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「東京都港区」でこんなマンションが売り出されれば、「即完売」というのが今の状況。だが今は本当に買いどきなのだろうか(写真:YNS / PIXTA)
いま住宅を買うのは本当に「お得」なのか 東京都の港区に買えば絶対に儲かる?
http://toyokeizai.net/articles/-/71538
2015年06月24日 黒崎 敏 :建築家 東洋経済
家を買うならマンションがいいのか、戸建てがいいのか。都心なのか、郊外なのか。家の選び方はさまざまだが、この連載では大手住宅メーカー商品開発者を経て、現在は建築事務所APOLLOを経営する黒崎敏氏が「失敗しない家の選び方」を伝授する。第1回は「今、住宅を買うのは本当にお得なのか」。
不動産の世界では、東京都港区への絶対的信仰が存在している。「港区に不動産を買っておけば間違いない!」というものだ。東京でも港区はマーケットが特殊で、そこだけは安心できるゾーンで、さながら銀行のような固い、固い存在だとされている。
■なぜ外資系金融マンは港区のマンションを買うのか?
実は、外資系の金融マンが購入する物件も、港区のマンションが多い。彼らは職業柄、株式を購入できないことから、資産運用の手段としておカネを不動産に変えている。複数の不動産を複数の国に持つことも、さして珍しくはない。リスク分散の手段として外国に不動産を持ち、それを経費に計上したり、誰かに貸したりしている。不動産を取得することでリスクを分散させ、税金対策を行いながら、賃料収入に変えているわけだ。
これができるのは、彼らが住宅ローンを比較的容易に組めるからに他ならない。たくさんのおカネを借りることができるという意味では、高額所得者である彼らは日本でもトップクラスだ。さらに言えば、彼らには金融や資産運用の知識が豊富にあることも大きい。
そんな彼らから選ばれているのが港区のマンションなのだが、買っているのはそればかりではない。例えば、パリやニューヨークのペントハウスなども取得している。世界のメトロポリスに新築マンションができると聞けば視察に訪れ、常に情報の川上に立つ努力を欠かさない。ちなみに、彼らは必ずしも自分の好みで住宅を買っているわけではない。決め手は資産価値があるかどうかなのだ。
例えば、顧客の中には港区の新築マンションを1億円で購入し、それをわずか半年ほどのうちに「3割増し」で売却した人がいる。その顧客は、売却資金をベースにして、私が別の場所に戸建て住宅を建てる計画である。
この話が良い例だが、外資系金融マンは、分譲マンションに特に大きな愛着があるわけではないので、「売れるときに売る」というスピード感はズバ抜けている。彼らのように「購入できる財力と、運用するテクニックがあるなら、不動産は購入してもいい」というのが私の持論だが、多くの日本人はそうした知識もテクニックもないのが現状である。
■今買うのは「リスクが高い」と言えるワケ
長く住む場合はたくさんの積立金が必要になり、遅かれ早かれ自分自身も理事として住民の世話をすることを余儀なくされるなど、さまざまな「コスト」が発生する。買った方が良いのか、借りる方が良いのかについてはさまざまな議論があるが、ことおカネの面だけで言うならば、現段階で買うことは非常にリスクが高いと言わざるを得ない。
ではなぜそう言えるのか。理由の一つは、市場にあまり良い物件が存在していないということだ。現状は建築関連の人件費が上がりすぎているため、物件の品質は相対的に下がっている。
また、高く売れるマーケットが限られていることも問題だ。確かに港区の物件は高く売れるが、ブランドのない他のエリアでは高値はつかない、というような時代に入っていく可能性がある。
一方で、絶対価値の高いものが存在しているのも事実だ。例えば建築家によるデザイン性に優れたマンションがそうだ。これらを求める人がピンポイントでたくさん増えれば、時間が経過しても値崩れせず、反対にプレミア価格で売れる時代になるかもしれない。
また、「場所そのものを購入する」という発想もあるだろう。例えば東京都の表参道に家を買う場合、場所そのものの価値を購入することになるため、必ずしも物件そのものに価値がある必要はない。戸建て住宅の場合は、住環境を買うことになるので街並みの善し悪しは重要になり、近隣や周辺の空気感が決め手になってくる。
対して、マンションの場合には、駅からの距離などが価値に直結することが多い。同じ住宅であっても価値の基準はかなり違うのだ。一戸建ての場合は、むしろ駅から離れた落ち着いた住宅地が好まれる場合もある。港区の物件を持つオーナーには、そういう人が少なくない。
外資系金融マンには、都心のタワーマンションを買うだけでなく、別荘を建てるとか、別荘と会社の間に小さな家を建てて、子どもが小さいときにはそこに住むといった具合に、住宅を分散して持つ人も多い。
ただし、タワーマンションには飛びつくものの、低層マンションは選ばない傾向も強い。彼らが気に入るような低層マンションが市場になかなか存在しないからだ。それならば土地から購入し、自分が住みたいように建ててしまおうというのが彼らの発想だ。リセール(転売)がスムースにいくよう自由に建てたいという考えが強いのだ。
■日本の家の寿命を延ばすためには?
もっとも、現在のところは、100%確実にリセールできるマンションや一戸建てというものは存在しない。だが、これからは出てくる可能性もある。今でこそ路線価やブランドエリアなどでしか人気は担保されないが、「誰が見てもいいよね」という審美眼は、時間とともに流通していくだろう。そういうものを、少量でもきちんとつくっていけば、実はそれがもっとも安全と言える時代が来るかもしれない。
日本では基本的に私有地に家を建てることから、家に対しては「自分の所有物」ととらえる傾向が強い。それに対して、諸外国では、国有地や都市の景観規制が強いエリアに建てることが多いため、共有物と捉える傾向がある。
そのため、日本ではエクステリア(外観)もインテリアも全て自分で自由にできる権利があることから、家が住む人にフィットし、カスタマイズされすぎる傾向が強い。つまり、「自分化されすぎるため、他人が使いづらくなり、結果的に価値を落としてしまっていることが多いのだ。
自分のやりたいことを全部盛り込んでくれるマーケットが確立し、それが集まって街が出来上がっていると、リセールが難しくなるというなんとも皮肉な現象だ。「自分化」ばかりしていくと、着ない洋服がクローゼットの中に溜まっていくのと同じで、他の人にはフィットしなくなるものだ。だからこそ、スクラップアンドビルドが増え、家の寿命がいつまでたっても一向に伸びないのだ。
であるならば、もう少し良質のスケルトンをつくるべきではないだろうか。たとえば、美術館のギャラリーのようなシンプルで美しい箱のような住宅だ。
いろいろな人たちがターミナルのように流入流出していく、さながら駅のような空間を家に見立てて、つくっていく。住宅専用につくるのではなくて、とにかくあらゆる用途に使える空間がいい。オフィスになっても、住宅になっても、お店になっても、変化を受け入れる許容力、フレキシビリティーがこれからの住宅には必要だ。もし仮にそのような建物が主流になれば、不動産の流通も極めて安定するのではないだろうか。
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