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ギリシャ問題を受けて6月29日のアジアの株式市場は軒並み下落(ロイター/アフロ)
ギリシャ発の深刻な金融危機は起きない HSBCのグローバル債券運用責任者に聞く
http://toyokeizai.net/articles/-/75118
2015年06月30日 山田 徹也 :週刊東洋経済 副編集長
ギリシャ政府が7月5日に国民投票を行うことを発表し、先行きの市場は不透明感を増している。今年後半には米国の利上げという大きなイベントが控える。債券市場をめぐる波乱要因は絶えない。機関投資家はグローバルな債券市場をどう見通しているのか。HSBCグローバル・アセット・マネジメントのグローバル債券運用責任者、アーンスト・オシアンダー氏に聞いた(インタビューは6月26日に実施)。
■ギリシャ問題の市場への影響は一時的
――目先の注目はギリシャ情勢ですが、どう展望していますか。
いま世界をみたときに2つの大きなイベントが起きている。一つは米国のFFレート(政策金利)の引き上げ、もう一つがギリシャ問題だ。ギリシャは非常に緊急性を もった問題だが、最終的にはギリシャのほうが何らかの妥協をしなければならないのではないだろうか。というのも、ギリシャ国民の大半がユーロ圏にとどまり たいとの意向を持っている。ギリシャ政府はそれに沿った解決策をとらないといけない。
ギリシャとしてはギリギリまで交渉を引き延ばす意図があるかもしれない。6月末にIMFの融資15億ユーロというデットラインがあるが、延期される可能性もある。ベンチマークとして重要なのは、ECB(欧州中央銀行)に対する返済期限である7月20日だ。
――今後、ギリシャ問題がもたらすグローバル債券市場への影響は?
ギリシャ問題の決着の仕方次第では債券市場の反応は違ってくると思う。もしデフォルトなり、ギリシャがユーロ圏を離脱することになれば、短期的には コア債券市場と言われるドイツ国債や米国債にプラス影響が出る。一方、リスクの高い、周辺国であるイタリアやスペイン国債にはネガティブな影響が出てくる と思う。
――2012年までの欧州債務危機のように金融危機が伝播することはないのでしょうか。
スプレッドが拡大したり、ボラティリティが一時的に高まることはあるだろう。ただ、これはあくまでも一時的であって、長く続くものではない。市場は 次第に重要なファンダメンタルズに注目する。忘れてはならないのは、欧州は債務危機の経験から、さまざまな手段を設けていることだ。たとえば、ECBは OMTプログラム(国債買い取り)を用意し、量的緩和を実施し、そのほかにも救済プログラムを設けている。何かが起こったときに、金融資本市場をきちんと コントロールできるような手段を持っている。かつてのような金融危機の再現することはないだろう。一時的にボラティリティが高まっても、事態は十分抑えて いける。
Ernst Osiander ●HSBCグローバル・アセット・マネジメントのグローバル債券運用者。同社には2012年より勤務。1994年よりアセットマネジメント業界にて、債券・クレジット・カレンシー運用に従事。ミュンヘン大学で経済学専攻
――FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げは今年後半と予想されていますが、来年も含め、利上げの道筋をどのように見通していますか。
最初の利上げ時期はデータ次第だ。今年の9月なのか12月なのか、経済指標によってまだ流動的だと思う。それよりも重要なのは、いったん利上げされたとしても、その後の利上げのペースは緩やかで、ゆっくり進んでいくということ。2016年も利上げが続くとみているが、FOMC(米国連邦公開市場委員会)ごとに毎回自動的に利上げされるのではなく、利上げ後、ある一定期間をもって経済動向を評価し、利上げした後でも経済が良好だと判断したら次の利上げに向かうかもしれない。
――過去の利上げ局面とは何がいちばん異なるのでしょうか。
金利をノーマライズ(平常化)するプロセスだと思う。今回はインフレ圧力があって利上げしようとしているのではなく、FRBとしては少し様子見できる余地がある。米国経済は下半期に改善していくと思うが、まだ労働市場でウォーニング(警告)が出ている状況だ。
■イエレン議長は過剰なリスクテイクに警告
――今年5月にイエレン議長が株式市場のバリュエーションに言及しました。バブルの懸念はないのでしょうか。
私はエクイティの専門家でないので慎重にコメントしたいが、一般論として、ほかのリスクの高いアセットと比べ、株式は安くなっていないと思う。イエレン議長は、過剰なリスクテイクに警告を発したのだと思う。
――6月のFOMCで金利の見通し(ドットチャート)が公表されましたが、FRBの委員らの見通しと、マーケットの金利先物の見通しに乖離があります。どう解釈すべきでしょう。
マーケットは米国経済の見方として独自なものを持っている。もしかしたら、FOMCよりも、よりネガティブな見方をしていることが原因かもしれない。FOMCのドットも常に一定ではなく、過去も変わってきた。マーケットはFOMCの見通しとして出ているものを100%正しいと信じていないことが、底流にあるかもしれない。
――米国で利上げが始まると、グローバルなマネーフローに変化が起きるのではないでしょうか。
まず米国の利回りはベアフラット化(金利上昇かつ長短金利差が縮小)する。イールドカーブの3年から5年の部分が利上げ局面でいちばん影響を受ける。最初の利上げ前には、クレジットと新興国市場でボラティリティが少し高まる可能性もある。
――米国経済の成長期待が低下し、長期金利が上がりにくい状況にあるようです。
それも、ある程度は反映されていると思う。2015年第1四半期の米国経済はマイナス成長だった。ただ、利回りでみると、第2四半期以降、経済成長は改善を見込んでいる。インフレ率が低い水準にとどまるなら、利回りはそれほど大きくは上がらないと思う。
■データを見ながら慎重に利上げ
――結局、FFレート(政策金利)は今回の利上げ局面で何%まで上がるのでしょうか。
データによって判断していくのでなかなか難しいが、おそらく過去の局面と比べて低く、3.5%までではないか。
――そうすると、1回の利上げで25ベーシス(0.25%)ずつ上げていっても、かなりの時間がかかります。そこまで景気拡大局面が続くということなのでしょうか。
経済拡大は続くと思っている。FRBとしては、そうした成長を止めるようなことは起こさないという態度だと思う。利上げを行い、経済動向をみて、経済成長が鈍化していると判断すれば利上げを中止し、いったん様子見していくだろう。
――日本では間もなく財政健全化計画がまとまります。
日本が高い債務を抱えているのは周知の事実だ。これに財政的側面から対策をとることはポジティブなこととして注目している。
――日本は過去、何度も財政再建を約束しては反故にする、ということを繰り返してきました。今回も計画という名のつくものが出てはきますが、信用できますか?
私の立場としては、信用しないと申し上げることはやめておく。財政再建策が実行に移されるかどうかは日本経済の経済成長見通しにかかっていると思う。もし経済が成長しているのであれば、財政再建策は実行しやすいだろう。しかし、なかなか経済成長が見込めないと、再建策を実行に移すのは困難だ。財政再建の意思があっても、経済動向によってはアクションをとるには時間がかかると思う。
■量的緩和からどう脱出するのか、議論が必要
――異次元の金融緩和(QQE)によって、日本銀行が日本国債の4分の1を保有しています。中央銀行がこれだけのシェアを保有するのは異様だと思いますが、QQEをどう評価していますか。
ただ、まず認めなければならないのは、日銀が日本国債を買い入れることで成功裏に物価を上げることができたということだ。これは認めないといけない。残念なことに、国外要因である原油安がきたので物価は下がったが、いったん物価が上昇したことは確かだ。日本は長期間デフレ経済だったので、これに真剣に対処しなければならなかった。その意味で日銀が日本国債を買う以外に、方法は非常に限られていたと思う。
――では、QQEの「出口」をどう考えますか?
出口のことを考える前に、はたして追加緩和があるかどうか考えなければならないかもしれない。ただ、FRBなどと比べ、日銀の出口は簡単ではないだろう、ということは容易に想像できる。これだけの買い入れを行っているので、出口に向かえば、国債の流動性をマーケットから奪うことになる。慎重に、大変な結果をもたらさずに出口に向かうのは難しい。日銀だけでなく、他の中央銀行も含め、この量的緩和からどう脱出できるのか、議論する必要がある。
――そうした中、外国人投資家は日本国債を買い越しています。
日本国債の利回りはそれほど高くないが、海外でグローバルなポートフォリオを持っている投資家からみた場合、日本国債は(投資先の)分散の一つになる。ボラティリティも他のアセットクラスと比べて低く、グローバルベンチマークの中で大きな部分を占める。グローバルに分散化されたポートフォリオを考えたときに、日本国債は一つの有効な投資先だ。さらに、ボラティリティが低いので、米国債利回りの上げ幅と比べ、(FRBの)利上げ局面で守られる側面もある。さらに、相対的には1年前と比べ、欧州の国債利回りが下がったので、日本国債との利回り差がなくなり、日本国債の魅力が高まっている。
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