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国民投票まで銀行が休業となり、首都アテネで現金を引き出そうと銀行のATM前に列をつくる市民ら〔AFPBB News〕
ギリシャ債務危機、ユーロ離脱への道 もうテーブルに載っていない提案について国民投票を行う不思議
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44175
2015.6.30 Financial Times JBpress
(2015年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
予想していたショックが実際に起きた時、それはやはりショックのように感じられる。ギリシャのアレクシス・チプラス首相が交渉の席を立ったのは正しい。だが、国際通貨基金(IMF)と欧州中央銀行(ECB)への債務の返済が可能になる提案を蹴ったことは、それでも非常に重要な決断だった。
筆者が理解に苦しむのは、支援受け入れの是非を問う国民投票を日曜日(7月5日)に行うと突然決めたのはなぜなのか、ということだ。
この背後には、筆者の理解力を超えた非常に高度な戦略が隠れているのかもしれない。
この国民投票の最大の問題は、ギリシャ国民に賛否を問うはずの提案がもう交渉のテーブルに載っていないことだ。また、それに関連する現在の支援プログラムも6月30日深夜に失効する。債権者自身がもう支持していない支援パッケージにギリシャ国民がイエスと言うべき理由があるのだろうか。
■最大のミスを犯したのはユーロ圏財務相会合
だが、この週末に見られたとびきり重大な戦術的失策は、ユーロ圏財務相会合が、国民投票が終わるまでギリシャ支援プログラムを5日間延長するのを拒んだことだった。この決定をもって、財務相たちは交渉を続ける唯一の道を閉ざしてしまった。
また、図らずもチプラス首相の政治的議論の根拠を強めてしまった。この決定のおかげで首相は今後、次のように主張できるようになるのだ――債権者たちは当初、財政緊縮プログラムでギリシャ経済を破壊したがっていた。今ではギリシャの民主主義を破壊したいと思っている、と。
事態はこれからどう展開していく可能性があるのか。それを考えるには、さまざまなシナリオに目を通し、ありそうもないものを排除して、何が残るかを考えてみるのが有効だ。
■考えられるシナリオ
もしギリシャで7月5日に国民投票が実施され、その結果が「ノー」と出れば、恐らくそれが「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)」の合図になる。
逆に、国民投票の結果が「イエス」なら、当初は混乱が生じることになるだろう。債権者側の救済案を受け入れるという判断は、ギリシャ国民がユーロ圏への残留を望んでいるという意味だと解釈される可能性がある。
その場合、ギリシャ政府は――「イエス」と出た後に誰が首相になるかに関係なく――資本規制の体制を維持し、ユーロ建ての並行通貨を導入するだろうと筆者は見ている。
並行通貨導入のシナリオは3つの道に分かれ得る。第1の道は、早い時期にグレグジットが実現するというもの。第2の道は、ギリシャはデフォルト(債務不履行)するが資本規制を無期限に継続するというもの。そして第3の道は、資本規制が最終的には撤廃されてギリシャはユーロ圏に残留するというものだ。
最後の道では、ギリシャの銀行の整理が必要になるだろう。これが理想のシナリオだろうが、実行に移すのは容易ではない。ユーロ圏には本当の意味での銀行同盟がないため、銀行の資本を増強するには、ギリシャと債権者側が改めて交渉するしかないからだ。
具体的には、ギリシャの銀行を救済するために、欧州安定メカニズム(ESM)によるプログラムが必要になるだろう。銀行を強化するだけでなく、銀行の資金をギリシャ政府から守ることもその目的になる。その間も、ECBは緊急流動性支援(ELA)のプログラムを継続しなければならないだろう。
ECBは、法的に可能なことはすでにかなりやっており、間もなく限界を突破してしまう可能性がある。今のところはELAを続けているが、貸し出せる金額には上限を設けている。その結果、ギリシャ政府は銀行を休業にして資本規制を導入することを決めた。
■完全に信頼を失ったギリシャ政府
銀行の資本増強策を機能させるためには、欧州諸国とギリシャの政府がすぐに協調する必要があるだろう。いろいろな見方や意見に耳を傾け、前向きな態度で臨む必要がある。
ギリシャ政府がデフォルトする一方で、そのデフォルトされた債権を保有する国の議会に、ギリシャの銀行を支援する資金の拠出を要請しなければならないことにもなるだろう。そういう事態になる確率が何%ぐらいあるかという計算は読者諸氏に委ねて、次のシナリオを検討してみよう。
では次に、国民投票で大差で改革案の受け入れが決まったとしよう。その場合、チプラス氏は辞任する。その後、選挙が行われる。そのような選挙が緊縮支持の連立政権を生んだと仮定しよう。すると、そこでユーロ圏はギリシャに新たな取引を提示するかどうか、という疑問が生じる。
もちろん、提示しない。古い支援プログラムが失効したため、それは真新しいプログラムでなければならない。
その頃までには、ギリシャはIMFとECBに対してデフォルトしている。債権団はすでに、新民主主義党(ND)党首のアントニス・サマラス氏が首相だった時に同氏を相手にしたことがある。サマラス氏は政権を握っていた時に、果たされることのない約束をした。
信頼が再構築される頃には、ギリシャ経済は完全なメルトダウン状態に陥っているはずだ。
筆者が引き出す結論は、可能性の高い結末が2通りあるというものだ。1つ目は、資本規制の体制が無期限で敷かれ、恐らくは、後に大規模な債務減免パッケージの一環として銀行再編が行われる。この場合、ギリシャはユーロ圏内に残る。
2つ目のシナリオはグレグジットだ。1つ目のシナリオの方が望ましい。2つ目のシナリオでも、チプラス氏が拒否した案、あるいは緊縮支持のコンセンサスへの回帰よりはまだましだ。
■最大の懸念は政治的影響
筆者が抱いている最大の懸念は、政治的なものだ。ギリシャの有権者が緊縮受け入れに賛成票を投じたが、債権者とECBが選択肢を何も与えてくれなかったためにギリシャがやはりユーロ圏から追放された場合には、何が起きるのか。
このシナリオは、何にも増して有害な結果となる。それは政治同盟を伴わない通貨同盟が、民主主義の基本原則に違反した状態でしか存在できないことを意味するからだ。それはやがて全体主義体制として認識されるようになるだろう。
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