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インタビュー:歳出の数値目標、改革の手緩める=諮問会議・高橋氏
2015年 06月 30日 20:29 JST
[東京 30日 ロイター] - 経済財政諮問会議・民間議員の高橋進氏(日本総合研究所理事長)はロイターのインタビューで、30日に閣議決定された政府の「経済・財政再生計画」で歳出の目標設定に異論を唱えたのは、数値目標を設定した途端、歳出の構造改革の手が緩むためだと説明した。
今後の課題では、骨太の方針に沿って、改革工程表とKPI(成果目標)を実行に移せるかだと強調。ここ十数年の中で類をみないほど具体的に書き込んだ社会保障改革について実行できるかは「政権の責任」であり、「諮問会議・民間議員と覚悟と責任が問われることになる」と決意を語った。
10%超への消費税率引き上げの必要性に関しては「消費税の10%(超)だけでなくて、社会保険料の引き上げ、患者の負担増も含め、安易な負担増を先行させれば、歳出改革の取り組みが甘くなる」と、歳出改革の切り込みが先決だとした。
インタビューの概要は以下の通り。
──「経済・財政再生計画」は、2020年度基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化実現に向け、安倍晋三首相が指示した「具体的な計画」となったか。手応えはどうか。
「閣議決定後、間髪いれず専門調査会を立ち上げ、改革工程表・KPI(成果目標)の具体化に着手する。その意味で、具体化はまだこれからやらなければならない課題だ。具体的かどうかより、20年度に向けて、あるいはその先に向けて健全化に取り組む基本方針が確立できた」
──計画全体の実効性は、担保されたとみるか。
「実効性という意味では、18年度に中間目標を掲げ、PBのGDP比マイナス1%を明確にした。かつ、必要なら追加措置を取ることを明記したことが実効性の担保になる」
「このうち歳入について、やるべきことは好循環をできるだけ維持すると同時に、成長戦略を実行していくこと。また、歳出改革を通じて税収を伸ばしていくこと」
「歳出改革は歳出総額やキャップをはめることよりも、歳出の構造を変えることに主眼を置いた」
「従来は、診療報酬を抑えるとか、薬価を抑えるとか、価格のコントロールに主眼があった。ところが長く続けることはできず、後で反動が出てくる。今回は価格もコントロールするが、人々の行動を変えることに取り組み、結果的に量をコントロールできるようにする。それが歳出の抑制につながるという考え方で、歳出改革に実効性を確保しようとした。従来と発想が違う」
「歳出の厳しい枠を設定することが実効性があるかのごとく言われてしまうが、実現する手段がなければ実効性はない」
「また、過去は物価の伸びが低かったために歳出はそれなりに抑制できたが、今後、賃金・物価が上昇するもとで過去と同じ前提で置くことは、実質、相当のマイナスになることを覚悟しなければならない」
「その場合、歳出抑制が経済に悪影響を与える危険性や、厳しいキャップをはめることで、歳出改革の中身の改革がむしろ進まなくなってしまうなどの弊害が生まれることを懸念した」
「この結果、(財務省が主張したような)過去3年間を伸ばすのではなく、経済・物価動向を踏まえるという文言を入れ、そのアローワンスのなかで必要なインセンティブを与えながら、歳出の中身を変えることを主張した」
──歳出の目標設定に異論を唱え続けた。「目安」があるほうが歳出改革に現実味が出るのではないか。
「数字を置いた途端に、歳出をいかに削るかという話しになり、歳出の中身を変えることにつながっていかない。今までも、歳出がなかなか切れない時には、増税をしないと言いながら、実質的に社会保険料の引き上げや患者負担の引き上げといった負担増を織り込んで尻を合わせる動きになっていた。増税あるいは負担増を前提に改革を進めようとした途端に、歳出の切り込みができなくなるのが過去の経験だ」
──今後の課題は何か。
「基本的な方針が定まったので、工程表とKPIを作って実行することができるかどうか。従来の骨太では社会保障改革について、具体的な中身を書き込むことはできなかったが、今回はかなり具体的に書き込むことができた。これをいかに実行していくか。ここに政権の責任がかかっているし、われわれ諮問会議・民間議員の覚悟と責任が問われることになる」
──10%超への消費税引き上げの議論も、将来不可欠だと思う。いつごろ着手できると見るか。
「もちろん、2020年度ではなくて、(団塊世代が後期高齢世代に入る)2025年度や2030年まで見据えて改革を進めなければならない」
「しかし、消費税の10%(超)だけでなくて、社会保険料の引き上げ、患者の負担増も含め、安易な負担増を先行させれば、歳出改革の取り組みが甘くなる。当面は消費税の10%への引き上げを超える負担増は考えるべきではない」
「むしろ歳出改革に注力すべきだ。最後はある程度の増税は不可避としても、このまま負担増を先行させてしまえば20年度以降、とめどない増税になってしまう。それを食い止めるために、3年間の集中期間に歳出改革に取り組むべきだと主張している」
──18年度の中間評価の時点でPB黒字に届かないと見通した場合、歳入改革も俎上(そじょう)にあがる。
「歳出・歳入両面で必要な追加的な措置を取る。その時には歳出改革がある程度効果を挙げていること、見込んでいる税収が上がってくることが前提になる。その両方で赤字幅に届かないのであればということだ」
(吉川裕子 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PA1AM20150630
インタビュー:歳出の「目安」明記で「画餅」回避=土居慶大教授
2015年 06月 30日 20:43 JST
[東京 30日 ロイター] - 土居丈朗・慶應義塾大学教授はロイターのインタビューで、30日に閣議決定された政府の「経済・財政再生計画」について、歳出額に関する「目安」が一切なければ「画餅に帰す恐れがあった」と述べ、目安が記されたことで財政健全化目標の実現に向け、最低限の要件を備えた計画になったとの認識を示した。
中間目標として基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)赤字対GDP(国内総生産)比1%に加えて、歳出額の目標設定を求め、政府に揺さぶりをかけた自民党の財政再建特命委員会(委員長:稲田朋美政調会長)の存在は「財政健全化に現実味を与える最後の砦になった」と評価した。
今後の課題では、2018年度の中間評価の時点で「最大限の歳出改革を行ってもなおPB黒字化にめどが立たなければ、10%超への消費税引き上げも思考停止にならず議論すべきだ」と、さらなる歳入改革の必要性を強調した。
土居氏は、自民党特命委員会にアドバイザーのひとりとして参画。政府・与党の検討作業に深くかかわった同氏に「経済財政再生計画」の評価を聞いた。
インタビューの概要は以下の通り。
──「経済・財政再生計画」は、2020年度PB黒字化実現に向けた「具体的な計画」と評価できるか。
「歳出額に関する『目安』が記されたことで、黒字化実現に向けた最低限の要件を備えた計画になった。歳出額の目安が一切なければ、成長による税収増に依存した計画となり、画餅に帰す恐れがあった」
──計画全体の実効性は、担保されたと見るか。
「歳出改革の継続の必要性を明確にすることで、5月12日諮問会議の麻生財務相提出資料のように、歳出改革によって9.4兆円のPB赤字の大宗は解消可能との道筋をつけたことは大きい」
「成長依存の財政健全化か歳出改革主導の財政健全化か、総論では相違があったが、各論(改革の具体策)では方向性がほぼ一致した点は重要で、後は社会保障改革に真摯に取り組むことで実効性を高めるべきである」
「細部に神を宿し魂を込めて、実を取ることはできた。『検討』が後ろにつかない形で、病床の機能分化・連携を進める、療養病床については入院受療率の地域差縮小を行う、外来医療費についても重複受診・重複投与・重複検査等の適正化を行いつつ地域差の是正を行う、都道府県ごとに医療費の水準や医療の提供に関する目標を設定する医療費適正化計画を策定、都道府県別の一人当たり医療費の差を半減させることを目指す、後発医薬品に係る数量シェアの目標値については平成29年央に70%以上とするとともに平成30年度から平成32年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする、調剤報酬について医薬分業の下での調剤技術料・薬学管理料の妥当性など検証した上で適正化することなどが明記された。これらが閣議決定されるなら大きな意味を持つ」
──決定プロセスで、自民党特命委員会が果たした役割をどのように評価するか。
「空文化しかねない財政健全化計画を、最低限の歯止めを担保した点で他にできない貢献ができたと思う。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)建議でも似たことは提言したが、諮問会議では『のれんに腕押し状態』。財政健全化に現実味を与える最後の砦になった」
──今後の課題は何か。10%超への消費税引き上げの議論は、いつごろ着手できるとみるか。
「成長促進による歳入増が『捕らぬ狸の皮算用』にならないよう、成長戦略を成果が出るように実行しなければならない」
「そのうえで、2018年度の中間評価が2020年度に向けた最後のチャンスになる。2018年は診療報酬・介護報酬の同時改定があり、残り2年の歳出改革の具体策を盛り込めるだけ盛り込まなければならない。その時点で、最大限の歳出改革を行ってもなおPB黒字化に目途が立たなければ、10%超への消費税引き上げも思考停止にならずに議論すべき」
「今回の財政健全化の論議は、残念ながら財政再建志向が弱いレベルの議論から始めざるを得なかった。最初はそもそも基礎的財政収支黒字化という目標自体をやめてはどうかという主張があり、それをねじ伏せたと思えば、今度は歳出額の目標設定はいらないという主張が立ちはだかった。結果的には、これらを辛うじて退けて収めるべきところに何とかたどり着いた」
「本来は、骨太2006の機械的な歳出削減による財政健全化を超えたレベルで、目指すべき社会保障改革の理念を国民と共有しながら、改革の具体策について合意した上で自然増を抑制するという道筋を目指すべきだった」
「社会保障改革の理念については、特命委で提起した『改革5原則』が骨太2015に盛り込まれ喜ばしいところだが、そこにたどり着くまでの緩い議論は、今回限りとすべきだ」
(吉川裕子 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PA1B420150630
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