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ギリシャ・アテネの中心街で、「欧州の刑務所からギリシャを助けよう」と落書きされた塀の前を通り過ぎる男性〔AFPBB News〕
代金支払いや債務返済をやめたギリシャ中間層 緊縮財政がもたらした厳しい調整
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44120
2015.6.24 Financial Times JBpress
(2015年6月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャの首都アテネの小さなアパートで、マルガリータさんは木の床の上にあぐらをかいて座っている。その周りには、家族の持ち物が入った段ボール箱が山積みになっている。
「亡くなった両親の家に住むことになるなんて、思ってもみませんでした」。42歳のマルガリータさんはこう語る。
3年前に勤め先の銀行を解雇された夫のジョージさんは、2つの寝室と1つのバルコニーがあるこのアパートに防犯シャッターを取り付ける職人たちを見守っている。
16歳になる娘のクリスティーナは、狭いキッチンでコーヒーをいれている。
名字を明かさないでほしいというこの3人家族は、アテネ北部の郊外にある邸宅から都心の住宅街に引っ越してきた。住宅ローンがデフォルト(債務不履行)になるのを回避するためだ。
■住宅ローンは2度再編、子供の学費は1年分滞納
「銀行にいる昔の同僚たちのおかげで、債務再編を2度行うことができましたが、それでも返済を続けられなくなってしまったんです」。現在は投資コンサルタントとして苦労しているジョージさんは言う。「本当にお先真っ暗という状況でしたが、借り手が見つかり、引っ越すことができました」
この家族はまだ、娘が通う私立のインターナショナルスクールの学費を1年分滞納している。ジョージさんによれば、この支払いの優先順位は高くない。同じ境遇の親がたくさんいるため、払えなくて恥ずかしい思いをすることはもうないという。
ギリシャでは、かつて裕福だった中間層の間でそうした戦略的デフォルトがごく普通に行われるようになっている。この国では2001年にユーロが導入された後、国内銀行が手の届く金利での貸し出し競争に走り、多くの人々が多額の借り入れを行った。
金融危機が発生しても、こうした人々はライフスタイルを変えたがらなかった。
所得水準は上昇し続けてイタリアやスペイン並みになる、これは一時的な落ち込みにすぎないと信じて疑わなかったからだ。
しかし、その後、厳しい調整を強いられることになった。蓄えは大幅に減り、国のごく近い将来すら不透明である――ギリシャはデフォルトし、ユーロ圏から離脱するのだろうか――ことから、多くの人々が支払いを完全にやめ、経済活動が事実上凍結されてしまっている。
■不払いが横行し、経済活動が事実上ストップ
例えば、今年5月の税収は予算目標を10億ユーロも下回った。非常に多くの人が税金の申告をやめてしまったからだ。このため、賃金や給料の支払い、さらには外国の債権者への元利返済のために現金をかき集めている左派政権には、これまで以上のプレッシャーがかかっている。
ギリシャ政府自体も納入業者への支払いを先日凍結し、不払いの連鎖に手を貸している。その余波で経済の大半を占める小企業の経営が苦しくなり、解消に何年とは言わないまでも何カ月もかかる延滞の山ができてしまっている。
「企業間の代金の支払いはほぼ止まってしまった」。アテネのあるビジネスマンはこう言う。「先日付小切手を書き換えるだけに終わっている」
債務再編を行った住宅ローンの約70%で元利返済が止まっているという(写真はギリシャの首都アテネ)〔AFPBB News〕
ギリシャの銀行にとっては、戦略的デフォルトによって元利返済が滞っている住宅ローンは格別に頭の痛い問題になった。
その理由はいくつかあるが、特に厄介なのは、急進左派連合(SYRIZA)の率いる政権が低所得の住宅保有者を差し押さえから守ることに全力を尽くすと話していることだ。
ある銀行幹部は言う。「モラルハザードの問題がある・・・債務再編を行った住宅ローンの約70%で元利返済が止まっている。差し押さえは邸宅の持ち主にしか行われないと思われているからだ」
かつて広告会社の役員として成功していたディミトリスさんは、会社が事業をたたんだ3年前、まだ新しい屋根裏部屋を破格の安値で投げ売りした。借金の返済に充てるためだった。
「今でも、もう使う余裕のないクルマとモーターボートのローンが残っている。休暇のために借りて、すっかり忘れていたローンもある」と彼は言う。「今は母親と一緒に住んで仕事を探し、銀行から新しい債務再編の提案が来るのを待っているところです」
6年間にわたって疲弊した状況で暮らしてきた後、ギリシャの中産階級は祖父母から相続した貴重な財産を手放すことにも慣れた。
■代々受け継がれた家宝も売却
次第に、オスマン帝国時代の宝飾品やパリで修業した19世紀のギリシャ人芸術家の絵画、さらにはビザンチン時代の聖像や古代ギリシャ、ローマ時代の硬貨のコレクションまでもが現金と引き換えに個人ディーラーに売られるようになっている。
「家宝には大きな闇市場がある・・・多くの人は家宝を手放さねばならないことに羞恥心を感じるから、あまり語られることがない」。ジュネーブに本拠を置くアンティークディーラーの鑑定士を務めるアンゲロスさんはこう言う。「バイヤーにとっては、本物の経済的混乱が起きた時だけに訪れるチャンスがある・・・ギリシャでは、第2次世界大戦以降は起きなかった」
一方、昨年マーケティングの仕事を失ったマルガリータさんは両親のアパートで、以前楽しんでいたが、今では手が届かなくなった小さな贅沢を数え上げている。外国での休暇やヨガ教室、毎年1つ買っていたプラダのバッグなどだ。
「景気がよかったころは、これらすべてを当たり前だと思っていました」と彼女は言う。「けれど、あの人たち(SYRIZA)の指揮下でギリシャが向かっている方向を考えると、自分が再びこうしたものを手に入れる日が来るのか疑問に思います」
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