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黒田日銀総裁が円安を牽制する発言をし、為替市場は大混乱に。日経平均も急落した 世界の未来はイエレン議長の手腕にかかっている〔PHOTO〕gettyimages
独占公開 いま有力投資家たちが競って読んでいる 世界最大のヘッジファンド・マネジャーが顧客だけに配った"経済レポート"の中身
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43828
2015年06月22日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
——株は上がるのか、下がるのか、円安はどうなるのか
本来は一般の目に触れるものではなかった—世界の金融界でも指折りの実力者が記した文書が流出、波紋を呼んでいる。最大・最強と称されるファンドのトップが予見した「世界経済」の行方とは。
■「年収1兆円」の男
「いきなり、氷水を浴びせかけられたようなものです」
こう語るのは、大手金融機関の為替ディーラー。6月10日、衆議院財務金融委員会での黒田東彦日銀総裁の発言で為替相場は大混乱に陥った。
黒田総裁は「ここからさらに為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」という主旨の発言をし、円ドルレートはわずか15分で1円50銭も急騰。122円台半ばをつけた。同時に、6月2日には2万619円をつけていた日経平均も2万円割れギリギリまで下落。つい先日までさらなる高みを目指していたかに見えた株式市場が、実は非常に不安定な状態にあることが、図らずも明らかになったのだ。
このような不穏な動きは、現在、世界中で進行しつつある大きな地殻変動の「予兆」かもしれない。そのことを裏付けする文書を本誌は入手した。
ひとまず、舞台をアメリカに移そう。
聞こえてくるのは、川のせせらぎと鳥のさえずりだけだ—コネチカット州ウェストポート。ニューヨークから北に80kmに位置する自然林の中に「世界最大のヘッジファンド」のオフィスはある。ウォール街の喧騒とはほど遠い環境にある天然石とガラスの建物の中で、選ばれし1200人の「猛者たち」が途方もない富を生み出している。
ブリッジウォーター。
日本で知る人は少ないが、金融業界に通じている人間が聞けば必ず身構える名前だ。'75年の創業以来、右肩上がりで成長を続け、現在の運用規模はヘッジファンドとして世界一の1650億ドル(約20兆円)。S&Sインベストメンツの岡村聡氏は語る。
「創業者のレイ・ダリオは、毎年数千億円の年収を稼ぐ金融界の超大物で、近いうちに人類史上最高額の年収100億ドル(約1兆2500億円)を突破するのではないかと噂されています。
巨大なコンピュータ・システムと精緻な経済モデルを駆使して市場を予測することで知られ、彼の発言は市場関係者のみならず、FRB(米連邦準備制度理事会)やアメリカ政府の上層部も注目している。
リーマンショックを正確に予測していたため、元FRB議長のアラン・グリーンスパンが『米政府にもダリオのモデルを使わせてもらえないか』と嘆願したこともあったそうです」
■歴史は繰り返す〜1937年の悪夢が再来する〜
鬱蒼とした森の中にあるオフィスでは、世界的数学者や物理学者が数多く働いている。最近では世界最高の人工知能と称されるIBMの「ワトソン」を開発したチームを引き抜き、相場を予測するプログラムを作成中だ。
そんな金融業界最高の「知性」が、新しく迫りつつある危機を警告している文書。それがブリッジウォーターのトップ、レイ・ダリオが顧客向けに出した「日々の洞察」と題されたレポートだ。在香港の証券会社社員が語る。
「ブリッジウォーターに出資できる顧客は、最低でも数十億円規模の資金を動かせる機関投資家か、一部の大富豪だけです。それもただカネを積めばいいというわけではない。特別な人脈がなければ出資は受け付けてもらえない。
この文書は通常、金融業界のインナーサークルでのみ閲覧されるもので、一般の投資家の目に触れるようなものではありません。だが、内容があまりに刺激的だったため、それを聞きつけた経済メディアが飛びついた。普段、表に出ないレポートなので、世界中の投資家たちがむさぼるように読んでいます」
その内容とは、近いうちに予定されているアメリカの利上げが実施されると、「1937年の悪夢」が再来するというものだ。一部を引用しよう。
「私たちは歴史は何度も繰り返すと考えている。時代や国境に関係なく、論理的な因果関係に基づいて繰り返すのだ。また、世界経済は長期的な債務のサイクルを繰り返すものであり、そのことはまだ十分に理解されていない。そしてもう一つ—中央銀行の金融刺激策は限界を迎えているようだ。
(中略)私たちはエクスポージャー(リスクの高い資産を持つこと)に対して慎重になっている。なぜかというと、現在の状況が'37年の状況によく似ているからだ」
'37年という年は、何を意味するのだろうか。金融史に詳しい真壁昭夫・信州大学教授が解説する。
「1929年、『暗黒の木曜日』を発端とした株価の暴落があり、世界恐慌が起きました。アメリカではそれを克服するために、ニューディール政策や金融緩和政策を行った。ところが、インフレを懸念するあまり、まだ景気の回復途上だった'37年に、早急に引き締めた。その結果、景気も株式市場もガタガタになってしまったのです」
たしかに金融緩和の効果が発揮され、景気は回復しているかのように見えた。'33~'36年の間にアメリカのGNPは560億ドルから820億ドルに、給与総額は295億ドルから429億ドルに劇的な回復を見た。
だが、当時のFRBは利上げのタイミングを見誤り、回復基調にあった景気は大きく腰折れした。'37年の1年間でアメリカの工業生産は32%、GDPは10%も落ち込み、失業率はなんと20%に達した。恐慌が再来したかのような大転倒だった。
株価の変動も激しい。'37年3月に186ドルをつけた後、急落。'38年3月には98ドルまで落ちた。'37年の高値を回復するのは、第二次世界大戦終結後の'45年12月を待たなければならなかった—。
世界最強のヘッジファンド・マネジャーはこの悲劇の再来を危惧しているのだ。
■どう考えても異常
ダリオの顧客向け文書では、当時と現在の類似点が次々と列挙されている。要点は以下の通り。
・'29年と'07年はバブルの絶頂で、債務残高がピークに達した。
・'31年と'08年には、不況により金利がゼロまで下げられた。
・'33~'36年と'09年~'14年は株式市場もリスク資産も上昇を続けた。
・'37年には中央銀行が引き締めに踏み切り、悪循環に陥った。そしておそらく'15年も同じことがくり返される。
'08年から始まったアメリカの量的金融緩和は3度にわたる大規模なものだった。日本も黒田氏が日銀の総裁に就任して以来、大規模な緩和を行っている。欧州のECB(欧州中央銀行)やイギリスのBOE(イングランド銀行)も同様の政策を取っており、さらには新興国の中国やインド、トルコまで景気刺激のために利下げを行っている。いまや世界にはマネーが溢れかえっている状況だ。
アメリカやドイツの株価は史上最高値を更新し、日経平均は'89年末の最高値こそ更新していないものの、6月1日、東証1部時価総額は史上最高の600兆円台を突破した。上海の株価指数などは、昨年から2倍以上に急騰している。
このような中でジャネット・イエレンFRB議長は、周到に出口戦略を練ってきた。景気に冷や水を浴びせないよう、だが同時に、金利ゼロという非常事態から通常の状態に修正するようにタイミングを計ってきたのだ。
そして市場ではこの6月か9月には、いよいよFRBが利上げに踏み切るのではないかというコンセンサスが生まれつつある。ダリオ自身も顧客向け文書の中で「6月か9月にFRBが引き締めに踏み切る」と予想している。
そして「どれだけ引き締めれば市場が暴落するのか、私たちにもFRBにもわからない。それが起きてしまった場合、具体的にどう修復するのか。それは私たちにはわからないが、FRBはわかっていると願うばかりだ」と市場暴落への懸念を露にしている。
■円高、株安の可能性
RPテック代表の倉都康行氏は「FRBが利上げを強行すれば、アメリカ株は2割近い急落が起きても不思議ではない」と懸念する。
その瞬間、これまで異次元の金融緩和で均衡を保っているように見えた世界市場の歯車は狂い始める。倉都氏が続ける。
「世界経済は安定成長軌道に乗ったとは言えません。ヨーロッパはギリシャ問題を抱えていますし、中国のバブルもいつ弾けてもおかしくない。日本は円安で企業業績が良くなっているとはいえ、海外の景気が悪化すれば輸出先がなくなるわけですから悪影響は大きい」
さらに心配なのは為替の動きだ。一般にはアメリカが利上げをすると、金利の高い国の通貨であるドルが買われ、円安が進むという見方がある。だが、専門家たちはむしろ「円高」に逆戻りするという意見が大勢だ。
「景気の先行きに不透明感が出て、市場にリスクを避けるムードが広がれば、『比較的安全な資産』として円が買われるのが常です。これまでの景気回復はすべて円安がベースにあったので、円高に逆戻りすれば日本株は大きく売られる危険性が高い」(前出の倉都氏)
「波多野聖」名義で経済・金融史を題材にした小説を執筆する元ファンドマネジャーの藤原敬之氏は、現在の世界経済も'37年当時と同じ問題を抱えていると話す。
「一言でいえばデフレ、供給の過剰です。ジャブジャブに金融緩和をしても需要が喚起されず、景気が回復しない。長い歴史をひもといても、供給過剰という問題を解決する方法はたった一つしかないことがわかっています。『戦争』という禁じ手です。軍需品という需要を喚起しつつ、敵国の工場(生産設備)を破壊して供給を下げる。それしかない」
'37年前後は、日本にとっても大きな転換点だった。藤原氏が続ける。
「なんといっても'36年の2・26事件で、高橋是清が暗殺されたことが大きい。是清は本当の意味での経済・財政感覚のある政治家だった。事件後、大蔵大臣に就任した馬場^一は裏で軍部と手を結び、是清が削ろうとしていた軍事費を拡大した。そして'37年7月7日、盧溝橋事件が勃発し、日中戦争が始まるのです」
各国が核武装している現代において、当時と同じ形態の戦争が起こる可能性は低い。だが「実弾の戦争はなくても、サイバー戦争はすでに起きている」と語るのは東京海上アセットマネジメントの平山賢一氏だ。
「サイバー攻撃で物流や決済のシステムが破壊されれば、経済活動に甚大な被害が及び、攻撃された国の物価が上がるということはあり得ます」
利上げ一つで「戦争」が起きる—そんな不安定な時代に我々は生きているのだ。ダリオのレポートは次のように締めくくられている。
「私たちの考えでは、金融緩和する余地がなくなったときに起き得る市況悪化のリスクに十分な注意が払われていない。なにか確証があるわけではないが、特に今は『買い』は控えたい」
20兆円を運用する金融界の巨人が、近い未来への不安を吐露している。迫りくる危機はあまりに大きい。
「週刊現代」2015年6月27日号より
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