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熊澤啓三氏
トヨタ役員逮捕 社長会見、極めて異例の危機管理に“7つの驚き” 他社は真似厳禁?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150624-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 6月24日(水)6時1分配信
--トヨタ自動車としては初の女性役員、ジュリー・ハンプ常務役員(広報担当)が麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されたことを受け6月19日夕、同社の豊田章男社長が緊急記者会見を行いました。今回は、PRコンサルティングや広報関連セクションのアドバイザリーサービスなどを手掛けるアーサメジャープロ代表取締役であり、自動車業界にも詳しい熊澤啓三氏が、企業の危機管理・対応の視点より本会見について解説します。--
本会見は率直にいって極めて異例であり、会見のタイミングやコメント内容には驚いた部分があります。同じ局面に置かれた企業の危機広報対応はどうあるべきか、その考察の一助となるべく、企業の危機管理コンサルティングを生業にする立場から同会見内容について検証してみます。具体的には、危機対応視点から「7つの驚き」を列挙しつつ述べていきます。トヨタに対してやや厳しい評価も含まれますが、尊敬する同社への「激励の喝」として受け取ってもらえればありがたいと思います。
また、本会見についてテレビなどのメディアは早急の対応を概ね好意的に評価していますが、これは業績も良く日本一注目度の高いトヨタであり、かつ会見の主が創業家出身で日頃から言動が注目されている豊田社長だからであるという点を割り引いて考慮すべきです。他社は絶対に真似すべきではありません。
●驚き1
まず今回の事案は、ハンプ氏の個人的な犯罪容疑であり、2009年に米国で起こった同社の大規模リコール問題とは本質的に異なります。リコールは経営の根幹に関わりかねない経営問題であり、経営トップは捜査当局とは別に市場に対して、早期の段階で事実関係について説明責任を果たさなければなりません。
しかし、今回はあくまでも個人的な犯罪容疑であり、しかも捜査段階のため事実関係がよくわからない段階なので、所属企業のトップが具体的に言及できる内容は少ないはずです。実際に会見をみてもそうでした。したがって、あの時点ではメディアに対して資料を配布するなどの「コメント対応」でよかったのではないでしょうか。会見に臨むことで、不用意な発言をしてしまうリスクさえ懸念される場面でもありました。
●驚き2
豊田社長が役員を含む従業員を子どもに喩え、その擁護と行動に対して責任を明言した点も異例でした。トヨタには全世界で約40万人の社員がいますが、業務外での個人的なトラブルについてまで経営トップが責任を負わなければならないのでしょうか。一部の人に対しては「社員に温かい会社」という演出効果はあったようですが、日本を代表する会社の経営トップが、この局面で示す意思表示としては妥当ではありません。
●驚き3
逮捕されたのが初の女性役員ではなく外国人でもなく、日本人役員だったら会見していたでしょうか。抜擢人事を意識して、その任用方針に対する疑問と任用責任を問われるのではないかと危惧しての記者会見だとすれば、今回はあくまで個人的な犯罪容疑であり、社業とは無関係のため、その必要性は非常に低かったといえます。
●驚き4
本会見が今後、トヨタや他の企業の危機対応における悪しき前例になり得るリスクがある点も危惧されます。個人的な犯罪容疑に関して起訴されたり有罪が確定したりする前に記者会見をすること自体、一部の例外を除いて企業の危機対応を長年見てきた筆者にとっても異例のことです。今後同様のことが発生すれば、「トヨタも記者会見したのだから」と記者会見を安易に要求されるようになります。
メディアから逃げて記者会見を開かなくていいと勧めているわけではありません。しかし、会見を開く企業側にとっても、企業の顧客や投資家といった重要なステークホルダーにとっても利点があるものでなければ、トップが記者会見を開く意義はありません。現在企業で広報などリスク管理に携わっている責任者は、今回のトヨタの対応にかなり困惑しているでしょう。
●驚き5
ハンプ氏の犯罪容疑について、「法を犯す意図がなかったことを信じている」と豊田社長は会見で述べましたが、この発言内容は少々ピントがずれているという印象を与えたのではないでしょうか。トヨタが重視すべきは「犯罪の有無」であり、犯罪の意図があろうがなかろうが違法と判断されれば社内規則などにしたがって処分をすればよい。「法を犯す意図がなかったと信じている」という発言は「子どもは守るべき理論」に基づくものでしょうが、市場や消費者が注目するのは、有罪が確定した後の企業の迅速な処分であり、早期の後任選定です。
トヨタは、もし捜査によって犯罪の意図がないという公算が高まった場合、「違法だが擁護し続ける」との意思表示をするつもりなのでしょうか。中途半端に「従業員は家族」というイメージを訴求するのではなく、犯罪行為には会社として厳しく対処するという毅然とした対応を示すべき局面でした。
●驚き6
この緊急記者会見によって、テレビなどでのメディア露出量を大幅に拡大させてしまったことも、危機管理上好ましいとはいえません。企業の危機対応のイロハとして、「いかに危機事案の露出を抑制し、ブランドの毀損を最小限にとどめるか」という点があります。このイロハに照らしても、今回の対応は疑問です。仮に有罪が確定した場合には、もう一度記者会見を余儀なくされ、再び悪いイメージが広がります。一部の例外を除き、通常は有罪確定後の1回の記者会見で済む事案です。
●驚き7
女性の登用、グローバル化対応の視点で、ハンプ氏登用は今年の役員人事の目玉でしたが、その抜擢人事が個人の犯罪容疑によって裏目に出るかたちとなりました。その任命責任を必要以上に追求されることを恐れた豊田社長が、記者会見を設定したと筆者はみています。これを「先手を打った」とみるか、「焦った」とみるかは分かれるところですが、筆者は後者と受け止めました。
豊田社長がやるべきことは、有罪確定に備えた対応と、社外から経営幹部を迎える際の「身体検査」、さらにコンプライアンス教育をどのように強化するのかを検討し、迅速に公表することだと思われます。
●総括
ここ5年ほど、大手企業を中心に危機管理や危機対応への準備・研修が徹底される傾向が強まる一方、過剰に「早期対応」した結果、危機管理に失敗したケースもみられます。企業の担当者はもちろん、筆者らのようなコンサルティング側も「早ければいい」という一本調子は厳に慎むべきです。今回のトヨタ会見が、結果としてそれに該当しないことをお祈りします。
(文=熊澤啓三/アーサメジャープロ代表取締役)
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