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6月19日、日本銀行は来年から金融政策決定会合を年14回程度から年8回に減らすことを発表。市場関係者を驚かせた
黒田総裁の言葉につきまとう 日銀の“ピーターパン的”宿命
http://diamond.jp/articles/-/74005
2015年6月29日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
日本銀行は来年から金融政策決定会合の回数を年14回程度から年8回に減らすと発表した。
現在、米国ニューヨークにいるのだが、米国人の市場関係者にその感想を聞いてみると(知らなかったという人ばかりだが)「FRB(米連邦準備制度理事会)も昔から年8回だからいいんじゃない」という答えが大半だった。
金融政策を決める会合は、欧州中央銀行が昨年まで年12回だったが今年から年8回になった。イングランド銀行も年8回に減らす。スイスのように年4回の国もある。
会合を減らしたがる中央銀行が近年多いのは、(1)回数が多いと事前の準備および事後的な議事要旨の作成などにスタッフが忙殺される、(2)間隔が短いと経済情勢が代わり映えしないのに会合を迎えるケースがある、(3)G7、国際通貨基金(IMF)総会などの国際会議や国会へ総裁が出席するスケジュールの調整が大変といった事情があると考えられる。特に日銀総裁は世界で最も頻繁に国会証言を行っている。
そのような中央銀行にとって、FRBの年8回は言い訳に使いやすい。ただし、年8回に合理的な理由があるのかというと、そうでもない。ニューヨークの市場関係者で「年8回が正しい理由」を説明できる人はいなかった。
日銀法施行令は1カ月に2回程度の会合開催を求めてきた。1999年は年19回だった。同政令は「相当な間隔を置いて招集する」とも言っている。そこを拡大解釈して回数が減らされてきたようだ。だが、さすがに年8回にするために同政令は変更される予定だ。
年14回は確かに多過ぎたと思うが、4割強も減らすと市場への情報発信はおろそかにならないか、と心配する人もいるだろう。
そこで、日銀は経済と物価の見通しを示す「展望レポート」の公表を年2回から年4回に増やすという(月報は廃止)。また、政策委員の「主な意見」という文章が会合1週間後に公表される。
その理由は次のように推測される。会合の議事要旨は中央銀行にとって重要な情報発信ツールだ。FRBは3週間後に発表している。しかし、日銀法では金融政策決定会合で承認しないと議事要旨を公表できないと定めている。よって、会合数を減らすと、その公表タイミングは今より遅くなってしまう。
本来ならば日銀法を改正すべきだが、前述の政令変更と異なって、日銀法改正は大ごとだ。国会に改正を諮ると、インフレ目標や雇用の最大化などを日銀の使命に盛り込む動きも起きてしまい、日銀にとってやぶ蛇となる可能性がある。そこで改正は狙わず、「議事要旨の要旨」のような「主な意見」を公表することにしたのだろう。
ところで、黒田東彦総裁は先日の講演で「ピーターパンの物語に『飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう』という言葉があります」と述べた。皆が量的質的金融緩和策の効果を信じれば、インフレ率は目標の2%に到達するという意味のようだ。
そういった期待の効果を過度に重視する政策は危うさを内包している。国民に疑念を持たれないように、うまくいっていないときも「所期の効果を発揮しています。順調です」と言い続けなければならない宿命を負っているからだ。
昨年10月の追加緩和策がサプライズになったのは、狙ったというより実はそこに原因があったと考えられる。会合の回数減少よりも、日銀の基本的な情報発信姿勢に筆者は不安を感じている。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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