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マツコ・デラックス断言「体育会系社員は30代で終わる」説を人事部長に聞いてみた
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150626-00015580-president-bus_all
プレジデント 6月26日(金)8時45分配信
■マツコ・デラックス「体育会系は40代で行き場なくす」
マツコ・デラックスがテレビ番組内で「体育会系出身の社員のリスク」について語っていた。
体育会系出身の現在40代の男性は、運動量が落ちているのに、食欲は旺盛。一流企業勤務率も高いので収入が高い。その結果、ぜいたく品摂取率が高くなり、結果として、脳梗塞や心筋梗塞の危険性が一般より高い、といった医師の指摘が夕刊紙に掲載された。
この報道に対してマツコは健康面や肉体的な問題もあるが、本当のリスクはそうではないと指摘している。マツコ曰く「30代までなら体育会系は仕事は勢いでできる。でも40代になってくると、人間の本質が問われ始める」。その結果、「行き場を無くす」と。「電通とかにそういうやついっぱいいる」と断言するのだ。
このマツコ発言は本当なのか。検証してみよう。
まず、企業がなぜ体育会系出身者を採用したがるのか。
日本の新卒採用ではスキルや専門性ではなく“素材”を重視する。文系の学生は大学でどんな勉強をしてきたかは問われない。その点、あまり勉強してこなかった体育会学生には何のハンディも存在しない。その上で体育会学生の素材の魅力は2つある。
1つは肉体的かつ精神的タフさ、打たれ強さ、忍耐力などである。金融業の人事課長はこう説明する。
「ひと言で言えば、不条理な世界を経験していること。体育会では上級生の命令は絶対です。たとえ上級生の言い分が間違っていたとしても、逆らうことは許されない。その世界を生き抜いてきた学生は不条理だらけの会社人としての耐性を備えています」
上下関係をわきまえ、たとえ本心では嫌だと思う命令でも従う忍耐力を持っている。確かにこういう人材は会社にとって使いやすいだろう。
もうひとつの魅力は、勝ち抜く力、自分を高めようとする力である。流通業の人事部長はこう指摘する。「彼ら彼女らは勝ちパターンを知っています。もちろんいろんな失敗も経験していますが、その中から勝つためにはどうすればよいのかを工夫し、努力して勝利を掴んだ経験もある。そうした成功パターンはビジネスにも通じる」
■なぜ、体育会系社員は「失速」するのか?
しかし、体育会の持つこの2つの魅力、価値を兼ね備えている人ばかりではない。
どちらかと言えば肉体的タフさを買って採用する企業も少なくない。その結果、35歳ぐらいで失速する人が珍しくない。建設会社の人事部長はその理由をこう説明する。
「20代は言われた仕事を一生懸命にこなし、こなす仕事量は誰よりも多い。営業でも挫けることなくアタックする姿勢は光っています。ところが30代になると息切れして失速する社員が出てくる。共通するのは指示された目の前の仕事だけをやり、他のことは何も考えていないというか、創造性やクリエイティビティに欠けるのです。上司に対する忠犬ぶりはすごいが、後輩や周囲を巻き込んで創意工夫しながら仕事をこなす能力が低い。その結果、昇進レースでは部下に先を越されてしまう社員もいます」
この指摘はマツコが語る「体育会系のリスク」に通じる。体力、気力で突っ走っても日々変化するビジネスについていけず、また、複雑な人間関係に躓き、職業人としての成長が止まってしまうのである。
しかも今はビジネス環境が複雑化、多様化している。作れば売れるという規格大量生産時代では、それこそ行け行けドンドン営業でうまくいった。ところが少品種少量生産、IT化の促進、産業のソフト化でビジネスモデルが変容し、より高度の専門性が求められている。体力、気力勝負では40歳になってからどころか35歳でその限界を露呈してしまうことになる。
マツコが例に上げる広告代理店業界も単純な営業ではなくインターネットなどITを駆使したソリューション営業が主流になり「20代がこなす仕事は複雑化しており、先輩の30代後半、40代が指導できないどころか理解もできないほど断絶している」(大手広告代理店の教育担当者)という。
そんな中、20代でうつになる体育会系出身者もいる。信販業の人事課長はこう語る。
「もちろん体育会系に限りませんが、体育会系の社員は突然うつが発症するのです。おそらく上下関係の厳しさを刷り込まれていて、たとえつらくても飲み込んでしまうクセがあるので、会社に入っても同じように飲み込んでしまう。周囲は気づきようがないので、突然バタッと倒れてしまう。どうも体育会系出身者の耐久性が落ちているように感じる」
落ちているかどうかはともかく、20代社員に求められる能力も高度化しているのは確かだ。前述したように文系の学生には何色にも染まっていない“無地の素材”が魅力となっているが、近年は一定の専門性を求める企業も徐々に増えている。
全体採用枠の中で会計学や法務、ITなどの知識を持つ学生枠を設けているところもある。グーグルのように高度の情報工学の知識を持つ学生しか採用しないのはその典型だ
■生き残る体育会系、落ちこぼれる体育会系
だが、体育会系がすべて35歳で失速するわけではない。
実際に部長職や取締役に上りつめた人も何人か知っている。その人たちに共通するのは2番目の魅力である「自分を高めようとする力」を持っている人だ。
体育会系ラグビー部出身の大手企業の人事部長を務めた人はかつてこう語っていた。
「20代の後半に営業成績がトップになり、有頂天になっているときに上司に叱責されたことが転機でした。上司は『お前、どんな本を読んでいる。たいした本は読んでいないだろう。大学でろくに勉強しなかったくせに本もまともに読んでいないのは、お前にとっては大きなハンディなんだよ。他のやつらの中には経済学、文学、哲学を学んできた者もいる。今は役に立たなくてもいつか役に立つものだ。この会社で偉くなりたいと思ったら毎日と勉強することだ』と言われました。そのときから閑を見つけては仕事に関係する本だけではなく、片っ端から読みましたね」
自分を高めようとする力は、学び続ける力に通じる。体育会で培った勝ち上がるための学ぶ力をうまくビジネスの世界に転用できたことが、新たな道を開いたともいえる。
単純に体力一辺倒で採用する企業の目利きの能力にも問題はある。体育会系ということで大手企業に入った社員も「学び続ける力」を失ってはならない。
溝上憲文=文
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