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ドル高円安ユーロ安基調不変 来年は125〜130円中心
http://diamond.jp/articles/-/74006
2015年6月29日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー) ダイヤモンド・オンライン
1カ月前に「数カ月内にドル円は5%上昇」と当欄で書いたが、ドル円は119円台から125円台へ早々に急伸。その後、黒田東彦・日本銀行総裁の「ここからさらなる円安はなさそう」発言、FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーの金利見通し修正、ギリシャ問題協議の行き詰まりなど、さまざまな相場材料が交錯した。一連の顛末を振り返り、ドル、円、ユーロの相場の基調を再確認したい。
米国は景気堅調を背景に利上げ時期を模索している。日欧は果敢な量的金融緩和を推進中。この格差を反映し、ドル高・円安・ユーロ安が基調として続く。昨年末の数カ月はこの見方が極まり、市場ではドルロング(買い持ち)、円とユーロのショート(売り持ち)が積み上がった。ドル独歩高は、ドル建て取引の商品相場を押し下げ、資源輸出の新興国通貨の売りも呼んだ。
しかし、今年に入ると米国経済が寒波、港湾ストライキ、エネルギー部門への原油安の打撃で足踏みし、ドルロングが巻き戻され始めた。4月後半にドルが対ユーロで反落すると、ユーロショート筋が一部損失を被り、同ショートを保持か巻き戻しかで神経質になった。ギリシャ問題がこじれるさなかのユーロ高の背景には既存のユーロショートの買い戻しがあった。
円ショートも昨年12月のピークからネットで8割減と、巻き戻された。しかし、ドル円は120円前後で底堅さを保った。外国証券投資増を決めた公的年金など日本勢の押し目買いが相場を下支えした。数カ月間の相場膠着はその後の円安への動きを支援する要因をつくった。一つはドル円ロングを首尾よく利食いができた海外投機筋、もう一つは122円以上に積み上がった損切り注文やオプション取引に関連したドル買いである。
5月半ば、住宅や物価などやや強めの米指標が発表された後、イエレン・FRB(米連邦準備制度理事会)議長が「年内の利上げが適切」と発言。グローバルに攻めにくい相場環境が続く中で、損失も少なく、攻めやすい円売り(ドル買い)へ海外投機筋がなだれ込んだ。ドル円は、122円台に達するや損切りやオプション関連のドル買いが連鎖発動し、125円台に。この動きが一巡した頃合いに黒田発言で相場は小反落した。
黒田日銀総裁は翌週に「円安けん制の意図はなかった」と釈明した。真意はともかく、相場に適度なスピード調整をもたらしたことは確かだ。投機の動きも一脈つながっていることを理解すれば、短期変動に惑わされず、ドル高・円安・ユーロ安の基調を見定めやすい。来年、対ドルで円は125〜130円中心、ユーロは1.0ユーロ割れを見込む。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
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