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ドイツ株も含め世界の主要市場は一見順調のように見える。だが世界の投資家は消極的に株を買っているだけだ。日本株も「割安」とは言えない(AP/アフロ)
日本株は、いよいよバブルの領域に入った 外国人が日本株を売る「Xデー」はいつか
http://toyokeizai.net/articles/-/74621
2015年06月25日 中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト 東洋経済
イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「年内の利上げが適切である」と改めて発言した後でも、NYダウ平均株価は1万8000ドル前後の高値圏で推移しており、日経平均株価も2万円を、ドイツのDAX指数も1万1000ポイントを大きく上回っています。
■スペインなどでも住宅ローンがマイナス金利に
このような世界的な株高の持続性は、まさに世界の金融市場の異常さによってもたらされています。時をさかのぼれば、その異常さの発端は、FRBの量的緩和やそれに次ぐ日銀の量的緩和にありますが、2015年に入ってその異常さを際立たせているのが、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和にあるのは間違いありません。
ECBが量的緩和を導入したことにより、欧州の国債利回りが急低下しています。4月〜5月のユーロ圏の全国債(短中長期すべての国債)の、実に3割がマイナス金利に陥っているのです。なぜこのような状況が進んだのかというと、資金を国債で運用しなければならない機関投資家、あるいは担保として国債を保有しなければならない銀行が、マイナス金利を異常と認識しながらも国債を買い進めざるをえなかったからです。
いまやマイナス金利が珍しくない欧州では、銀行が企業の大口預金に対してマイナス金利を課すようになってきています。なかには、個人の小口預金に対してもマイナス金利が適用される国もあるくらいなのです。おまけに、スペインやポルトガルなどでは、住宅ローンの一部がマイナス金利になっています。個人がお金を借りると利息をもらえるという異常な事態が起きているわけです。
このような状況のなかで、世界的に株式が買われる、あるいは日本株が買われる土壌が形成されているのは、自然な流れであるように思われます。国債を買う必要性がない大半の欧州の投資家は、少しでも高い利回りを確保しようとして、過度なリスクを取らざるをえなくなるからです。要するに、より高い利回りを求めて、債券から株式へと資金をシフトせざるをえなくなるわけです。
また、欧州の量的緩和と併行するように、ブラジルを除く新興国がこぞって金融緩和を拡大しているため、欧州だけでなく世界中の投資家はいま、少しでも高い利回りを得ようと懸命になっています。世界的な緩和により、かつてないほど債券から株式への資金の流れが進んでいるのです。このような有り様は、バブルの領域に足を踏み込んでいると言っても過言ではありません。
■世界の投資家は株を積極的に買っていない
ここで懸念しなければならないのは、世界中の投資家が積極的に株式を買っているのではなく、低金利市場の運用に困ったあげく、消去法的に買っているということです。
直近のFOMC(連邦公開市場委員会、6月16日〜17日)までは、金融市場は9月の利上げを警戒、アメリカ株は調整していましたが、FOMC後のイエレン議長の記者会見を受けて、利上げは12月の1回になるという観測が急速に台頭してくると、アメリカ株をはじめ、世界の株価は再び上昇に転じてきています。私はこうした背景を以前のコラムでも指摘してきました(6月4日のコラム「だからアメリカは、9月には利上げできない」を参照)。
このような状況を見ていると、米欧の金融市場の関係者はもちろん、機関投資家やヘッジファンドの運用者は、リーマンショックの教訓からあまり学んでいないように思われます。彼らはFRBによる利上げが明確になるまでは、業界全体で「ババ抜きゲーム」に興じ、ギリギリまでリスクの高い投資を積み増すつもりでいるからです。
イエレン議長が5月に「株価は割高である」と発言したのは、こういった金融市場の行き過ぎた運用に警告を与えるためでした。しかしながら、金融市場では議長の警告を無視するどころか、利上げの時期にしか興味を示していません。ですから、利上げによって金融市場の流れがひとたび変われば、株価の大幅な調整が起こりうることも考えなければならないでしょう。
日本株については、「東証1部のPER(株価収益率)は16倍〜17倍程度であり、割高感は乏しい」、あるいは「業績の裏付けがある」ということを根拠にして「株価はバブルではない」という専門家が圧倒的に多いようです。
しかし私は、いまの異常な領域に入りつつある株式市場では、過去の株価収益率との比較や円安を裏付けにした業績は、今後はまったく当てにならないだろうと考えています。
バブルが醸成されつつある状況下において、とりわけ海外の投資家が日本株の買い越し額を増加させてきています。東証の統計によれば、海外投資家は1月〜5月の合計で約2兆7700億円を買い越しましたが、その買い越し額のうち2兆円近くは欧州で金利低下が鮮明になった4月に主に欧州の投資家によってなされていたのです。
2015年の先進国の株価を見ると、日本だけが約1割の上昇を達成しているのは、ECBの量的緩和に伴って欧州投資家の買いが4月以降に急増しているのが明らかな原因でしょう。
海外投資家が日本株を買う理由としてよく言われるのが、日本企業の利益が過去最高であること、企業統治改革により株主還元が増えていることなどです。さらには、「株価収益率などの指標から見ればアメリカ株や欧州株と比べても割高感はない」という意見もよく聞かれます。
■海外投資家が日本株を容赦なく売るとき
しかし、海外投資家が日本株を買う最大の理由は、GPIFや共済組合、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日銀などが政策的な買い需要で株式市場を買い支えていてくれるからなのです。
おまけに、日銀は相場操縦まがいのETF買いを繰り返しています。というのも、日銀のETF買いは多くの場合、大引け間際に大量に発注されているからです。
仮にファンドや個人がこのような買い方を繰り返したら、証券会社から相場操縦の疑いがあると警告を受けることになるでしょう。さらには、金融庁から処分されるケースも出てくるでしょう。日銀のこのような買い方が許容されるのは、株高を維持するためには相場操縦もいとわないという国の方針があるからなのでしょう。
海外投資家は「『官制の買い』が続くかぎり、強気で買いだ」と割り切って、日本株を買っています。消去法のなかのさらなる消去法というかたちで、日本株がより選ばれやすくなっているというわけなのです。海外投資家と官制の買いが高値を追いかけ合うなかで、日銀を除いた官制の買いが2015年末にも尽きるかもしれない情勢下にあるなかで、海外投資家が次に取ってくる投資行動はおおよそ予想をすることができます。
現時点で海外投資家にある投資アイデアは、官制の買い需要が弱まるのを見計らって日本株の利益確定を進めるというものです。1990年代の「PKO」(いわゆる公的機関による株価維持策)などを振り返ってみても、官制相場の反動が大きいことは歴史が証明しています。
もちろん、それだけでも十分な投資アイデアになりうるのですが、FRBの利上げとその後の円相場の推移予想を組み合わせることによって、個人投資家が株価の高値波乱に巻き込まれないようにすることは十分に可能であるように思われます。
なお、海外投資家が日本株をいつ売ってくるのかについては、私のブログ『経済を読む』(http://blog.livedoor.jp/keizaiwoyomu/)でも今後詳しく述べる予定ですので、興味がございましたらご覧いただければ幸いです。
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