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深まるギリシャ危機、今後予想されるシナリオ
2015年 06月 29日 13:21 JST
[ブリュッセル 28日 ロイター] - ギリシャ支援をめぐる同国政府と債権団の話し合いは決裂し、ギリシャ政府は30日を期限とする国際通貨基金(IMF)への16億ユーロの返済が不履行に陥る恐れがある。
今後予想されるギリシャ問題の展開をまとめた。
◎30日以降の動き
ギリシャはIMFへの返済ができない恐れがあるが、ユーロ圏当局者からはIMFがギリシャ政府に対して即座に債務不履行を宣言せずに返済遅延にとどめると期待する声が出ている。
その場合、ユーロ圏と欧州中央銀行(ECB)は、ギリシャはテクニカル的には債務不履行ではないと主張することが可能で、他の貸し手が返済を要求する状況を回避し、ECBはギリシャの銀行への資金提供を継続する余地が得られる。
◎ECBの緊急流動性支援
ECBは28日、ギリシャの銀行に緊急流動性支援(ELA)を提供し、支援を続けることを決めた。ECB当局者は、ギリシャの銀行が十分な担保を保有する限り支援を継続すると示唆している。
しかしギリシャがIMFへの返済で明確に不履行に陥り、ユーロ圏から金融支援を受けられる見通しが立たなければ、ギリシャの担保の価値は大幅に低下してELAは打ち切られる。
◎ECBが保有するギリシャ国債の扱い
ECBは同行が保有するギリシャ国債35億ユーロ相当が償還期限を迎える7月20日まで支援の撤回を先送りする道を選ぶかもしれない。ギリシャがこの期限に支払いができなければ、ユーロ圏の支援を受けずに財源を見付けることは不可能で、ECBがギリシャ銀に資金を提供するのは難しくなる。
◎IOU導入とユーロ圏からの段階的離脱
ギリシャの銀行セクターは、ECBからの支援がなければ経営破綻に陥り、政府は国内での支払いを賄うためにIOU(借用証書)など通貨の代替手段を導入せざるを得ない。
ユーロに代わる支払いの代替手段がギリシャの新通貨となる可能性もある。ギリシャが2種類の通貨をどの程度維持できるか、維持するつもりかはっきりしないが、IOUはすぐに大幅な減価に見舞われるだろう。
◎EU提案めぐる国民投票
ギリシャはキャッシュが不足して資本統制が導入され、社会不安の起きる恐れがある状態の中、7月5日にEUが提示した財政改革案の受け入れの是非を決める国民投票を実施する。政府は債権団の要求を拒否する方向に世論を誘導している。ギリシャやユーロ圏の政治家の一部は、投票はユーロ離脱の是非を問うに等しいものだとみている。
◎EUの財政改革案が承認された場合
債権団側が追加支援の条件として示した提案が国民投票で支持されれば、ギリシャ政府は国際的な貸し手に第3弾の支援計画を求め、交渉しなければならない。当局者によると、その場合は先週末に決裂したよりも厳しい話し合いになり、数週間あるいは数カ月を要する可能性があるという。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P908020150629
コラム:ギリシャ離脱か、デフォルト後のシナリオ=田中理氏
2015年 06月 29日 13:42 JST
田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト
[東京 29日] - ギリシャ議会が財政緊縮策の是非を問う国民投票の7月5日実施を決めたことで、6月30日の国際通貨基金(IMF)向けの融資返済を履行できないことがほぼ確実となった。
まとまった財源を自力で確保する方法としては、地方政府の剰余金を中銀経由で政府に貸し付ける措置や、国内向けの支払いを遅延したり、政府の借用証書(IoU)で支払うことが考えられる。
だが、これまで協力を拒んできた地方政府がこの期に及んでデフォルト間近の国家に将来の行政サービスの原資となる剰余金を拠出するとは思えない。また、国民投票で債権者側提案の受け入れ拒否を訴えるギリシャ政府が、国民からの反発を招く、対外債務の支払いを優先するとは考え難い。
では、IMFへの返済ができなかった場合、何が起きるのだろうか。
<ECBの支援継続はいつまでか>
ラガルド専務理事をはじめとしたIMFの高官は、月末の支払いをギリシャが履行しない場合、猶予期間を設けたり、返済を延期することはなく、7月1日の段階でデフォルト(IMFの用語では「支払い遅延」)に相当すると発言している。国民投票を控えていることもあり、支払い遅延の正式認定がどのタイミングで行われるかは不透明だ。IMFの資本金が毀損すれば、IMF加盟国が穴埋めすることになるが、十分な資本バッファーを有しており、ただちに加盟国の財政負担が発生するわけではない。
ギリシャ二次支援の実行主体である欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の融資約款によれば、IMFが正式に支払い遅延にあると認定した場合には、事実上のデフォルト事由に相当し、EFSFの保有する債権を、返済期限を待たずに前倒しで請求することが可能となる。ギリシャに現時点で返済能力がないことは明らかで、前倒し請求をすればEFSFの損失が確定し、ユーロ圏各国政府が損失分を保証する必要が出てくる(EFSFは融資原資を加盟国政府の保証付き債券の発行で賄っている)。
EFSFの信用力低下と財政リスクの顕在化につながる恐れがあり、ギリシャ危機の他国への伝染を防止する観点からも、現時点でEFSFが前倒し返済を求めることはないだろう。
ギリシャ国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS:デフォルトリスクを保証する金融派生商品)は、2012年の債務交換後に派生した債権を保証の対象としており、月末に返済期限を迎えるIMFの融資は保証対象外で(これは2010年5月に始まった一次支援時の複数の融資の一括返済分のため)、信用事由(クレジット・イベント)には該当しない。
大手格付け会社は、ギリシャがIMF向けの返済を期日通りに履行できないからといって、民間債権者の回収可能性に影響を与えるものではなく、ただちに格付け上のデフォルトには相当しないとの基本見解を以前に表明している。だが、月末に支援プログラムが失効し、銀行からの預金流出が加速するなかで、政府の財政上のバッファーや銀行救済に必要な資金手当ての目途が立たないことを考えれば、格付け会社が何らかの格下げに動くことが考えられる。
ギリシャが事実上のデフォルト状態となることで、欧州中央銀行(ECB)がギリシャの銀行に対して供給している緊急流動性支援(ELA)を打ち切るかどうかの判断を迫られる。ELAは健全な銀行に対する一時的な流動性供給の枠組みで、事実上デフォルトした国の発行する国債を大量に保有するギリシャの銀行を健全とみなすことができるかに疑問が生じてくる。
また、ELAを打ち切らないまでも、ギリシャ国債の担保価値をより厳格に評価する可能性が出てくる。その場合、担保の掛け目変更でギリシャの銀行がELAを通じて確保できる流動性資金は目減りする。ECBは今のところELAの利用可能額の上限を維持している。だが、月末にIMFへの返済不履行が確定、支援プログラムが失効し、銀行救済の予備資金が失われた段階で、これまで同様にギリシャの銀行向けの流動性支援を継続することは一段と難しくなる。
ECBにとってのハード・デッドラインは、ギリシャがECBや民間が保有する国債の元利払いを履行しなかった場合と考えられる。2012年の債務交換後のギリシャ国債にはパリパス規定(他の債権と同順位)が設定されており、国債の元利払いを履行しなかった場合にクロス・デフォルト(ある債務がデフォルト事由に抵触すると、他の債務もデフォルトとみなされる)条項が発動する。債務交換後の国債はギリシャの国内銀行が大量に保有しており、ELAの差出担保としての国債の価値を再評価する必要や、国債の評価損で銀行が負債超過に陥る恐れがある。
7月中に支払い期日を迎える国債の元利払い(政府短期証券を除く)は、7月3日の円建て国債の利払い、5日のECB保有国債の利払い、14日の円建て国債の元利払い、17日の2014年発行国債とホールドアウト国債の利払い、19日のECB保有国債の利払い、20日のECB保有国債の元利払い、25日のECB保有国債とホールドアウト国債の利払い。このうち金額が大きいのは20日のECB保有国債の元利払い(36億ユーロ)で、それまでに協議再開への道筋がついていなければ、ELAの掛け目変更や打ち切りの可能性が高い。
交渉決裂によるデフォルトが一段と現実味を増すなか、ギリシャでは銀行の預金流出が加速している。週末には銀行のATMの前に預金を引き出そうとする人が数十人規模で列をなし、紙幣不足で預金が引き出せないATMが続出したとされる。現地の報道によれば、土曜日も窓口業務を行っている一部の銀行店舗に預金者が殺到したが営業を休止した。
こうしたなか、ECBは28日、ELAの利用上限を据え置いた。このまま29日に銀行が営業を再開すれば、預金の引き出しに銀行が応じることができず、銀行が破綻することはほぼ確実な情勢だ。政府は28日、29日から7月6日までの銀行休業と資本規制の導入を発表した。
2013年の銀行危機時に資本規制を導入したキプロスでは、預金引き出しや海外送金の制限と報告義務が課せられた。資本規制が長期化すれば(キプロスの例では導入から解除まで約2年)、幅広い経済活動に影響が出てくる。
<ギリシャのユーロ圏「居座り」は可能か>
返済不履行や銀行の営業停止などによる混乱は、ギリシャの国内世論にショック療法として働く可能性がある。
国民投票の実施表明前に行われた最新の世論調査を見ると(国民投票の実施表明後の世論調査はまだ公表されていない)、アルコ/プロトテーマ紙の調査では、57%が債権者との合意に賛成、29%が反対、14%が態度未定であり、カパ/トビマ紙の調査では、47.2%が合意に賛成、33.0%が反対、18.4%が態度未定だ。交渉期限が迫るなかでギリシャ国民も合意支持に傾きつつあった様子がうかがえる。
ただ、国民投票の設問が「債権者側の求める財政再建策を受け入れるかどうか」の二者択一で、ギリシャ国民の多くが希望するユーロ圏残留の是非を絡めたものではない。また、与党が受け入れ拒否を呼び掛けており、投票の結果は予断を許さない。
受け入れ拒否派が多数を占めた場合、ギリシャ政府は民意を盾に改めて財政再建策の再考を求めるとみられるが、債権者側がこれに応じる可能性は低い。追加支援に関する協議は完全に決裂し、ECBはELAを打ち切る可能性がある。
ギリシャの国庫に銀行救済の原資はなく、銀行の劣後債保有者や高額預金者(預金保護の対象外)に負担を求めるだけでは十分な救済資金が確保できない場合、ギリシャ政府は結局のところ欧州連合(EU)諸国の支援を仰がなければならなくなる。あるいは、独自通貨の発行などで銀行救済資金を賄うならば、ユーロ離脱への道を歩み始めることを意味する。
債権者側はギリシャのデフォルトや国民投票の結果が受け入れ拒否となっても、まずはギリシャのユーロ残留を前提に努力する方針を表明している。ただ、財政再建策の再考を求めるギリシャ側の強硬姿勢が続けば、債権者側もギリシャのユーロ離脱に傾いてこよう。そもそも、EU条約にはEUからの離脱規定はあるが、ユーロ圏からの離脱規定は存在しない。EU離脱規定を援用するのであれば、一方的な離脱や離脱の強制はできない。
つまり、ギリシャ国民がユーロ残留を希望する限り、デフォルト後もそのまま居座ることも可能だ。ただ、この辺りは離脱規定が存在しないこともあり、推測の域を脱せず、実際に起こってみなければ、本当に居座ることが可能か、離脱の場合、どういう手順で離脱を進めるのかは不透明だ。
受け入れ賛成派が多数を占めた場合、ギリシャ政府は財政再建策の受け入れに傾くが、与党内の強硬派がこれに反発し、政権が崩壊する可能性が高い。この時、支援継続派が挙国一致内閣を組織できれば協議はそのまま継続するが、それができなければ議会の解散・総選挙が必要になる。この場合、支援継続派の新政権が誕生する可能性が高いが、新政権が発足するまでの1カ月半から2カ月程度は協議が中断し、ギリシャの経済疲弊と財政悪化が一段と進むことになる。
挙国一致内閣や新政権の下で支援協議が再開したとしても、すでに支援プログラムが失効しており、今のプログラムを土台に新たな支援プログラムを作成する必要がある。一連の騒動でギリシャに対する不信感が高まっており、債権者側はより厳しい改革要求を突き付けたり、より確固な事前行動を求める可能性がある。そのことが新たな対立の火種となる恐れも否定できない。
債権者からの厳しい改革要求と政権内の強硬派や支持層からの突き上げの板ばさみにあったギリシャの新政権は、緊縮見直し要求を貫き通すことが難しいことを認識していながらも、交渉期限のギリギリまで粘ることで債権者側から最大限の譲歩を勝ち取ることを目指してきた。だが、債権者側はギリシャに甘い顔をすることで、他のEU諸国に広がる反緊縮機運や反体制派政党の勢いが増すことを警戒。他国への波及リスクがかつてに比べて限定的であることや、EUに対する信任を守る大義もあり、ギリシャに厳しい態度を貫き通した。
22日のギリシャからの新提案もギリシャ政府にとっては最大限の譲歩だったのに対し、債権者側にしてみればようやく議論の出発点であり、双方の溝は余りに大きかった。債権者側の譲歩を引き出そうとするギリシャ側の権謀術数も、債権者の不信感と苛立ちをさらに深めるばかりで、政権内部の強硬派の不満のガス抜きや政権に対する国民の支持を保つ以外に目立った成果を上げることにはつながらなかった。
破天荒で理想主義者の素人政治集団はエスタブリッシュメントが支配するEU政治の中で孤立。交渉に重要な対話のルートも閉ざされ、最後は双方をつなぐパイプ役からも見放された。ギリシャはいよいよユーロ離脱に突き進むのか、ギリシャとユーロの未来を決する国民投票の期日が迫る。
◆「ギリシャ支援交渉、決裂までの経緯」
週末にかけてギリシャ情勢が急展開した。6月30日にEUの二次支援プログラムの失効期限とIMF向けに約15億ユーロの融資返済期限を控え、ギリシャ政府と債権者団はこれまで融資再開に向けたギリギリの交渉を続けてきた。22日の緊急財務相・首脳会合の直前にギリシャ政府が提出した新提案に対して、EU高官などからポジティブな評価が聞かれたこともあり、先週前半までは土壇場で双方が歩み寄りに向かっているとの期待感が高まっていた。
だが、その後も交渉は難航した。22日の提案も当初誤ったものが債権者団に送られ、会合直前になって正しい提案に差し替えられたと報じられ、債権者側は新提案の中身を十分に精査できなかった。特にギリシャの財政再建計画が法人税率の引き上げや年金の雇用主負担の増加など企業負担の増加につながる政策メニューに偏っており、年金給付の削減などに十分に踏み込んでいない点が問題視された。
ギリシャ国内でも、債権者に提出した財政再建策に、島に対する付加価値税(VAT)の軽減税率の適用廃止が盛り込まれたことに対し、連立パートナーの「独立ギリシャ人(ANEL)」が猛反発。その後に提出した修正提案では、適用廃止案を撤回し、代替措置を盛り込んだが、債権者側の理解を得ることはできなかった。
当初ギリシャの新提案を前向きに評価していたEU諸国も、ギリシャ債務の持続可能性に疑問を持つIMFの主張に賛同し、年金給付の削減やVATの引き上げなどを求めることで一致した。再三の厳しいやり取りの応酬でギリシャ支援に懐疑的な見方が広がっていたドイツ議会では、IMFなしのギリシャ支援は受け入れられないとの意見が多数派を占め、ドイツ政府もIMFに歩調を合わせた。
ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は26日のチプラス首相との会談で、債権者側の財政再建計画を受け入れることを条件に、支援プログラムの11月末まで5カ月間の延長と155億ユーロの追加融資の分割実行を約束する事実上の最後通告を突きつけた。緊縮見直しを公約に掲げて1月の総選挙で誕生したチプラス政権としては、これ以上の債権者への譲歩は国民が選挙を通じて政権に付託した権限を逸脱すると判断。独仏首脳会議を終えて帰国したチプラス首相は27日、与党内で対応を協議した後に国民向けのテレビ演説で、債権者側が求める財政再建策を受け入れるかどうかをめぐって、7月5日に国民投票を実施することを表明した。
ギリシャ政府は国民投票の結果が判明するまでの間、月末に失効予定の支援プログラムを延長することを債権者側に求めた。27日に開かれた緊急のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)では、ギリシャ側の提案を拒否し、支援プログラム(中断中の最終融資を受け取る権利や銀行救済に充てる予備資金を利用する権利など)とそれに関連した取り決め(ECB保有国債の超過収益のギリシャへの還元など)が予定通り6月30日に失効することを明らかにした。会合後に発表された声明では「最後の瞬間までギリシャ国民に対する追加支援の門戸は開いている」とし、ギリシャ側の国民投票の実施方針撤回と債権者側の改革提案受け入れに望みをつないだ。
だが、同日ギリシャ議会で行われた国民投票の実施の是非をめぐる採決では、連立与党の「急進左派連合(SYRIZA)」と「独立ギリシャ人」に加えて、反ユーロを掲げる極右政党「黄金の夜明け」が投票実施に賛成票を投じた結果、残りの野党勢が揃って反対票を投じたものの、賛成多数で国民投票の実施が決まった。今後、支援継続派の前与党「新民主主義党(ND)」出身のパブロプロス大統領の仲裁やギリシャの国内世論の反発が強まれば、土壇場での投票撤回の可能性もわずかに残るが、今のところ投票実施の可能性が高い。
*田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P908A20150629
ギリシャ国民投票実施で、予想される政局シナリオ
2015年 06月 29日 12:02 JST
[アテネ 28日 ロイター] - 欧州連合(EU)など債権団が突き付けた緊縮財政要求に対して、ギリシャのチプラス政権が打ち出した国民投票の実施計画は、ギリシャをユーロ離脱につながりかねない債務不履行(デフォルト)の瀬戸際に追い込んだ。
このショック療法に対し、ユーロ支持派の野党からは激しい反発が起きた。政党間の話し合いが相次いだことで、ギリシャをユーロ圏に残留させるさまざまなシナリオについての思惑が広がった。
7月5日に予定されている国民投票をめぐり、取沙汰されているギリシャの選択肢は以下の通り。
<大統領が介入>
ギリシャの大統領は普段は儀式上の役割しか果たさないが、国家の非常事態には辞任という手段によって介入できる。
大統領が辞任を表明すれば、新しい大統領が選ばれるまで国民投票は棚上げされる。新大統領の選出は議会で5分の3の賛成が必要だ。
この選択肢は現時点では極めて可能性が低い。大統領府の複数の高官はパブロプロス大統領が辞任しないと述べている。ただ、元保守党政治家で、通常は政局から距離を置く大統領は今月、ギリシャ紙リアル・ニュースに対し、ギリシャがユーロ圏を去る場合、大統領を続ける意思はないと述べている。
大統領が辞任した場合、急進左派連合(Syriza、シリザ)政権は新大統領を選出できる3分の2以上の議席を持たない。このためこのシナリオは総選挙につながると、ギリシャ憲法に詳しいニコス・スコウタリス氏(イースト・グリア・ロー・スクール大学EU法講師)は述べた。
<国民投票が低投票率に>
ギリシャの国民投票は法的拘束力がなく、「国民の意思を問う手段」とみなされる。成立に必要な最低投票率は40%。投票率がこの水準に達しない場合は、国民の意見が聞き取れなかったと解釈され、投票結果は棚上げされる。
<国民投票でイエス>
ギリシャ政府は国民に対し、債権者団の改革案に反対票を投じるよう勧告した上で、それでも投票結果は尊重するとしている。しかしアナリストは、政府がこれほど強く反対してきた改革を実行するのは政治的にほぼほぼ不可能だと指摘する。この場合、チプラス首相は辞任し、総選挙を実施することになるという。
チプラス首相に近いベテラン閣僚のラファザニス・エネルギー相は、国民投票の結果が「イエス」となった場合、政府が総辞職するかと問われて、「その通りだ。この場合は政治的な動きがあるだろう」と語った。
<「国民結束」政権>
国民投票結果が「イエス」となり、現政権が崩壊する場合でも、自動的に総選挙の早期実施とはならない。
チプラス首相が辞任する場合、大統領は各野党党首に少数野党政権の結成を呼び掛けることが可能だ。中道のポタミ、中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)、右派の新民主主義党など親ユーロ派政党による超党派政権を設立し、国民に受け入れられた改革プログラムを実行する運びとなる。
前回ギリシャで国民投票が取りざたされたのは2011年。当時のパパンドレウ元首相が画策したが、やがてそれを撤回し、辞任に追い込まれた。翌年に総選挙が行われるまで、実務派政権が後を引き継いだ。
政治アナリストのテオドロス・クールームビス氏は「ここでは実務派政権は長く続かない」と述べた。
<国民投票でノー>
国民投票の結果が「ノー」となると、ギリシャは債権団との交渉力が強化されるとギリシャ政府高官は話す。ただユーロ圏の高官は、ギリシャ支援提案は6月30日に無効になると表明している。
国民が「ノー」の審判を下せば債権者からの追加支援はほぼ確実に断たれる。ギリシャは混沌の中に投げ出され、ユーロ圏からの離脱が加速する。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P907F20150629
ギリシャ交渉決裂、高まるデフォルト危機:識者はこうみる
2015年 06月 29日 12:14 JST
[東京 29日 ロイター] - ユーロ圏の財務相がギリシャが求めていた金融支援の延長を拒否し、交渉は決裂。国際通貨基金(IMF)に対する30日の債務返済をギリシャが履行できない可能性が高まった。市場関係者の見方は以下の通り。
<バークレイズ銀行 為替ストラテジスト 門田真一郎氏>目先の相場は方向感がつかみにくい。ギリシャでは7月5日の国民投票を前に先行き不透明感が強まっている上、今週は米雇用統計や米ISM指数など重要な経済指標の発表を控えており、ボラティリティが高まりそうだ。
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が利上げの判断は経済指標次第だと強調しているだけに、米経済指標の内容に対してドル/円は素直な反応が出やすい一方、先行き不透明感の強いギリシャのヘッドラインが短期的に悪影響を及ぼしやすい。
国民投票では債権者側の提案が受け入れられるかどうか、予断を許さない。受け入れられるならギリシャ政府が方向転換し、あらためて交渉し直しとなるだろうが、チプラス首相が主張しているように受け入れ拒否となるリスクも残っているだろう。
今朝のオセアニア時間の相場を見ると、リスクオフの下では、ドルと円が安全通貨として買われやすいことがあらためて確認された。足元では、ドルより円の方が買われやすくなっており、ドル/円は下押しされやすいかもしれない。
<大和証券 日本株シニアストラテジスト 高橋卓也氏>
先週末の夕方よりも対ドルで円高が進行したが、足元では122円台でとどまっている。一方的にリスクオフというところまでは踏み込み難い部分があるのではないか。目先のところで日経平均は2万円から2万0500円の間まで下落するとみられる。だが、そこから下に行く動きも見込みにくい。今後のギリシャ政府、債権団の双方の対応を見極める動きとなるだろう。
一方、2011年の欧州債務危機の頃と比べるとセーフティーネットは拡充されているとみられており、直近のギリシャ問題が欧州経済全般に対して壊滅的な影響を与えるのかというと、そうとも言い切れない部分がある。日本株のファンダメンタルズ自体は良好であり、仮にギリシャがデフォルト(債務不履行)となっても、日経平均が2万円を割れた水準で長期にわたって定着する形にはならないと思う。
<上田ハーロー 外貨保証金事業部長 山内俊哉氏>
ギリシャはユーロ圏の財務相に金融支援の延長を拒否され、月末に控える国際通貨基金(IMF)への16億ユーロの債務返済が滞る可能性が出てきた。市場はぎりぎりでギリシャと債権団が合意すると楽観視していただけに、交渉決裂のショックが大きく、オセアニア市場でユーロ売りが先行している。一時、ユーロは1.100ドルを割り込み、ドル/円は122円前半まで下落する動きを見せた。
欧州市場に入ってどう動くかは見えにくいが、東京市場では株価の下落もあると思われ、まずはリスク回避の円買いという動きが出てくると思う。
今後、ギリシャのユーロ離脱の動きが本格化した場合、加盟国の離脱というユーロにとっては未知の領域に入る。英国でEUを離脱する機運が盛り上がるおそれもあり、一段のユーロ売りに繋がる可能性がある。リスク回避が強まった場合、ユーロ/ドルの下値は1.0500ドル近辺か。ドル/円は、円が買われると同時にドルも買われるので、下押しされても121円程度で止まるイメージがある。
ギリシャは債権団の提案の是非を問う国民投票を7月5日に実施する予定。国民が債権団の条件を受け入れることを選択するのであれば、もう一度交渉という可能性も残っていそうだ。
<JPモルガン・チェース銀 チーフFX/EMストラテジスト 棚瀬順哉氏>
先週までは、ギリシャ情勢が悪化すると、ユーロキャリー・トレードの巻き戻しが進み、ユーロがむしろ買い戻される場面が見られた。しかし、きょうはユーロ売りに拍車がかかり、円の独歩高となっている。
ギリシャ情勢の深刻化がドル/円相場に影響する筋道として、まず独国債利回りが低下し、それが米国債利回りを押し下げ、日米金利差縮小によってドル/円相場に下方圧力がかかるという経路が考えられる。
目下、日米2年物スワップと整合的なドル/円は120代前半であり、今後、独金利低下を受けて米金利が一段と低下するようなら、ドル/円が一段安になる可能性が高まるだろう。
ただ、現時点で当社は、ギリシャ国民投票では債権者の財政再建案受け入れが支持され、チプラス首相が辞任し、挙国一致内閣が組織され、債権者との交渉に当たると予想している。
もし、国民投票で再建案の受け入れが拒否された場合には、ギリシャがユーロ圏を離脱する可能性が高まるとみている。
<ドイツ証券 チーフ金利ストラテジスト 山下周氏>
ギリシャ債務問題に関しては、週末に何らかの合意があり、週明けはポジティブな方向で目安がついているという見方が多かった。ただ、現実に起きたことは、ギリシャの銀行の休業と資本規制導入、欧州中央銀行(ECB)の緊急流動性支援(ELA)を現行の水準に据え置くなどマーケットが考えていたことと、逆方向になった。
ギリシャ情勢の不透明感が強まり、安全資産とされる米独国債にポジティブに働くことになるだろう。この海外金利の連動性という面から円債金利も低下しやすくなるという見方につながっている。
今後はギリシャ情勢が周辺国にどのように波及するかという懸念が先行するような形になるのではないか。ECBが国債買い入れペースを速めたり、流動性確保の動きに出ると、ユーロ圏のコア国の金利を押し下げることが想定できる。
<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>
ギリシャが求めていた金融支援延長を債権団が拒否したことで、ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が出てきた。ユーログループの声明文などを見る限り、支援失効後もサポートするかのような表現も見受けられ、もはや6月30日のIMFに対するデフォルトはメーンシナリオになりつつある印象を受けた。リスク回避で早朝からユーロ売りが強まったが、現段階ですべて織り込まれたとは言えず、海外時間にかけて欧米の株価などの反応を見極める必要がある。
ギリシャ首相はこのほど国内銀行の休業と資本規制導入を表明したが、債権団との交渉決裂自体より、それによって引き起こされたこうした動きの方が深刻に感じる。そもそもギリシャがユーロ圏を離脱する時には銀行が閉鎖され、資本規制が行われるのが第一歩だと言われていた。この動き自体は真剣に受け止めたほうがいい。
一般的に資本規制は解除までに時間を要することが多く、2013年に導入したキプロスは2年かかり、08年に導入したアイスランドはいまだに解除できていない。可能性は低いとみているが、資本規制が長引けば、ギリシャ国内で独自の通貨をもったほうがいいという議論が出てくるおそれもある。
金融市場としては、7月5日の国民投票が終わるまで、ユーロ売り、円買い、ドル買い、株売りという動きになりやすい。事前報道では、債権団が金融支援の条件としている緊縮策を受け入れるという国民が多いようなので、ギリシャのユーロ圏残留が決まった場合は、ユーロ圏のファンダメンタルズを評価したユーロ買いも出てくるのではないか。
<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>
ユーロ圏の財務省がギリシャの支援延長要請を拒否した結果、ギリシャで資本規制が導入された。これで誰が困るのかと言われればギリシャ国民であり、ユーロ圏残留を望んでいるギリシャ国民は、金融支援の条件を受け入れざるを得ない。7月5日の国民投票で支援条件が支持されれば、チプラス首相は辞任に追い込まれ、新政権が誕生するだろう。しばらくは混迷が続くが、落ち着きどころは見えており、極端なリスクオフにはならない。
日経平均は条件反射的な売りに押され、一時500円を超す下げとなった。ただ2年前の欧州債務危機と異なり、今回はギリシャ単独の話との見方が強いうえ、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和というセーフティネットもある。ギリシャが債務不履行(デフォルト)となれば、もう一段の下げは想定されるが、日経平均2万円が目先の下値めどとして意識されるだろう。
<SMBC日興証券 金融経済調査部 米国担当エコノミスト 丸山義正氏>
財政問題が焦点となった2011―2012年のユーロ債務危機時と、現在のユーロ圏の体制は大きく異なっている。
現在では、財政問題を抱えた国に対する恒久的な支援措置が存在し、大手行の銀行監督もECBに一元化されるなど、ユーロ圏では危機に備えた種々の制度整備が進捗し、金融システムの安定化を図る能力も顕著に高まっている。また、ECBの量的緩和もユーロ圏の国債市場の安定に寄与すると考えられる。
以上から、ユーロ周縁国へのギリシャ問題の感染リスクは、ユーロ債務危機時に比べて、相当に低い水準にあると判断できる。
加えて、ギリシャ問題のユーロ圏周縁国への金融システムを通じた波及が懸念された依然と異なり、現在はギリシャに対する債権者のほとんどはユーロ圏の各国政府を中心とする公的機関であり、民間の債権債務関係を理由にした連鎖的な問題の波及はほとんど予想されない。
結論的には、銀行休業や資本規制の実施により、ギリシャ国内の混乱は深刻化する可能性が高いが、その混乱が金融市場を介して他国に拡大する余地は限られるだろう。
金融市場で、ギリシャを発端としたリスクオフの潮流が長引くとは思わない。ユーロは今後徐々に下落するとみているが、きょうのような円の独歩高が長期化する可能性は低い。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P900R20150629
寝耳に水だった国民投票-ツイッターで知り交渉の雰囲気が一変
2015/06/29 13:31 JST
(ブルームバーグ):ギリシャのチプラス首相は支援の条件である緊縮策受け入れをめぐり国民投票実施を発表したが、「寝耳に水」だったのは、他でもないブリュッセルにいた同国の交渉チームのメンバーたちだ。
ブリュッセルのシャルルマーニュにある欧州連合(EU)本部に集まったギリシャ政府と欧州委員会、国際通貨基金(IMF)の代表は、努力が無駄に終わったことを26日深夜にツイッターで知った。EU当局者の1人が明らかにした。
ギリシャの国民投票について知らされるのはそれが初めてだった。妥協点を見いだすための徹底的な議論が水の泡となり、彼らは部屋を後にした。
EU当局者によれば、欧州委の交渉担当者がユンケル委員長に電話で確認したところ、委員長も承知していなかった。ギリシャ政府の報道官からはこれまでのところコメントが得られていない。
当局者によると、双方のムードはそれまでかなり前向きで、27日午前に予定されていたユーロ圏財務相会合に提出する共同提案について合意に達しつつある状況だった。ホテルの付加価値税(VAT)引き上げ要求を撤回する債権者の譲歩も妥協案の文書に盛り込まれていた。ギリシャのバルファキス財務相もアテネ時間午後8時半ごろの地元テレビとのインタビューで、合意について楽観的な様子を示していた。
原題:Greeks Working on Deal Blindsided by Twitter Post on Referendum(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ブリュッセル Ian Wishart iwishart@bloomberg.net;ブリュッセル Corina Ruhe cruhe@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Alan Crawford acrawford6@bloomberg.net James Hertling, Heather Harris
更新日時: 2015/06/29 13:31 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQOTY06TTDS501.html
EU離脱なら英国は「半世紀後退」、壊滅的な影響=ブランソン氏
2015年 06月 29日 11:40 JST
[ロンドン 28日 ロイター] - ヴァージン・グループを率いる英実業家のリチャード・ブランソン氏は28日、欧州連合(EU)から離脱すれば英国は半世紀後退すると述べたほか、通商や経済にとっても壊滅的な影響が及ぶとの認識を示した。
キャメロン英首相は先週のEU首脳会議で、EU改革の方針を表明した。首相は2017年末までにEU離脱の是非を問う国民投票を実施する計画であり、その前提となる改革に向けた交渉が正式に始動した。
ブランソン氏はBBCのテレビ番組で、英国がEUにとどまることの利点として「米国に匹敵する規模の貿易圏を享受できること」などを挙げた。その上で、EUから離脱すれば「欧州は当然、報復に出るだろう。われわれは50年前の状況に戻ることになる」との見方を示した。
同氏はまた、英国がユーロ圏に加盟すればより大きな恩恵が受けられる可能性があるとも言及した。「英国がユーロ圏の一部であれば、通貨がずっと安くなり、欧州での通商において有利になる。今はポンドがユーロより大幅に強く、厳しい状況にさらされている」としている。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P906I20150629
- ユーロ全面安、ギリシャ交渉決裂でユーロ離脱リスク−円上昇 家計金融資産残高、過去最高 株大幅続落 債券は反発 rei 2015/6/29 14:09:07
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