製造業では0と3月調査の▲1からは1ポイントの上昇となった。販売価格判断DI、仕入れ価格DIとも概ね「上昇」超幅が緩やかな拡大傾向にありそうで、デフレ脱却方向の動きが出ていると言えよう。
●6月調査の2014年度の全産業・全規模の設備投資は前年度比+4.3%であった。2015年度の全産業・設備投資計画は前年度比+3.4%でプラスの伸びが続く見込みである。
●6月調査の2015年度の大企業の設備投資計画は前年度比+9.3%である。製造業は+18.7%と2桁の高い伸び率であり、非製造業は+4.7%である。中小企業の設備投資計画は例年3月調査が弱く、その後は調査の度に改善していく傾向がある。全産業の設備投資計画は前年度比▲15.7%だ。一方、GDPの設備投資の概念に近いソフトウェアを含み土地投資額を除くベースでは、2015年度は大企業では前年度比+10.3%、中小企業は▲12.1%である。全産業・全規模の設備投資計画は前年度比+5.6%で、2014年度の前年度比+4.6%に続き、しっかりした計画になっている。今後の設備投資動向に期待が持てる数字だ。
●生産・営業用設備判断DIは09年6月調査では、大企業・製造業が38、中小企業・製造業で38と「過剰」超の高水準であった。そこから振れを伴いつつも概ね改善傾向にあり、前回3月調査では各々3、1に低下した。今回6月調査では各々2、2となっている。「先行き」は各々1、0と低下見込みだ。生産・営業用設備判断DIで「過剰」超が0に近い低水準にあることは、企業が設備投資を実施しやすい環境であることを示唆していよう。
●雇用判断DIは09年6月調査では、大企業・全産業が20、中小企業・全産業で23と「過剰」超の高水準であった。大震災の影響など雇用判断が一時的に悪化する局面もあったが、概ね改善基調で推移してきた。前回3月調査では、大企業・全産業は▲10、中小企業・全産業は▲20となった。今回6月調査では、大企業・全産業は▲9、中小企業・全産業は▲16となった。改善一服というかたちになった。「先行き」をみると大企業・全産業は▲10と「最近」比で「不足」超幅はやや拡大、中小企業・全産業は▲21と「最近」比で5ポイント「不足」超幅が拡大する見通しである。雇用の改善基調は総じて先行き継続すると言えよう。
●資金繰り判断DIや金融機関の貸出態度判断DIは、09年6月調査以降、横ばいの時期もあったものの、概ね改善傾向が続いてきた。6月調査では、全規模・全産業で資金繰り判断DIが12で、3月調査比横這いだった。一方、全規模・全産業の金融機関の貸出態度判断DIは20で、こちらも3月調査比横這いだった。総じてみれば、金融環境は概ね良好であると言えよう。
●短観の内容は、日銀がある本石町の発表日の天候に表れる傾向があるが、今回は梅雨といった状況で、全規模・全産業ベースの業況判断は「最近」も「先行き」も同水準となり改善は一服、真夏の太陽のようなかなり明るい数字は大企業の設備投資計画など一部にとどまったかたちだ。但し、緩やかな景気の改善基調は確認できるため、日銀の金融政策にとっては、現状維持の材料と言えよう。
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