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ヤマダ電機、突然の大量店舗閉鎖で復活なるか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150625-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 6月25日(木)6時1分配信
5月末、大手家電量販店チェーンのヤマダ電機が46店舗を閉鎖した。5月25日に発表した時点ですでに3店舗を閉鎖済みであり、残りの43店舗については発表直後の閉鎖となったため、地域の消費者や従業員を驚かせた。
一方、年内に新規出店も行う予定であり、ヤマダとしては「店舗のスクラップ&ビルド」だとしている。閉店するのは、テックランドNew江東潮見店(東京都江東区)、同名古屋南丹後通り店(愛知県名古屋市)、同枚方店(大阪府枚方市)、同新南陽店(山口県周南市)など地方や郊外にある不採算店が中心。これまでの拡大路線を転換し、東京・八重洲など都市部の大型店や免税専門店といった収益力の高い店づくりに注力するとしている。
日本全国津々浦々に、家電の大型量販店舗を展開する。自社だけの店舗展開だけでは間に合わなければ、業界他社をM&A(合併&買収)して「マーケット・カバレッジの最優先」という戦略を徹底する。これが従来のヤマダの「勝てる王道戦略」だった。その結果、15年3月期末での店舗数は1016店舗にまで達していた。
この多店舗戦略について筆者は、過去に本連載記事で限界がきていることを指摘していた。
「日本に『市』は790ある(2008年時点、以下同)。『市』となる要件の一つは人口3万人以上で、つまりヤマダは日本のすべての3万人以上の地域市場に出店を終えてしまっているということだ。ちなみに人口5万人以上の都市数は541にすぎない。ヤマダの1店舗当たりの平均年商は19億円程度ということになるが、3万人規模の市には1万世帯くらいが生活すると見て、それらの商圏で全世帯が年間にヤマダの店舗で19万円程度の消費をしているという計算が成り立つ」(2014年12月12日付本連載記事より)
ヤマダの山田昇社長は今回の閉店を発表する直前の5月21日付朝日新聞のインタビューで「出店余地はなく、ビジネス・モデルを変えないといけない」と語っており、今回のスクラップ&ビルドは明確な戦略転換だと認めている。つまり全社経営戦略の本格的な変更による電光石火の大量店舗閉鎖だったのだ。そんなことができるのは、創業社長である山田氏ゆえだろう。
●相次ぐメガ・リテールの破綻
業績低迷について、山田氏の悩みは深い。連結の年商は11年3月期に2兆1500億円とピークを記録し我が世の春を謳歌したが、その後は減少の一途。15年3月期では売上高1兆6643億円(前年同期比12.1%減)、営業利益199億円(前年同期比41.9%減)、経常利益355億円(前年同期比29.2%減)という結果に沈んでいる。
実店舗の巨艦主義に走ったメガ・リテール(大規模小売企業)が破綻した例は記憶に多い。百貨店ではそごうが、総合スーパー(GMS)ではダイエーがそれぞれ一時は栄華を誇ったが、前者は小売業としては当時(00年)日本最大の負債を抱えて民事再生法を申請し、後者も経営破綻して今年1月イオンに救済合併された。
アメリカでも全米最大の百貨店チェーンだったシアーズ・ローバックが、不振のため05年に業界下位のKマートに実質救済合併された。家電量販店では全米に4400もの店舗を展開していた業界2位のラジオシャックが、今年2月に倒産した。
●試行錯誤というより迷い
では、ヤマダのようにダウン・トレンド(下降傾向)に入ってしまった業界トップ企業が復活する方策はあるのか。
率直にいえば、それは難しい。突然ではないが、恐竜が死滅するようなものだ。大きくて栄華を誇っていただけに、なかなか環境の変化に適応できない。14年末にヤマダが街の中小電器店との提携を発表した際、筆者は前出記事でこう指摘している。
「課題としては、個々の電器屋がどれだけ親切・親身になって高齢者世帯に入り込めるかだ。電器屋が製品の配置やインストールだけでなく、便利屋を兼業して家具の移動や配線工事、不要品の引き取りまで手がけるようになったら、その世帯の消費の大きな部分を引き受けられるようになる。売るモノは家電に限らず、総菜から、弁当、食材まで納品する仕組みまで視野に入る。専用タブレットを世帯にあまねく配ってしまうくらいのビジネス・モデルまで踏み込めば、ヤマダとしては一気に商機が広まるといえよう」
だが、こうした動きは本格的に起こりそうにない。
ヤマダが住宅メーカー、エス・バイ・エルを傘下に収めスマートハウス事業に乗り出したのが11年のことだったが、顕著な業績を残せていない。今年5月には「ビジネスをスピードアップするため」(山田氏)にソフトバンクとの資本・業務提携を発表したが、同社の経営方向の試行錯誤というより迷いを強く感じる。
業界の恐竜は、変化する環境に戸惑いながら徐々に体力を奪われて、足を止めてしまうのではないか。現在72歳の山田氏は、創業者でもあり社長復帰してまだ2年なので、経営意欲は高く、山田氏の目の黒いうちは大丈夫だと願いたい。
次稿では、ヤマダ電機と対照的に勢いを見せているヨドバシカメラの経営についてみていきたい。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
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