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悪用される成年後見制度 認知症患者60%が経済被害受けた〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150623-00000002-sasahi-soci
週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋
認知症患者が推計500万人の時代に突入した日本。ある調査では、その6割が詐欺や余計な買い物などの経済被害にあった経験があるという。患者の急速な増加で法制度も対応できず、むしろ悪徳業者に食い物にされるケースが目立つ。
最高裁判所の調査によると、成年後見制度の利用者数が増え続けるなか、解任される後見人の数もそれに比例して増えている。13年に解任された後見人は565件にのぼり、うち、財産の横領など不正行為を理由に家庭裁判所が職権で解任した「職権解任」は380件だ。これは、解任件数の約67%を占める。
被害金額も大きい。同じく最高裁の調査によると、後見人の不正は10年6月から14年12月までに2551件判明していて、被害総額は約196億円。それでも、この数字は氷山の一角だとされる。後見人についての苦情窓口を設けている一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表は言う。
「後見人の不正行為は家庭裁判所でも確認することが難しい。後見人が定期的に家裁に提出する定型の書面では、現場の状況は把握できないからです。相談する場所もなく、泣き寝入りする人も多いはずです」
問題が発覚すると、解任される前に自ら辞任するケースもあり、統計には出てこない。
日本成年後見法学会の理事長で中央大学教授の新井誠氏は言う。
「この制度は、日常生活を送る能力が弱くなった高齢者をサポートするものです。そのためには、後見を受ける高齢者の親戚や介護関係者との協力は不可欠。弁護士や司法書士という国家資格があり、行政手続きや契約書の作成に慣れていれば、適任ということではないのです」
統計では、親戚以外の第三者が後見人になるケースが増えている。00年には後見人の9割以上が配偶者や子どもなどの親戚だったが、14年には35%にまで下がり、専門家などの第三者が65%を占めるようになった。
背景には、親戚が後見人になると、本人の財産を自分の財産のように扱ってトラブルになるケースが多くなったことがある。そのため、家庭裁判所が選任する法定後見人では第三者が増えてきた。
第三者で増えているのが、弁護士(前年比18.6%増)と司法書士(同19.5%増)だ。ただ、弁護士や司法書士の一部には、後見人になることをビジネスと考えて割り切っている人もいるという。制度に詳しい関係者は、こう話す。
「ある弁護士は、『後見制度というのは依頼人に会わなくていいからラクな仕事だ』と豪語していました。仮に月に2万円程度の報酬でも、10人の後見人になっていれば毎月20万円の収入になる。高齢者を守る制度だという意味がまったくわかっていない」
首都近郊に住む古谷英治さん(仮名・70代)も、弁護士の後見人に悩まされている一人だ。
古谷さんは子どもがいない。妻に先立たれたあと、軽度の認知症と診断されたこともあり、弁護士の後見人がついた。
ただ、古谷さんは今でも日常生活を一人で送ることができ、一見しただけでは認知症と診断されているとは思えない。それが、この弁護士は古谷さんの通帳を取り上げてしまった。さらに、貯金の残高を照会しても教えてくれない。古谷さんは元公務員で毎月20万円程度の年金収入がある。にもかかわらず、後見人から振り込まれる生活費は毎月7万円だけ。付添人がいれば旅行にも出かけることができるのに、手元に現金がないために遊びに行くこともできないという。
「妻の資産だったアパートも、知らない間に売却されていました。弁護士は口頭で私に確認したと主張していますが、そんなことはありません。本当に生活に困っています」(古谷さん)
(本誌・西岡千史)
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