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ツィプラス・ギリシャ首相(写真)の強硬姿勢は、結局のところギリシャ自身を追い込む結果になった Photo:AP/AFLO
本日支払期限!ギリシャに白旗以外の選択肢はもはやない
http://diamond.jp/articles/-/74102
2015年6月30日 ダイヤモンド・オンライン編集部
■IMFの融資は“事実上のデフォルト”に ただし直接的な影響は小さい
6月30日、ギリシャのIMF(国際通貨基金)による融資15億ユーロの返済期限が、ついに到来した。同国が国内から資金をかき集めて支払いに応じる確率もゼロではないが、そうなる可能性は限りなく低い。
また、本日をもって、EUによるギリシャ支援プログラムも終了する。ギリシャ側が、IMFやEUなどの債権団が提案した支援条件を拒否した結果であり、同国が態度を改めて譲歩した新たな提案を行わない限り、支援延長等の新たな手当てがEU側から出る可能性も極めて低い。
6月30日の支払い期限は従来、ギリシャ問題をめぐる一つの大きな節目とされてきた。だが、市場にとっても関係者にとっても、もはや重要事とは見なされていない。ギリシャが支払えないのはすでに「前提」であり、焦点はその後に移っている。
本日中に支払いが行われなければ、IMFへの返済は「延滞」という扱いになる。格付け機関等は、IMF向けの債券は通常と異なり、定義上はデフォルト(債務不履行)と見なさない、としているが、“事実上のデフォルト”である。IMFは当然、今後も返済を求めていくことになるが、成り行きによってはこれまで行った融資が焦げ付く可能性もある。
もっとも、「ある程度の損失引き当てはすでになされている」(村田雅志・ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)ため、そうなったとしても直接的な影響は小さい。また逆にIMFへの支払いが行われたとしても、後述する今後の返済や債務償還のための資金がギリシャにないのは火を見るよりも明らかで、「実態としては状況に何ら変わりはない」(丸山義正・SMBC日興証券シニアエコノミスト)。
むしろ、重要なのはECB(欧州中央銀行)が行っているギリシャ国内の銀行への資金供給、EU各国がEFSF(欧州金融安定基金)を通じて行ってきた金融支援に、これがどう影響するかである。具体的には、ECBは資金供給を続けるのか、EFSFは自身の持つ債券もデフォルトと判断するのか否か、だ。
■ギリシャの命運を握るECBの資金供給 “見放される”契機が次々訪れる
ギリシャの銀行は預金引き出しによる資金流出が加速し、29日には休業・預金引き出し制限に追い込まれた。今や同国の銀行の資金繰りはECBの資金供給が生命線であり、これが停止すると「引き出し制限どころか、払い出しそのものができなくなり、破綻しかねない」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)状況となる。
一方で、ECBはこれまでにギリシャの銀行に対し、890億ユーロもの資金を供与ししており、もはやそれらに返済能力がないとなれば、「早晩、どこかで行き詰まる」(中空麻奈・BNPパリバ証券チーフクレジットアナリスト)。6月30日の支払い遅延は、ECBがギリシャの銀行を“見放す”契機となり得る。ECB理事会は7月1日にこの件で協議を行うと報じられているが、「同日の時点で資金供与を止めてしまう可能性はある」(岸田シニアエコノミスト)。
仮に7月1日時点で猶予を得たとしても、ギリシャには今後、次々と資金返済・債務償還の時が訪れる。7月5日のECB保有国債の利払い、7月14日の円建て国債(サムライ債)の償還、7月20日のECB保有国債の償還などである。これらの支払い・償還が滞れば、いずれもECBによる資金供給停止の引き金となり得る。
EFSFのデフォルト判断も、これに大きく関係する。EFSFは、「クロスデフォルト条項」に基づき、IMFへの返済を含む他の債務の返済が行われない場合、自身がギリシャに対して持つ債券もデフォルトと認定、前倒し返済を請求できる。そうなれば、ECBも立場上、ギリシャの銀行への資金供給を続けることは難しくなる。
中空チーフクレジットアナリストは、まず14日のサムライ債の償還が重要と指摘する。債権者である日本の金融機関への影響もさることながら、「6月30日以降で最初に来る、民間債券の償還」であるためだ。金額としては約117億円(約0.8億ユーロ)と大きくはないため、デフォルトとなってもそれ自体のインパクトは小さいが、これがクロスデフォルト条項に抵触する可能性がある。
さらに、支払い期限先延ばし等でこれを乗り切ったとしても、4月20日の国債償還が「決定打」となる。35億ユーロと多額であり、EFSFやECBとしても看過するのが難しいからだ。
■7月20日がデッドライン それまでにギリシャが折れるか
言い換えれば、これらがギリシャにとっての“デッドライン”となる、ということである。ECBやEUの支援なしにギリシャが事態を乗り切れる可能性はゼロであり、このままでは同国は遅かれ早かれ“本当のデフォルト”に追い込まれる。要は、それまでの間に、ギリシャが現実路線に転換できるか否かだ。
その意味で、まず最初の節目となるのは、やはり7月5日の国民投票だ。
国民投票は、“支援の条件となる、債権団の財政再建策を受け入れるか否か”を問うもので、先述の通り支援プログラムは6月30日で失効しているため、7月5日の時点ではすでに意味を失っている。ただ、その結果はギリシャの姿勢を占う意味で重要な材料とされるだろう。なお、ギリシャが国民投票自体を撤回し、債権団に対して新たな提案を行うこともあり得るが、可能性としては低い。
今のところ、国民投票の結果は「Yes」、つまり債権団の要求を受け入れることになるとの見方が大勢を占める。銀行預金の引き出し制限等で最も打撃を被っているのはギリシャ国民自身であり、常識的に考えれば、国民は事態の深刻さを認識せざるを得ないからだ。そうなれば、支援の再開・延長に向け、協議が再開される芽が出てくる。
ツィプラス政権がどうなるかも、ポイントである。いずれにせよツィプラス首相は辞任せざるを得ない、との見方が大勢だ。この場合、新政権が後を引き継ぐか、解散総選挙となってその間は暫定政権が成立するかとなる。国民投票の結果が「Yes」であれば、新政権はより現実的な姿勢を取り、交渉が再開される可能性が高いだろう。
これが「最良シナリオ」(中空チーフクレジットアナリスト)である。一方、「最悪のシナリオ」は、国民投票の結果が「No」となり、ツィプラス首相も居座って強硬姿勢を崩さない場合だ。こうなると、ギリシャのユーロ離脱の現実味が一気に高まる。
■市場や世界経済への影響は「どう転んでも限定的」か
問題は、各シナリオにおける、株式・為替・債券等の各市場や世界経済への影響だ。
実は現状では、どう転んでも影響は限定的、というのが多くの専門家の見方だ。
国民投票でギリシャ国民が、遅ればせながら財政再建策の受け入れ姿勢を示し、支援協議が再開されれば、マーケットの混乱は収まり、ユーロ安(円高)や世界的な株安の動きも反転することになるだろう。現状では同時にこれがメインシナリオでもある。ギリシャの国民や政権が要求を拒み続けても、ますます自らを苦境に追い込むだけだからだ。
国民投票の結果が「Yes」でも、「ドイツなどがさらに厳しい条件を突きつけ、ギリシャとの交渉がまたも噛み合わなくなる可能性」(岸田シニアエコノミスト)はあり、今しばらくは不透明な情勢が続くのは必至だ。だが、2012年の欧州債務危機時と異なり、現在はユーロ圏の危機対応のシステムが整っている。イタリア、スペイン等の他国へ危機が波及して深刻化する可能性は低い。
民間の債権債務関係もかなり整理済みで、ギリシャに対する債権者はユーロ圏の各国政府を中心とした公的機関であるため、金融システムへの波及の懸念も低い。これらから、「市場のリスクオフは今週がピーク」(丸山シニアエコノミスト)との見解も少なくない。
仮に国民投票結果が「No」となっても、“お荷物が片付く”と見なされ、「むしろユーロは買われるのではないか」(村田通貨ストラテジスト)という見方もある。
ただし、ギリシャのユーロ離脱というシナリオを市場が十分に織り込んでいるかと言えば、疑問も残る。そもそもユーロ圏からの離脱は想定されておらず、規定がないため、仮にそうなれば欧州は“未体験ゾーン”に突入することになる。そのとき、市場がどう反応するかは、読み切れない面がある。
「ギリシャのユーロ離脱は確率としては低いが、もしそうなれば何が起きるかは分からない」(中空チーフクレジットアナリスト)。楽観して良い、と言うには、まだ時期尚早だ。
(ダイヤモンド・オンライン編集部 河野拓郎)
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