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残業代ゼロ法案で“定額働かせ放題”に?〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150622-00000004-sasahi-bus_all
週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋
政府は、来年4月施行を目指して、残業代をゼロにする法律「改正労働基準法」を今国会で通そうとしている。主に二つ。一つは専門職に就き、高収入を得ている人を労働基準法の時間規制から外す「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)制度」。もう一つは「裁量労働制の対象拡大」。
WEは、為替ディーラーや研究開発職など、高度な専門知識で業務に従事する年収1075万円以上の人が対象。本人が同意し、労使で構成する委員会で合意した上で導入される。健康確保措置は設けられるものの、1日8時間、週40時間の労働基準法の時間規制から除外。休日、深夜の時間外手当は支払われなくなる。
年収1千万円以上の人は4%程度。しかし、ある国会議員によると、財界人との朝食会で、塩崎恭久厚労相は「われわれとしては、小さく産んで大きく育てる」と明言したという。今後、年収要件が下げられる見通しだ。
一方の裁量労働制とは、どれだけ働いても、事前に労使が合意した「みなし労働時間」で働いたとする制度。現在は、研究職、弁護士などの専門職、記者やソフトウェア開発者などが該当するが、一部の営業職にまで拡大するという。
いったいなぜ、安倍政権は法改正を進めるのか。労働時間の緩和は、「成長戦略の一環」と説明する。
「日本の労働力人口は減り始め、稼ぐ力を高めるには、高スキル・高賃金の人たちをいかに成長産業や成長分野に移動させるかが重要になってきた。日本経済を引っ張る人の労働環境をよくするためにも、法改正が必要なのです」(自民党の大岡敏孝衆議院議員)
仕事の報酬を成果で決めることで、ムダな残業がなくなる。生産性が上がれば会社の売り上げもアップする。従業員も自由な時間に働けるようになり、子育てや介護などの事情に合わせた「多様な働き方」ができるようになるという。
本当に政府が絵に描いたような、柔軟な働き方で充実した生活を送れるのか。
「むしろ“定額働かせ放題”になる危険性がある」と言うのは、東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長だ。
「日本は先進国のなかでも労働時間が断トツに長い。管理職になると仕事量が増えて残業がなくならないのが現状です。責任感の強い人ほど、成果が上がるまで必死に働こうとするので、歯止めがかからなくなる」
国際労働機関(ILO)などのデータによると、週49時間以上働いている人は、アメリカ16.4%、フランス10.8%、これに対して日本は21.7%と、世界から見ても働きすぎの状態だ。
働きすぎは心身ともに負担をかける。過労自殺による労災請求件数は年々増加。13年度は過去最多の1409件に達した。
こうした状況を改善しようと、昨年11月、過労死の実態調査や国民への啓発などを盛り込んだ「過労死等防止対策推進法(過労死防止法)」が施行されたばかり。その一方で、残業代ゼロ制度を導入するように、安倍政権の政策は“アベコベ”だ。
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