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保険が負担になってしまうのはなぜ?(写真:makaron* / PIXTA)
パッケージ化された保険に入ってはいけない 保険は簡単でわかりやすい商品なのに……
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2015年06月24日 橋爪 健人 :保険を知り尽くした男 東洋経済
皆さんは家電製品をどのように選んでいますか。たとえばパソコンを買う時、何を基準に選ぶのでしょう。まず大きなポイントは価格でしょうか。量販店の店員は最初に「ご予算はおいくらでしょう」と聞いてきます。価格帯により買えるパソコンの種類や範囲がおおよそ決められてしまいます。だから価格は最大の判断ポイントです。
次はパソコンの性能でしょう。サクサク感のある処理能力の高いパソコンはその分値段も高くなります。ですから自分の納得できる性能を見極め、予算の範囲内から機種を選ぶことになります。メーカーのブランドにこだわる人もいるでしょう。デザイン(形、色)も大事なポイントです。好みのデザインであれば、性能は同じでも使っていて楽しさが違います。さらに付随するサービスもポイントのひとつです。パソコンに不慣れな人は購入後のアフターサービスも気になることでしょう。
■保険選びのポイントを整理しよう
では保険を選ぶ際のポイントは何でしょう。パソコンでは、価格、性能、ブランド、デザイン、付随サービスなどでした。この内、保険にも当てはまるものはどれでしょうか。一般的に保険にブランドやデザインを求める人は少ないと思われます。サービスはどうでしょう。保険に入った後のアフターサービスが思い浮かびますが、生命保険にあまりアフターサービスは必要でありません。ケガ、病気、死亡の場合の保険金の請求、あるいは入っている保険契約の内容照会ならば、保険会社に電話すれば、それですべてこと足りてしまいます(自動車保険では事故処理サービスに違いがあるだろう、と考える消費者はいるようです)。
そうなると、結局、保険の場合は価格と性能だけが残ります。このことは保険がマーケティング論で言う差別化の難しいコモディティ商品(ありふれてしまい、どれも大差がなくなっている商品)であることを意味します。ですからこの考え方に立てば、保険は選びやすい、わかりやすい商品のはずです。保険の価格は「保険料」、保険の性能は「保障額」です。この2つを比べるだけでよいのです。
■わかりにくさの元凶は「パッケージ」
「保険料」は一目瞭然です。ところが、現実には「保障額」が意外とわかりにくいのです。そして、そこに保険をわかりにくくしている仕掛けがあります。それが「パッケージ」です。パッケージ化(多機能化)はマーケティング理論の説く差別化戦略のひとつです。保険会社は理論の通り行動しています。一般的な保険商品には一つの保障だけでなく、その他の多くの保障が詰め込まれているからなのです。
たとえば、主だったものだけでも、死亡、医療、傷害の保障機能、それに加えて貯蓄機能が盛り込まれていたりします。標準的なものは、死亡保障に貯蓄が付き、さらに医療保障が組み込まれている保険です。詳しく見ると、死亡の中身も病気や災害に分かれ、医療も入院、通院、手術などがありますから、パッケージ保険はまるで保障のデパートのようです。
保険営業員は「すべてカバーされているので、これ一本で大丈夫です」と自信ありげに説明するかもしれません。でも消費者から見れば、使わないアプリケーションがやたらプレインストールされているパソコンのようなものです。余分なものまで買わされています。いろいろ詰め込まれているために、一つひとつの保障をきちんと理解するのは容易ではありません。
「保険はわかりにくい」と多くの人たちが感じている原因はここにあります。あれもこれも詰まっているパッケージでは中身が分からないのも無理ありません。保険営業員ですら、きちんと説明できない人が多いかもしれません。
しかし、これへの対応策は簡単です。パッケージを壊してしまえばよいからです。いったん分解して、不必要な保障を取り除き、必要な保障だけにスッキリさせてしまえばよいのです。すると保険の「費用」対「効果」が見えてきます。そして保険選びは簡単になります。
最初に取り除くのは貯蓄機能です。「保障」と「貯金」はまったく別のものです。ところが多くの保険は当たり前のように保障と貯金がセットされています。例えば、終身保険という保険はひとつの保険商品と思われますが、実は保険と貯金の二つがパッケージ化されているものです。パソコンとプリンターがセットで売られているようなものです。本来はそれぞれがバラバラで売られてしかるべきものです。パソコンだけを買いたい場合、プリンターは余分です。だからプリンター除きの価格を確認して、他のパソコンと比較すると思います。同じように、保険は保障が目的ですから、貯金部分は余分です。貯金部分を取り外すと、保険はすべて掛捨て保険になります。保障を目的とするならば、保険は掛捨てでよいのです。
それでも、まだ余分な保障がパッケージのなかに入っていることがあります。例えば、死亡保障がほしいのに、入院すると1日につきいくらかの給付金がもらえるような医療保障が付いていたりします。「医療は特約なので安くてお得ですよ」と言われ「それならばついでに付けておくか」とついついそのまま入ってしまいます。これが間違いのもとです。いくら安くてもいらない保障はムダに過ぎません。パソコンについている、使わないアプリと同じです。迷わず取り外してしまいましょう。
■保険に「安かろう、悪かろう」はない
ここまで保険をシンプルにすると、目的の保障だけのスッキリした保険になります。たとえば、定期保険(一定期間を保障する死亡保険)のようなイメージです。シンプルなので「費用(保険料)」対「効果(保障額)」が簡単に比較できます。
ここまで整理すれば、あとは一番保険料の安い保険会社を選べば終わりです。たとえば、「10年間、死亡保障1000万円の死亡保険」ならば、いくつもの保険会社の保険料を簡単に比較することができます。保険はコモディティ商品なのですから安いほどよいのです。保険に「安かろう、悪かろう」はありません。「安かろう、よかろう」が保険です。
パッケージ保険は消費者のためでなく、保険会社側の事情によってつくられた保険です。その仕組みの狙いは3つあります。
ひとつ目は、他社の保険商品と簡単に保険料の比較ができないようにするためです。消費者が簡単に価格を比較できるようになると、商品の値崩れ現象が起こります。そうなると利益が極小化され始めます。保険が住宅ローンのようにコモディティ化されることを、保険会社は何とか避けたいのです。
2つ目はパッケージ化することで手数料の高い保険を潜り込ませやすくなります。たとえば、死亡保険に手数料が厚めの医療特約を付けることで利益をさらに上乗せできます。そもそも利益率の高い(=手数料が高い)死亡保険に医療保険を付加することで、保険会社にとって「2度おいしい」ことになります。保険営業員や保険代理店に支払う販売手数料の財源はこのようにつくられます。
3つ目は保険営業員にとってパッケージ保険は「売りやすく」しかも「販売手数料が高い」からです。「これ一本で大丈夫」という説明は簡単です。しかも消費者に対してそれなりの説得力を持つ話法であることも事実です。そして単品の保険と比べると、パッケージ保険は保険料も高いですから販売手数料もその分大きいので魅力があります。
このように保険会社にとり、パッケージ化することのメリットは大きいのです。しかし消費者にとってパッケージ保険は百害あって一利なしです。
保険選びも「シンプル・イズ・ベスト」でなければなりません。
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