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古典派の思想と逆行する現実を踏まえたマルクス『共産党宣言』の趣旨は経済政策だった!
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投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 24 日 12:15:50: tW6yLih8JvEfw
 


これならわかるよ!経済思想史
【第5回】 2015年6月24日 坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

古典派の思想と逆行する現実を踏まえたマルクス『共産党宣言』の趣旨は経済政策だった!

【マルクス経済学】
前回まで古典派経済学について紹介してきました。古典派の思想とは逆行するかのように発生した現実の問題に対応するため、ほぼ同時期に生まれたのがマルクス経済学と新古典派経済学です。まず今回は、マルクス経済学について生まれた背景とともに説明していきます。

?自由主義・保守主義の政治思想と結ぶ古典派経済学の時代が、18世紀後半から19世紀後半まで約100年間続いたという話をしてきました。

受講者?100年で古典派経済学は広く普及したんですか。

?普及したと言っても実は英国が中心で、ドイツ語圏はまったく違う状況でした。その背景から説明していくね。

?古典派経済学は、当時の世界経済の覇権国家である英国で誕生したんでしたよね。政治思想の自由主義と一体の関係であると説明しました。

?古典派の世界観では、市民社会の自由と自由貿易が国家と国民の富を増やすわけだから、ヨーロッパは平和に繁栄してよいはずなのに、実際は戦争が続きました。19世紀中葉は産業革命と市民革命でたしかに経済成長したけれど、海外植民地の争奪戦が激化していたのです。

?各国とも軍事費が増大します。また貧富の差が拡大し、対応するためにも財政危機が進みました。小さな政府ではなく、大きな政府になっている。古典派経済学とは逆行する現実があったわけだね。このころ、マルクス経済学と新古典派経済学がほぼ同時期に生まれます。今回はまず、マルクス経済学が生まれた背景を整理していきます。

民族独立・王制打倒をめざす革命運動が激化

?19世紀中葉の強国は、英国、フランス、オーストリア(ハプスブルク帝国)、ロシア、プロイセンといったところで、オスマン帝国も東欧や北アフリカに領土を広げていました。

?各国とも軍事費が増大し、小さな政府ではなく、大きな政府になっている。貧富の差は拡大し、対応するためにも財政危機が進みました。古典派経済学とは逆行する現実があったわけだね。

?19世紀から20世紀にかけて、世界には8つの帝国が存在し、勢力圏を争いました。8つの帝国の始まりと終わりを挙げておきましょう。古い順ね。

・オスマン帝国(1299−1922):帝国崩壊後、一部はトルコ共和国に
・大英帝国(16世紀−):第2次大戦後に植民地の多くは独立
・オーストリア帝国(ハプスブルク帝国)(1526−1918):オーストリア革命で王政から共和政へ
・ロシア帝国(1721−1917):ロシア革命で王政から共産党独裁国家(1991年にソ連崩壊)
・アメリカ(1776−):第2次大戦後に植民地の多くは独立
・フランス(1789−):仏革命後は共和政、帝政、王政、第2共和政、第2帝政、第3共和政、第2次大戦後第4共和政、ドゴール第5共和政と変遷。第2次大戦後に植民地の多くは独立
・日本(1868−1956):第2次大戦後に帝国憲法から日本国憲法へ、植民地は解放される
・ドイツ帝国(1871−1918):ドイツ革命で王政から共和政へ(1933年から45年までナチス独裁)

?このうち、第1次大戦時(1914−18)のヨーロッパの5大帝国はオスマン、英国、オーストリア、ロシア、ドイツです。自由貿易どころか、勢力圏を軍事力で支配する帝国主義の時代だったわけです。

?19世紀の帝国の時代を経済学の歴史でみると、ナポレオン戦争後の1815年にウィーン体制でアンシャンレジーム(旧王国支配体制)に復帰します。ナポレオンが封鎖していた英国と大陸ヨーロッパの貿易も復活しますが、このときに穀物法撤廃をめぐってリカードの比較優位説が登場したわけだね。

?この時代になると、18世紀の市民革命ではなく、民族独立・王政打倒をめざす19世紀の革命運動が続く。1848年のフランス2月革命では第2共和政が始まり、ついにフランスで王政が終焉します。これが飛び火して3月革命がオーストリア、プロイセン、イタリアなどで起き、民族独立運動、反王政運動が激化します。「王政打倒、労働者の政府を」と求める社会主義革命まで出てくることになる。

?1848年の革命はフランス以外、政府に鎮圧されてしまうわけですが、各帝国政府は妥協の政策も取り入れます。たとえばオーストリアは被支配国のチェコに、ある程度の自治権を認め、ハンガリーを同じハプスブルク王を戴く二重帝国の形式にします。大幅に領域内の自治権を拡大したわけです。

?この時期に、カール・マルクス(1818?1883)が登場する。マルクスは有名な『共産党宣言』を3月革命の直前、2月に出版します。フリードリヒ・エンゲルスとの共著です。そして1867年に『資本論』第1巻もロンドンで出版しました。

英国経済を分析してまとめられた『共産党宣言』

?『共産党宣言』は「万国のプロレタリア団結せよ!」と書かれているし、革命の扇動文書だと思っているでしょう。ちょっと違うんだ。たしかに、冒頭はこんな文章です。

「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である。ふるいヨーロッパのすべての強国は、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる。」
「支配階級をして、共産主義革命の前に戦おののくよ。プロレタリアは、革命においてくさりのほか失うべき何ものをももたない。かれらが獲得するものは世界である。万国のプロレタリア団結せよ!」(マルクス、エンゲルス『共産党宣言』大内兵衛、向坂逸郎訳、岩波文庫、1971)

?なんだか扇動ビラみたいだけど、本文の内容は経済政策です。英国は1873年から大デフレが23年間も続いた。「失われた20年」だね。この大デフレの前から恐慌がたびたび起きていたのです。こうした経済危機をどうするのか、マルクスは資本主義が必然的に陥る経済危機から脱するための社会主義政策を『共産党宣言』で挙げています。『資本論』もそうだけれど、マルクスは英国経済を分析し、資本主義の運動法則と危機打開策を描いているんです。

受講者?読んだことないし、知りませんでした。具体的にはどのような政策だったのですか。

?では、マルクスに教えてもらいましょう。

?マルクスは『共産党宣言』で最も急進的な政策をまず述べています。続いて経済の発展段階による各国の差を考慮する必要があると説いています。そして、おしなべてとりうる一般的な社会主義政策について10項目を列記しています(一部中略。カッコ内は筆者の注釈)。

≪マルクス前掲書からの引用≫

?「プロレタリア階級は、その政治的支配を利用して、ブルジョア階級から次第にすべての資本を奪い、すべての生産用具を国家の手に、すなわち支配階級として組織されたプロレタリア階級の手に集中し、そして生産諸力の量をできるだけ急速に増大させるであろう。(略)この方策は、もちろん、それぞれ国が異なるにしたがって異なるであろう。とはいえ、もっとも進歩した国々にとっては、次の方策はかなり一般的に摘用されうるであろう。

(1)土地所有(私有)を収奪し、地代を国家支出に振り向ける
(2)強度の累進税
(3)相続税の廃止
(4)すべての亡命者および反逆者の財産の没収
(5)国家資本および排他的独占をもつ国立銀行によって、信用(マネー、金融システム)を国家の手に集中する
(6)すべての運輸機関を国家の手に集中する(鉄道の国有化)
(7)国有市場、生産用具の増加、共同計画による土地の耕地化と改良
(8)すべての人々に対する平等な労働強制、産業軍の編成、特に農業のために(農業の生産性向上=生産力を上げること)
(9)農業と工業の経営を結合し、都市と農村との対立を次第に除くことを目指す
(10)すべての児童の公共的無償教育、今日の形態における児童の工場労働の撤廃。教育と物質的生産との結合、等々、等々」

==================================

?このマルクスの10の方策(処方箋)のいくつかはその後、資本主義国でも採用されているんだ。

?たとえば(2)累進税はほとんどの国で採用され、21世紀のピケティは資産税を強化すべし、と言っている。(5)銀行の国有化は金融危機になると日本、米国、ヨーロッパで採用された。(9)農業と工業の統合なんか、安倍政権の農協改革に近いかもしれません。(10)子どもの教育や保護も資本主義国で採用された。つまり、資本主義救済策とも読めるでしょう。20世紀後半には、資本主義諸国が大半のマルクス政策を取り入れているんだよね。

?マルクスはプロレタリア独裁政府による市場への介入政策を書いているわけです。民主主義国家でも法案が議会を通れば政府の大規模な介入はできるわけだからね。

?じゃあマルクスは正しかったのか、というとそうではない。やはり共産党独裁政権による支配体制は、結局うまくいかなかった。J・S・ミルが言うように、個人の自由と主権を認めない体制は続かない、ということでしょう。最近では、大学でもマルクス経済学の理論についてほとんど教えていないので、次回はそのポイントだけ説明していきます。
http://diamond.jp/articles/-/73655
 

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コメント
 
1. 2015年6月24日 19:34:28 : cs1U8BPnHM
マルクス主義のキモ。

「能力に応じて働き必要に応じて取る」

健康保険などマルクス主義そのものか。言葉のとおり。
義務教育費は公共資金で、このあたりもマルクスか。
労働者の集団交渉権、スト権。これも。

年金は死んだらもうもらえない必要がないからだ。これもマルクス主義。
しかしそのすべてが市場原理主義者から攻撃され骨抜きにされかけている。
今の社会に必要なのはむしろマルクスの精神。


2. 2015年6月25日 12:40:32 : GpYSA1qr2Y
強欲な連中から思想対立の為に利用された。
多くの人が幸せに暮らすためのヒントが
隠されているような気がする。

3. 2015年6月25日 23:40:13 : vbdfV5xYcA
>「能力に応じて働き必要に応じて取る」

まずは「能力に応じて働き能力に応じて取る」段階から。
その後、生産力が向上し商品の希少性がなくなった段階で、
「能力に応じて働き必要に応じて取る」ようになる。


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