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増税のために国民を欺く財務省の姑息な手口 捏造される「財政危機」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150621-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 6月21日(日)6時1分配信
これまで政府は2020年までに基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB:年収に相当する税収から利払い費以外の政府支出を除いたもの)を黒字化する方針を掲げていたが、これに代えて債務残高対GDP比を目標にすることを検討している。これに対して一部からは、「20年のPB黒字化達成が困難になったため、密かにあいまいな目標にすり替えようとしている」との批判も出ている。
結論からいうと、こうした些細な政策の違いにマスコミは騙される。単に記者が勉強不足なだけであるが、つまらない違いにマスコミの目が向いて喜ぶのは、20年のPB黒字化達成が容易であることが公になると増税しにくくなる財務省である。こうした批判は、マスコミの不勉強と、財政再建が容易に達成できてしまっては困る財務省との「合作」であろう。
まず、財政再建目標をPBの均衡から債務残高対GDP比へ変更することが問題であると報道されているが、実は両者はほとんど同じ意味である。それは次の式からわかる。
(債務残高/名目GDP)の変化分
=▲PB/名目GDP−(成長率−金利)×(前の期の債務残高/名目GDP)…(※)
この式は誰でも導き出せるのだが、不思議と経済学の教科書には載っていない。財政健全化のためには左辺の債務残高対GDP比を減らせばいいのだが、左辺がどういう要素で成り立っているのかを示したのが右辺だ。右辺は左辺をいわば要因分解したような結果であり、誰が検証しても同じ結果になる。この式から、長い目で見れば成長率と金利はほぼ同じなので、債務残高対GDPの変化分は「▲PB対GDP」となるわけだ。
ちなみに、PB対GDP比と債務残高対GDP比の実際の数字を見てみよう。
内閣府「国民経済計算」など
年によってブレはあるものの、長期的には両者の動きはよく似ている。PBの均衡から債務残高対GDP比への変更という目標変更は、とりたてて騒ぎ立てる話ではないのだ。
●少なく見積もられた税収
では、なぜこうした「みみっちい話」が出てきたのか。
前出(※)式をみてみよう。長期的には経済成長率と金利はほぼ同じ水準であるので右辺第2項を無視してもいいが、毎年の予算編成ではどのような成長率目標になるかが死活問題になる時もある。そして、予算をぶん取りたい「公共族」はどれだけ予算を獲得できるかに大きな関心がある。
現在、日本銀行が量的緩和をしているので名目金利は抑えられ、当面は成長率>金利になる公算が高い。ということは、債務残高対GDP比が財政再建目標になったほうが、式の右辺第2項が効き、その分、債務残高対GDP比が下がるので、予算ぶん取りにとっては好都合なのだ。ただし、これはかなり「みみっちい話」である。
むしろ問題は、財政再建目標の変更よりも、中期財政試算の方法にある。財政再建シミュレーションでは歳出の伸びは機械的に置くので、歳入つまり税収の見積もりが重要になってくる。そのカギになるのは、税収の弾性値(名目成長率の伸び率に対する税収の伸び率)と名目経済成長率である。
財務省は常に「財政再建のために増税」というロジックを掲げる。逆にいえば、財政再建ができることが公になると、増税の必要性を訴えることができなくなる。これは、国民にとって好都合であるが、財務省にとっては不都合である。そのため、「財政再建が必要」と主張するために、常に中期試算上の税収を少なく見積もっている。それが、税収の弾性値を低く、名目成長率も低くするという手法だ。
具体的にいえば、税収弾性値は1を少し超えた水準、GDPデフレータ(名目GDPを実質GDPに評価し直すための指数)は1%と設定され、名目成長率も抑えられている。しかし、これまでのデータでは、税収弾性値はもっと大きく、GDPデフレータもインフレ目標2%なら2%になるはずだ。
このような税収弾性値とGDPデフレータをまともにするだけで、20年の財政再建はほとんどできてしまう。中期試算に基づく、筆者の試算を以下に示そう。
「政府は20年のPB黒字化達成が困難になったため、債務残高対GDP比にすり替えようとしている」と批判するマスコミがいたら、単に不勉強で財政省のポチになっているだけなので、注意しよう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)
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