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東京海上が巨額買収で狙う、さらなるリスク分散(週刊ダイヤモンド)
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/888.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 22 日 00:05:10: igsppGRN/E9PQ
 

日本企業による海外企業のM&Aで、歴代8位の規模となる大型買収を発表した東京海上HD。会見に臨んだ永野社長の表情は意気揚々としていた Photo by Akio Fujita


東京海上が巨額買収で狙う、さらなるリスク分散
http://diamond.jp/articles/-/73619
2015年6月22日 週刊ダイヤモンド編集部


ここ数年、海外の保険会社に対し、相次いで巨額のM&Aを仕掛けてきた東京海上ホールディングスが再び動いた。米保険大手HCCインシュアランス・ホールディングスに対して、国内保険会社の海外買収案件として過去最高額となる、約9413億円を投じる巨額のM&Aに踏み切るのだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)

「買収額が高いと言われればその通りだが、為替を気にして交渉はしていない。大事なのは、Good Companyであることだ」(永野毅・東京海上ホールディングス〈HD〉社長)

 6月10日、東京海上HDは、約75億ドル(約9413億円)に上る巨費を投じて、米保険大手HCCインシュアランス・ホールディングスを買収すると発表し、業界内に激震が走った。

 東京海上HDは、2008年に英大手保険グループのキルンを約1000億円で買収して以降、同年に米損保フィラデルフィアを約5000億円、11年には米生損保のデルファイを約2050億円で買収するなど、すでに約8000億円もの金額を海外保険会社のM&Aに投じてきた。

 ましてや、1ドル120円を突破するなど急激な円安が進行している真っただ中。為替の影響により買収額は1兆円近い約9413億円に膨れ上がり、さらには、のれん発生額は最大で約5600億円という巨額の買収案件となる。しばらく大型買収はないだろうと踏んでいた他のメガ損保がこの発表に際し、「社内が凍り付いた」というのも無理はない。

 だが、冒頭の通り、永野社長は一向に強気な姿勢を崩さない。そこには、HCCが優良な保険会社であることに、迷いがないからだろう。

 というのも、HCCは米国内でスペシャリティ保険を取り扱う高収益の保険会社として、知る人ぞ知る優良企業だからだ。

 事実、損保の収益性を測る指標であるコンバインドレシオ(事業費率+損害率)は、過去5年間の平均で見ても85.5%と低水準であり、業界内で群を抜いて利益率が高い。ちなみに、国内随一の収益性を誇る東京海上HDでも、コンバインドレシオは91.4%(14年度)であり、その差は歴然だ。

 その理由は、HCCの取り扱う保険種目が、企業を対象とした医療・傷害などの再保険や会社役員賠償責任保険、農業保険など、高い専門性を有するスペシャリティ保険に特化している点にある。

 実にその数は100種類以上に上り、特殊な保険であるのに加え、互いに相関も少なく、高い収益性を誇っているというわけだ。

 まさに、この点に東京海上HDは着目した。なぜなら、国内損保の事業ポートフォリオはすべからく、自動車保険や火災保険が大半を占め、少子高齢化や自然災害の影響をもろに受けてしまう。東京海上HDも例外ではなく、国内事業に依存する限り、リスク分散は働きようがない。

 それ故、国内事業と相関の低い海外の保険会社に狙いを定めて買収することで、リスク分散を図ってきた。その最たる会社がHCCというわけだ。

■資産運用でのリスク分散にはデルファイを活用

 加えて、リスク分散の観点においては、もう一つ狙いがある。それは資産運用だ。

 HCCは欧米の保険会社にしては珍しく、高格付けの債券での運用を行っている。それだけ保険本業で稼いでいるわけだが、そこに11年に買収したデルファイの資産運用のノウハウを持ち込もうというのだ。

 実は、HCCとは逆にデルファイは保険本業でのもうけは少ないが、低格付けの債券をメインに資産運用を行うことで収益を稼いでいる。一見、リスクが高い運用にも思えるが、仮にHCCが米国のクレジットリスクを取ったとしても、「東京海上グループ全体で見ると、資産運用リスクは日本株に集中しており、全体のリスク量は増えない」(村木正雄・ドイツ証券リサーチアナリスト)ことから、資産運用においてもリスク分散が図れるというわけだ。

 さらには、買収資金についても、財務の健全性を重視する東京海上HDらしさがにじみ出る。過半を手元資金で賄い、残りは借り入れ等で充当するが、「フィラデルフィア買収以降、政策株式の売却を進め、自己株式の取得を抑えてきた」(東京海上幹部)ことで、手元資金を増やしてきた。今回のような案件に対し、周到に備えてきたといえるだろう。

 今回のHCCの買収が完了すれば、2000年代前半にはわずか4%にすぎなかった海外保険事業による利益の割合は、46%に跳ね上がる。まさに、グローバル企業を標榜する東京海上HDの狙い通りとなる。

 だがその一方で、東京海上グループの社員たちの思いは複雑だ。成長のためにグローバル化が必要なのは理解できるが、実際のところ国内事業に従事する社員が9割以上を占め、「われわれはどうなるのか……」といった声も漏れ伝わってくる。急速なグローバル化に対応する内部の体制整備が今、新たな課題として浮かび上がる。

 

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